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母親と長電話

 最低週に1度は88歳になった独り暮らしの母親に電話をする。友人関係も一人二人と亡くなるなどで減り、近所の同じ境遇の年寄りと話すくらいしか人と話すこともないので、ついつい長話になってしまう。内容はほぼない。お陰様で、どこも悪い所がないので、一般的にありがちな病気の話を延々と話すこともない。では何を話すかというと話すことはあまりない。家から出ることも稀なので、変わったこともない。こちらもそれほど話すこともないのに長電話になってしまう。
 年に4回ほど贈り物をする。中元歳暮誕生日母の日である。誕生日にはなるだけ家に帰るようにしている。日帰りである。泊ってもいいのだが、布団の始末を考えたりすると、ついつい遠慮してしまう。
 戦争世代で、育ち盛りの頃、碌なものを食べさせてもらってないから、早死にするよ。
 というのが昔の母の口癖だったのだが、粗食が良かったのか、88歳までピンピンしている。ずっと詩吟をしてきたのもあるだろう。声もしっかりしていて、立ち居振る舞いも悪くない。足腰は弱くはなったが、それほどヨロヨロしてはいない。
 こういっては何だが全くの予想外の展開である。88歳まで元気で独りで暮らしてくれるとは思ってもいなかった。世間では長生きするのはいいけれど、認知症になったり、寝たきりになったりして、施設を行ったり来たりしている場合が多いと聞く。それを考えると誠にラッキー、僥倖といわざるをえない。非常に助かっている。出来るだけ長くこのまま元気でいてくれることを望む限りであるが、人は皆寿命がある。介護の覚悟はできてはいるので十分世話はさせてもらうつもりではある。

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