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ノビ、キレ、重さの科学

1, 導入

よくプロ野球の解説を聞いたりすると、
「ノビのあるストレート」「キレのある変化球」「重いストレート」
などという表現を耳にするかと思います。

もしくは野球ゲームなどで、例えばパワプロ(パワフルプロ野球)では、
「ノビ〇」「キレ〇」「重い球」「軽い球」
というような特殊能力があることでも知られています。

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このような表現は主に「球質」を表しているものです。どれだけそのボール、ストレートだったり変化球だったりが、いいものか悪いものかを表現するものです。

けっこうぼんやりとしたイメージはあったり、意味は曖昧だけれどもよく使われる表現です。

最近は技術が進歩しており、曖昧だった球質の評価が数字で行うことができるようになって来ました。MLBでは全ての球場でスタットキャスト、日本では11球団でトラックマンが導入されています(スタットキャストはトラックマンを含んだ複合システムです)。
トラックマンは高性能な弾道測定器で、ボールの回転の様子を詳しく知ることができ、主に球速や回転数、回転軸、変化量などを測定・算出しています。

これのおかげで、この投手のストレート・変化球はどのような変化をしていて、回転数が多い・少ないなどを目に見える形で数字などで明確に知ることができるようになりました。

しかしまだどのようなボールがノビがある・キレがある・いいボールなのか曖昧だったり、よくわからないことがあると思います。
そこで、「結局ノビ、キレ、重さってなんなのか?」
という話を物理っぽい目線から考えてみたいと思います。


2, 「ノビ」とはなにか

この「ノビ」という言葉は大抵ストレートに対して使われる言葉だと思いますので、ここでは「ノビのあるストレート」とは何かについて考えます。

体感では、「思ったより伸びてくる、球速以上に速く感じる」とか「浮き上がってるように見える」という感じでしょうか。
最近数字での評価も相まって、「回転数が多い」ボールなんて言われることが多いように感じます。

間違いではないと思います。しかし回転数のみがフィーチャーされることが多いのですが、回転量と同じくらい大事な要素として「回転軸」があります。

1, 変化量に関係する「回転量
2, 変化方向・変化量に関係する「回転軸

2-1, 回転量と回転軸

1, 回転量(回転数)

ボールが回転すると、野球ボールには縫い目があるので、縫い目が空気をかき分けるような動きをします。泳ぐときに水をかくようなイメージです。

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回転数が大きい方が後流(ボールの後ろの空気の流れ)に及ぼす影響が大きいので、「変化量」が大きくなります。回転量が多くなると、マグヌス効果が比例して大きくなるので上下横どちらにでも変化量が大きくなります
マグヌス効果は回転するボールが流体中(空気中)を進むと発生する効果で、ボールの回転によって後ろに向かう空気の流れが変わり、ボールに対して方向を変えるような力が働くものです。
ストレートでも変化球でも同じ話で、キャッチャー側から見て回転する方向にマグヌス効果が働きます。

2, 回転軸

回転数ばかり注目されることが多いですが、こちらの要素もかなり重要です。回転軸はその傾き度合いによっておおまかに変化方向を決めます。

回転軸が地面に対して水平になったフォーシームは、完全なバックスピンのボールになります。この場合、上向きのマグヌス力を受けるのでボールは上向きの力を受けます。

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ただし浮く訳ではありません。←重要

ストレートは浮くように飛んで見えますが、地球上では重力が働くので実際はただ落ちています。ただしバックスピンがかかっていると、マグヌス効果で上向きの力を受けるので思ったより落ちません。浮きあがる軌道をする訳ではありません(2回目)。

藤川球児投手の「火の玉ストレート」はこのような原理です。思ったより落ちないので、バッターがボールの下を振ってしまう。浮いたように、いわゆる「ホップした」ように感じます。

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普通のほとんどのストレートはただ真っ直ぐ進んでいるのではなくて、大抵シュート回転をしており利き手側に変化しています。

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先程の説明と合わせると、シュート回転のストレートは利き手側に少し変化しながら落ちていきます。

このようなシュート回転するストレートが大半を占めていますが、このほかにも”真ッスラ”や”真っ垂れ”と呼ばれるストレートが存在します。
真ッスラはちょっと左に曲がるカットボールのような動きで、沈むストレートのようになります。回転軸がカットボールのように少しジャイロ回転軸に傾いているからで、利き手の中指が人差し指に比べて長めの人にこのカット癖を持っている人が多いです。阪神の藤浪投手や桑原投手や広島の岡田投手がそうだと言われてます。
この真ッスラは回転軸がジャイロ回転の要素があるので、普通のストレートよりも空気抵抗が少なく初速と終速の差が比較的少ないです。

