【インタビュー】会社員時代に欠けてたものが、フリーランスになって満たされたーー大企業で16年間働いて辞めたseicoさんが見つけたもの

インタビューまでの経緯:
私は来月から働き方を変え、フリーランスになります。それをきっかけに、副業として文章を書けるようになりたいと思い、鍛錬のためにインタビュー記事に挑戦しました。seicoさんにお話を伺った理由は、noteの記事を読み、seicoさんの子育てエピソードに深く共感したからです。また、seicoさんがフリーランスを選んだ経緯を、詳しくお聞きしたかったためです。

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教育系出版社で約16年間、商品企画や編集をしていたseicoさん。2人の子を持ち働いていたが、退職前の最後の5年間は、seicoさんにとって迷いと悩みの連続だったという。なぜなら、会社を辞めたくても辞められなかったからだ。

その5年間、seicoさんはなにを悩んでいたのか。大企業での16年のキャリアに終止符を打ち、なぜseicoさんはフリーランスを選んだのか。そして、フリーランスになって彼女が見つけたものとは?

フリーランスになり、自分で人生をコントロールしている感覚を味わう

会社を辞めたい、でも辞められないと5年以上も悩み続けたseicoさんが、フリーランス編集者&ライターに転向してから2年が過ぎた。この2年間、彼女の気持ちや働き方にどんな変化があったのだろう。

「フリーランスになり、満足感はとても高いですね。会社員生活ではずっと時間に追われていましたが、今は本当に自分がやりたいことに時間を使えます。例えば、子どもたちと一緒に過ごしたり、ピラティスをしたり、好きな本を読んだり、noteで文章を書くこともそうですね。自分で人生をコントロールしている感覚があって、とても満足しています

「今は、子育てメディアConobie編集部で、マンガやテキスト記事の編集をしています。そのほか、インタビューライティングをしたり、企業の広報記事の取材ライティングをしたり。どの仕事も新鮮な気持ちで取り組めています」


子どもたちに教材を届けられるのが嬉しかった

大学院を卒業し、seicoさんは教育系出版社に入社した。具体的には、どんな仕事だったのか。

「小学生向けの理科教材に関連する仕事でした。理科のページ、実験キットなどの付録、知的好奇心を刺激するような読み物の企画や制作。そのほか、ウェブページを企画したり、動画を作ったり、編集もしていました。子どもたちに教材を届けられるのが嬉しかったですね」

seicoさんがいた会社は女性が長く活躍できる会社、というイメージがあるが、実際はどうなのだろう。

「制度的には、とても恵まれています。育児制度が手厚い。管理職も女性で、出産後も女性が働き続けるのはあたりまえ、という社風です。時短勤務は子どもが小学3年生まで。そういう意味では、ほかの会社よりも進んでいると思います」

「ただ、仕事が大変な時もあります。女性が多い環境で、子どもを持ちながらも、会社を成長させるために成果を上げないといけない。そういう厳しさはある。みなさん、子どもがいながらバリバリと仕事をしていますね」


初めて本気で会社を辞めたいと思ったのは育休明け。『なにかが違う。私はバリバリ働くべきなのか?』

新卒で会社に入社して8年目に長男を出産したseicoさんは、育休を経て会社に復帰。ところが、子どもが頻繁に体調を崩すようになった。

病児保育の体制を整え、家事はアウトソースや家電を活用。家事や育児に協力的な夫とともに奮闘するが、子どもを持つ前と持った後とで、働き方のギャップに苦しんだ。

「仕事が終わり保育園に迎えに行って、家に帰るのは夜7時過ぎ。そこから食事、お風呂、寝かしつけで、いつも時間に追われていて。仕事のプレッシャーもあり、イライラすることも多かった。休日は、平日にやれない雑用をこなしたりして、子どもと思い切り遊べませんでした」

こんな生活でいいのだろうか。これが私の望んでいた生活なのか。seicoさんは悩み始める。

「自分は仕事をバリバリやるべきなのか。でも、仕事をバリバリやって子どもからのSOSやサインを見逃すようなことがあるとしたら、それは個人的には違うなと。かといって、のんびり仕事をするのも違う、と迷い始めました」

自分から手を挙げてこの仕事をやります、とも言えない。でも、私はこの仕事はここまでしかできません、と言うのも違う。うまく心の整理がつかない状態が、長い間続きましたね」

seicoさんは悩み、迷いながらも、自分はどうすべきなのか決断がつかないまま働き続けた。

「年数を重ねると、会社で求められる役割も変わり、マネジメント的なものが増えていきました。そうすると、自分があまり情熱を持てないような仕事も多くなって、そういう仕事にどんどん時間を奪われていくんです。時間は有限なのに」

「子どもがものすごく可愛いのに、家にいてもいつも仕事が心の片隅にあって。子どもと真剣に向き合えていないような気持ちがありました。時間には限りがある。子どもと過ごしたい時間なのに、ワクワクを感じられない仕事に時間を費やしていいのだろうか、と」

突破口が見つからないまま、違和感は募るばかり。仕事を辞めたいとも思ったが、でも辞めて、一体何をすればいいのかもわからない。迷い、悩み、考える。そんな苦しい日々がずっと続いた。


