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カラーテレビ

 僕がまだ小学校1年生だった頃、うちは福岡市大橋の団地に住んでいた。今ではすっかり周りの景色が変わってしまったけれど、50年以上も経てば、それも致し方ない。
 同じ団地内の近所の家がカラーテレビを買った。総天然色である。僕はうちもカラーテレビが欲しいと駄々をこねた。すると母親は、「このテレビが壊れたらね」と答えた。それで、この白黒テレビを壊してしまえば、新しくカラーテレビを買ってもらえると思い、無茶苦茶にチャンネルを回したりして、壊してやろうと思った。
「そんなことしたらテレビが壊れるじゃないの」
 母親にいわれたが、そのつもりでやっているのだから通用しない。そもそもアナタがそういったのだ。
 僕は近所の家のカラーテレビが羨ましくて、時々見にいっていた。興奮度は今の4Kとか8Kとかのレベルではない。4Kとかいっても正直ピンとこないが、今まで色がなかったのが、色がつくのである、これはかなりショッキングな画期的なことなのである。
 今ではスマホからでも何でも見たりすることもできるが、昔のアナログ時代には、そういったことだけで、感動を感じているのである。
 カラーテレビ、カラーテレビ、カラーテレビ、毎日のように僕はねだった。
 とうとう親も根負けしたのか、実際は自分たちも欲しかったのだろうと思うのだが、ついにカラーテレビが我が家にやってきた。
 夢にまで見たカラーテレビ。僕は嬉しさのあまり踊りだした。小学生にはよくある光景である。
 ところが数日もしないうちに気づいたのである。カラーテレビにはなったものの、実際カラーで放映している番組はまだ一部だけだったということを。
 結局カラーテレビで白黒の番組を見る、今までとさして変わらない生活になっただけであった。もちろんカラーの番組もあるのだが、皆カラーになるとばかり思っていた僕はガッカリだった。
 それでも間もなくしてカラーでの放送はどんどん増えていった。

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