真っ垂れは単純に回転数が少ないストレートのことで通常よりマグヌス力が少なくあまり浮き上がってこないので、通常のストレートよりも低い軌道になります。ですので真っ垂れのボールを投げるとバットはボールの上をたたいてしまい、ゴロを量産することができます。

「回転数」と「回転軸」の2つの要素を説明しましたが、
結局ノビのあるストレートとはなんなのか?を考えていきます。
ここで世間一般で言われる「ノビ」と言う表現には2つの視点があって、
「減速が少ない(初速と終速の差が少ない)ストレート」と
「ホップするストレート」です。

これをそれぞれ定義してみると、
「減速が少ない」ストレートと言えるのは、「回転軸がジャイロ気味で真っスラ気味になっている」ストレートです。
「ホップする」ストレートは、「回転軸が(地面に対して)水平に近くバックスピンの成分が大きい回転数の多い」ストレートです。

2-2, 球速・回転量・回転軸のバランス

「ノビ」のあるボールを投げるには色々なことを考える必要が出てきます。

まず速いボールというのは、ものすごく空気抵抗を受けます。車から顔や手を出したらすごい空気抵抗を感じるように、速くなればなるほど空気抵抗は大きくなります。空気抵抗を受ければ、当然減速していきます。速いボールの方が初速と終速の差は大きくなります。
また基本的に球速を上げれば、ボール(ストレート)の回転数は比例して上がります

もう1つ「速いボールをホップさせる」ことにも問題があります。速いボールを投げるとそれだけ相手に到着する時間も短くなります。ですから、ホップさせるストレートをあまり速くしすぎたところで、ホップしているように感じる前に相手が打つ訳です。あまり効果を得ることはできません。

またホップ型のストレートは、減速が大きくなるという事が挙げられます。

こちらの記事によると、ホップする変化量が大きければ大きいほど、ストレートの減速度合いが大きくなります
これはマグヌス力の影響でホップした分のエネルギーが、前に進む分の運動エネルギーから変換されるというような理解でいいと思います。
要するにホップした分だけ、速度が落ちていくようなイメージです。

ごちゃごちゃしましたが、球速と回転数と回転軸にはそれぞれに合わせたバランスがあるということです。

回転軸が水平に近いホップ型のストレートの場合は、「球速を上げすぎずに回転量が多い」ストレートを投げた方がよく、逆に真ッスラタイプの人は初速と終速の差が少ないので球速を上げたストレートの方がいいです。おそらくプロでもホップ型の投手は球速はそこまで出しすぎず、反対に球速で勝負するタイプのピッチャーには真ッスラや真っ垂れタイプの人が多いです。
要は相手に「思ったより〜」と思わせられれば勝ちです。前者であれば空振りを多くとれたり、フライで打ち取れたり、後者であればボールがバットの下にあたってゴロが増えるでしょう。
また回転数が低いピッチャーは回転数を上げようとして平均に近づいてしまうよりも、回転数が低いことを生かす方法を考えた方が得策です(回転数や球速は平均的な数値に近づくほど打たれやすいと言われています)。

ただ回転数が多いボールがいいとかではなく、自分の球速・回転数・回転軸に合わせた投球スタイルを持つことが重要だと考えられます。

実際、藤川球児投手はストレートをあえて球速を抑えて投げています。
藤川投手の場合、ホップするストレートで空振りを取りたい訳ですから当然です。回転量を増やしすことで、変化量は回転量に比例すると言いましたから、ホップする変化量(=なるだけ落ちないようにする)を増やすためです。加えてはやく到達し過ぎないようにして、落ちないのを感じさせるようにする訳ですね。非常に考えられています。

2-3, 「ノビ」に関するまとめ

・回転量が多い方が変化量が大きくなります。逆に回転量が少ないと変化量は小さくなります。
・回転軸が水平に近くなると、通常より落ちにくくなる。傾き具合によってホップする量よりシュート変化が大きくなる。
・「球速以上に速く感じる=初速と終速の差が小さい」のは、回転軸が少しジャイロ気味になった真っスラ気味のストレート。←これもノビ
・「ホップして浮いているように見える」のは、回転軸が地面に対して水平に近いストレート。←これもノビと言える
・球速、回転量、回転軸はそれぞれに合わせたバランスが重要。自分の特性を生かせるようなバランス。