会社を辞めるべきかどうか5年も悩み続けたある日、大きな転機となる出会いが

会社を辞めたいと思い始めて5年ほど経ったころ。当時アメブロでブログを書いていたseicoさんは、そこである女性と出会う。その女性が、ワーママを集めた飲み会を開くという。

「仕事のことでずっと悩んでいたので、なにかのきっかけが欲しくてその飲み会に参加しました。その後、その女性が主催するコミュニティに入ったんです」

「コミュニティでは、悩みを書き込むと他のメンバーが『私はこう思うよ』といったアドバイスをしてくれる。例えば、キャリア、子育て、家庭についてどう思うか、とか。メンバーがお互いに悩みをシェアし、励ましあっていく感じですね。そこで交流しながら気持ちを整理していきました」

「そのコミュニティでやりとりをするうち、編集という仕事は、会社以外でも色んな場面で生かせそうだという手ごたえを感じました。そのときかな、フリーランスで行けるかも、と思ったのは」

このコミュニティでのつながりや活動が、seicoさんにとって大きな転機となった。一度は辞めようと思っていた編集の仕事が、やっぱり好きだと気づいたのも、このコミュニティの活動を通してだったという。

こうして、ようやくフリーランスになることを決意したseicoさんは、16年間の会社員生活に終止符を打つことができた。会社を辞めたいと思い始めて、既に5年以上の月日が流れていた。


今まで届きそうで届かないと思っていた幸せな時間がここにある、はっきりとそう感じた

もともとseicoさんの夫は“女性にはイキイキと働き続けてほしい”と、当初から家事や育児には協力的だった。seicoさんがフリーランスに転向してから2年、夫や子どもたちになにか変化はあったのだろうか。

「フリーランスになってからは、『今こんな仕事をしているんだよ』と夫に仕事のことを話す機会が多くなりました。私が楽しそうに働いている姿を見て、夫も安心していると思います」

「働き方を変えて、子どもたちとしっかり向き合うことができるようになりました。思い切り遊べるようになったので、子どもたちの笑顔が増えましたね」

フリーランスになり時間と心に余裕が生まれたというseicoさんは、こんなエピソードをnoteの記事に書いている

ある日、長男(当時小2)と一緒に公園に行き、池に白い鳥の羽が浮かんでいるのを見つけた。長男はその羽を欲しがった。時間に追われる会社員時代だったら「早く家に帰ろう」と言って、そのまま家に帰っていただろう。でも、フリーランスになり時間のゆとりができたので、長男と2人でその白い羽を追いかけてみた。

「自分の心の持ちようが変わったからでしょうね。親子でその羽を追いかけているとき、自分の中で『欠けていたものがちょっとずつ満たされるような感覚』がありました。やっと子どもとちゃんと向き合えた、って。会社員時代は、自分の中でなにか足りないな、欠けてるなぁっていう感じがずっとあったんです。

だから、息子と一緒に羽を追いかけているとき、今まで届きそうで届かないと思っていた幸せな時間がここにある、ってはっきり分かったんです。自分が満たされていく感じがしました


達成感に満ちた子どもたちの笑顔のために

子どもたちは小4と5歳になった。子育てをするうえで、“ここを大事にしたい”というseicoさんのマイルールのようなものはあるのだろうか。

「ときおり、子どもたちが充実した笑顔を見せてくれる瞬間があって。ただ嬉しいんじゃなくて、自分で工夫して達成できたときの喜びの笑顔、っていうのかな。“オレはやったぞ!”という充実した笑顔。そういう笑顔は、子ども自身の興味を深めることにもつながるし、自立にもつながっていくと思うんですね。だから、そういう笑顔が見られるような瞬間をできるだけ作ってあげたいです。

兄弟で興味を持つ対象は違うのですが、子どもたちの興味をうまく見つけて、できるだけ伸ばしてあげたいと常に思っています。大きくなっても、困ったときに頼ってもらえるような、相談してもらえるような存在でいたいですね」


スタイルを変えながら働き続ける女性、seicoさんが将来に思い描くもの

フリーランスになって2年。seicoさんはどんな未来を思い描いているのだろう。

「そうですね、社会がいい方向に向かうような文章を書きたい。例えば、私が深く関心を寄せている、気候変動や環境問題をテーマにした文章。そういった問題を取り上げつつ、読んだ人がポジティブな気持ちになるような、そんな文章を書きたいです」

「今はフリーランスですが、このままずっとフリーランスというのも違う気がしています。子どもたちが大きくなったら、また会社に入ってバリバリ働いてみるのも楽しそうだな、と。この先のことは、しっかりとした計画もないですが、やるべきことを一生懸命にやっていたらなにかが見つかると思っています」

seicoさんは、自分に芽生えた違和感と向き合い、自分の好きなもの、大切にしたいものを諦めず、人生をしなやかにコントロールしてきた。将来的には、海外に住みたいという願望もあるという。

彼女は今後、どんなふうに人生をコントロールしていくのだろう。そのときどきで優先順位をしっかりと見極め、スタイルを変えながら、これからもseicoさんは働き続けていくにちがいない。

フリーランス編集者&ライターのseicoさんは、noteでは、何気ない日常の風景を綴っています。だれもが見たことのある風景、だれもが忘れたくないと思うような身近なできごとを、穏やかな言葉で丁寧に紡いでいます。

心がふっと和むような、胸がキュッと締めつけられるような、そんな文章です。日常生活の宝箱、ぜひ読んでみてください。





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