もう一度だけ言いますと、「回転数が高い・多い」からいいということではないです。


3, 「キレ」とはなにか

キレがあるというのは、よく使われますが非常にあいまいな表現ですよね。
国語辞書での説明を見てみましょう。

キレがある(キレのある)
(1)メリハリが効いており、機敏であるさま。特にスポーツやダンスの動作に関して用いられることが多い。

変化の様子を表するもので、変化にメリハリがあるということだと思います。
「曲がりはじめが遅い」「手元でキュッと曲がる」とか、あと単純に「曲がり幅が大きい」ことに使うようなイメージです。

実際キレのある変化球というのは、どのようなボールのことを言うのでしょう。単純によく曲がる変化球が「キレがある」と言われることも多いですが、今回は別の視点で見てみたいと思います。

それを理解する前に、まず変化球が基本的にどのように曲がっているかをなんとなくでもつかんでおいた方がいいと思います。

3-1, 変化球がなぜ曲がるのか

そもそもボールはなぜ落ちたり、曲がったりするのでしょうか。
このことを理解するためにも、先ほどの2つ
”回転量と回転軸”が役に立ちます。

そもそも変化球には大きくわけて2種類あります。
回転をかけて変化させる変化球
回転を減らして変化させる変化球
の2種類です。(もちろん例外も少しあります。)

➀は主にカーブ系、スライダー系、シュート系、シンカー系の変化球です。
②はフォーク系、チェンジアップ系、ナックル系のボールです。

➀の回転をかけて曲げる系の変化球は、主に回転によるマグヌス力で曲がります。回転させる変化球は、どのような回転軸で変化させるかによってどの向きにマグヌス効果による力が働くかが決まります。
変化方向は回転軸の向きで変わっていきます。上にホップさせたかったらバックスピン、下方向ならトップスピン、左右ならサイドスピンというようになります。
そして、回転をかけて曲げる変化球は回転数が多くなれば多くなるほど大きく曲がります

②の回転を減らして落とす系の変化球の落ちる原因は、「重力」です。地球上のものはすべて重力が働くので、ボールは重力で落ちていきます。
ストレートを基準にして考えると、ストレートは前章で説明したようにバックスピンが強くかかっているために上へのマグヌス力がかかっており、そこまで落ちません。いわゆる“浮き上がっている”ように見えます。

そのバックスピンを減らすことで、上向きのマグヌス力を減らすことにつながりより重力によって下へ落ちていきます。
チェンジアップ系・フォーク系のボールはこのようにバックスピンをかける量を減らすことで、より重力の影響が大きくなって落ちることになります。

もうひとつは、回転数が低いことによって空気抵抗を大きく感じて落ちていきます。回転数が低いと空気抵抗が大きくなることは、前章で説明したとおりです。

このように回転を減らすことで曲がる(落ちる)球は、回転を減らせば減らすだけ曲がりが大きくなり、減速が大きくなります
チェンジアップ系は回転を減らすことで曲げますが、フォーク系はそれ以上に回転数が少ないのでチェンジアップ系より大きく曲がりますし、大きく減速します。
スプリットはフォークより回転数が多いので速く小さく曲がります。

3-2, 視覚的に「キレ」を生み出す

ここで本題に入っていきますが、先ほども言いましたが単純に「キレがある=変化量の大きい=回転数の多い」という一般論もあります。
今回は少し視点を変えてみたいと思います。

この記事に、打者が打席でどのようにボールを見て、どのように打っているかが書かれています。

ボール軌道の初期の部分が見えていれば、残りの軌道は打者の脳内で補間され、到達位置を予測できるということだ。
過去に多くのボール軌道を見てきた経験が本来見えないはずの錯覚を生み出し、正確な予測を可能にしていると考えられる。

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このことからわかるのは、バッターはボールを目で追って打っているのではなく、投げ出しの部分(ボール軌道の初期)を見て残りの部分は今までの経験から予測して打っているということです。

ということは、単に大きく曲がるということよりも、相手の経験からの予測を超えるようなボールを投げることが重要です
これが「キレ」の正体だと考えられます。
予測を超えるとは言いましたが、別に超える必要はなく、下回る形でも予測を裏切ることができます。
要するに、良くも悪くも相手の経験からの予測を裏切るボールがいいボールになります。
「思ったよりも曲がった」「思ったよりも曲がらなかった」「思ったよりもボールがノビてきた」「思ったよりもボールが来なかった」、こう思わせればピッチャーはバッターを打ち損じさせることができます。

ここから具体的に「キレ」を生み出す方法について、変化球に重要な要素である球速・回転数・回転軸の3つの要素から見てみたいと思います。

3-3, 球速・回転軸・回転数をコントロールして「キレ」を生み出す

まず単純に回転数が多いと、マグヌス力が大きくなりますから大きく曲がるようになります。

逆に球速を上げるとバッターに到達するまでの時間が短くなりますから、変化量的には小さくなります。十分変化する前にキャッチャー・バッターに到達してしまうという訳です。

回転軸に関しては、「ジャイロ回転」が1つのカギになってきます。
ここでは細かい説明は省きます。

ジャイロ回転は回転軸がボールの進行方向を向いているボールです。ジャイロボールは空気抵抗が少ないので減速が小さく、また上向きのマグヌス力が働かないので重力で自由落下していきます。
このジャイロ回転軸に近づけることが、「キレ」を生み出すひとつのカギになります。

スライダーであったり、フォークであったり、変化球のボールの回転軸を進行方向に向ける・近づけることで、普通のボールより鋭く(減速が少なく)落ちるボールにすることができます。

3-3-1, 前田健太投手の例

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前田健太投手を実例に見てみます。

➀を見てみると、球速の速い135 km/hのスライダーはストライクゾーンに入っていますが、球速の遅い131 km/hのスライダーはストライクゾーンから外れていく大きく曲がるスライダーになっています。
②を見ても30 cmほどの軌道の違いを生み出しています。
これは球速の違いで曲がり幅を出すことで、視覚的に変化の違い「キレ」を生み出しています。これは先ほど述べたように相手に大→小の順でスライダーを見せることで「思ったよりも曲がらなかった」と思わせることができ、見逃しストライクを奪っています。

③、④は回転軸によって曲がり幅を変えた例です。
③④の左側の曲がり幅が小さいスライダーは回転軸が進行方向を向いており、ジャイロ回転に近づいています。
③④の右側の曲がり幅が大きいスライダーは、小さい時に比べて回転軸が”立っている(上を向いている)”のが分かるかと思います。
こうなることで、サイドスピン要素が大きくなることで曲がり幅が大きくなります。
回転軸を変えることで曲がり幅を変え、視覚的に「キレ」を生み出しています。曲がり幅が小さいスライダーを見た後で、大きいスライダーを見せてバッターに「思ったよりも曲がった」と思わせることで、空振りをとることができました。

3-3-2, 千賀滉大投手の例

そのほかにも、千賀滉大投手が投げていると話題の”お化けフォーク”は実は”ジャイロフォーク”なのですが、これも回転軸の違いによって「キレ」を生み出しています。
通常のフォークはバックスピン(もしくはサイドスピン)をしています。先ほど述べたように回転を減らすタイプの変化球ですから、減速しながら落ちていきます。
しかし千賀投手はジャイロ回転にすることで、減速が少なく落ちていきます。バッターは他の投手のフォークの記憶から予測して打ちに行きますが、それよりも減速せずに落ちていきますから、バッターに「キレがある」「思ったより速く落ちていく」と思わせることで、空振り・見逃しを奪うことができます。

他にもジャイロフォークを投げている投手はいますので、是非注目してみてください。

3-3-3, 田中将大投手の例

田中投手の持ち球の一つであるスプリットですが、その中に回転軸が異なることで「キレ」を生み出しているボールがあります。
スプリットもバックスピン(サイドスピン)のボールから回転を減らすことで落とすタイプの変化球ですが、田中投手はトップスピンのスプリットを投げています。
下のスプリットの変化量をプロットしたグラフを見てください。

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このグラフの原点は回転によるマグヌス力が全くなく、重力によってのみ落ちた場合です。純粋なジャイロボールがここに来ると考えてください。
赤で囲まれた部分のボールはそれよりも下に到達していますから、ボールがトップスピンしているということになります。
通常のスプリットはバックスピンするため、赤で囲まれていないボールのように原点よりも右上に到達するのがほとんどです。

トップスピンのスプリットは非常に珍しく、なんとMLBの2017年全投球のうち0.2 %しか投球されていなかったのだ。

この0.2 %ゾーンのトップスピンスプリットは、通常のスプリット以上に曲がり、打者が見たことのない曲がりをすることで「キレ」を生み出します。

ちなみにこのスプリットはリリースする際に「人差し指を最後まで縫い目に引っ掛けながらボールを抜く」ように投球するようです。

3-4, 「キレ」に関するまとめ

・回転数が多いボールは大きく曲がる
・バッターは今まで見てきたボールの軌道の記憶から予測して打つので、その予想を裏切る(超える、下回る)ボールが視覚的な「キレ」を持つ
視覚的に「キレ」を生み出すためには、球速・回転数・回転軸をコントロールする
回転軸をジャイロ回転軸もしくはトップスピン回転軸に近づけることで、通常以上の変化「キレ」を生み出すことができる


4, 「重い球」「軽い球」とはなにか

基本的に、球の重い軽いは打者が打った時に飛距離が出るか出ないかということだと考えられます。
飛距離が出るのが「軽い球」、飛距離が出ないのが「重い球」となります。
よく、直球を本塁打にされる投手の球を「軽い球」と言ったりします。

「重い球」に関してはまず3タイプあると考えられます。
➀バットの芯を外すことで前に飛びにくくするボール
②リリースからの角度があり下方向の力が大きいボール
③バックスピンがかかりにくいボール

➀に関しては分かりやすいと思いますので、説明は省きます。ツーシームやカットボールなどのいわゆる”動くボール”は芯を外すことで、前に飛びにくくなります。

4-1, 角度のあるボール

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角度のあるボール=リリースポイントが高い位置から放たれるボールは上から下への力が大きくなります。上の図では少し大げさに描いていますが…

リリースの角度がある方が、バットに対して上から大きく上から力がかかることが分かります。そうすると上に打ち上げにくくなります。フライやライナーが打ちにくくなり、ゴロになりやすくなることが予想できます。

また下方向の変化球も同様に下方向の力が大きいので、同様に「重い球」ということができると思います。

4-2, スピンをかけて飛ばすバッティングに対する

バッティングの中で重要な要素は、打球速度(スイングスピード)・バットがボールに対して入る角度、そして打球にスピンをかけるということです。
特にボールにバックスピンをかけて飛ばすことは、バッティング技術のひとつです。
「ノビ」あるストレートと同様に、バックスピンのかかった打球は落下しにくく、速度も落ちにくいことになります。その結果飛距離も伸びます。

では、肝心の打球に強いバックスピンを与えてしまう球とはどのような球なのか考えてみます。
それは強いバックスピンの球です。
詳しく説明すると難しい話になってしまうので簡単に説明してしまうと、
回転している物体は衝突した後も同じ回転を維持します。
なので、強いバックスピンの球は打球に強いバックスピンを与えてしまう球になってしまいます

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ということを踏まえると、バックスピンの回転量の多いストレートは、バットによってバックスピンをかけやすいことが考えられます。
それに加えてこのタイプのストレートはホップするのでボールがバットの上に当たりやすく、上にフライが上がりやすくなります

過去のピッチャーでいわゆる”一発病”と呼ばれるピッチャーには、きれいなバックスピンのかかったストレートのピッチャーが多いのではないかと思います。

これらを「軽い球」と考えると、逆に「重い球」と呼ばれるものは、
回転数が少ない(無回転含む)もの、もしくは回転軸がトップスピン系のボールだと考えることができます
例えば、回転数が少ないボールは思ったよりもノビてきませんから、バットがボールの上をたたきやすくなり、ゴロが多くなります。
また回転軸がバックスピンではないジャイロ気味になっている真ッスラや真ッ垂れのストレートは、比較的「重い球」に分類されるのではないでしょうか。
また当然トップスピンのカーブ系のボールはスピン的な意味では「重い球」に分類してもいいのではないかと思います。

4-3, 「重い球」に関するまとめ

バットの芯を外すことで前に飛びにくいタイプの「重い球」
リリースからの角度があったり、下方向に変化するために下方向の力が大きいボールは単純に上に飛ばしにくくなる
回転数が少ない回転軸がトップスピン系のボールが「重い球」になる



ここまで「ノビ」「キレ」「重い球」についてまとめてみました。あまり明確に言葉にならないような曖昧なものについて考えてみました。
個人的な見解もありますので、全く正しいとは思いません。
ピッチャーをより詳しく知る、詳しく見ていただく際のポイントにでもしていただければと思います。
長々と読んでいただきありがとうございました。
質問・意見などお気兼ねなくコメントやリプなどでお願いします。

参考URL
・野球変化球-その奥深い世界を科学で解明
https://www.cybernet.co.jp/magazine/cybernet_news/archive/138/no138_2.html


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