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PICK UPPLEのコツ

我々は現在、全商品が古着で構成された販売業を行なっている。ただ、古着を扱っていると言っても、少し分かりにくい物の集め方をしている自覚がある。そう思うのには、一般に古着屋という業態のあり方をイメージしたときに、想像されるカテゴリーのどれとも、我々のやり方は一致しないのではないかと思うからである。そのため楽しんでもらうには、少しコツが必要なのかもしれないと感じている。

今回はそのコツを掴んでもらえる、また我々のやっていることを理解してもらえるようなブログになれば良いと思う。

ここでまず先に結論を述べてしまうと、好きなデザインの物を好きに選ぶというのがコツであり、我々を理解してもらうために必要なことである、となる。

これは服を買う上で当然のことであると感じる方も多いと思うが、それを自由にできなくさせる構造が、古着というカテゴリーには存在している。いや、ファッション全般に言えることなのかもしれない。いずれにしても、その構造についてこれから述べていく。その後、我々のやっていることの内容を説明させてもらうことで、理解の助けとなることを願う。

様々な古着屋のテイスト

現在世の中に、どれだけの数の古着屋が存在しているのかを私は全く知らない。知らないが、たくさんあるということは分かるし、数が多いということは、やり方がたくさんあるということも分かる。

そんな数あるやり方の中に、仕入れるものを選別し、種類を限定することによって店の方向性を決め、価値を作りだす方法がある。顧客にとって、良いもの物が揃っている可能性が高いと思わせる方法である。我々のやり方もこれに属する。

そしてこの方法を採る店は多くの場合、扱う服のテイストを決めて、それに合う物を集め、揃えるであろう。これは、求めているテイストの物もしくは特定の物を探しに来てもらう為には合理的であり、外から見ても分かりやすい。

我々のやり方のわかりづらさというのは、これを行なっていないということにあるだろう。端的に言ってPICK UPPLEの商品構成には、一貫したテイストというものが存在しない。さまざまな領域を横断し、その時々にピンポイントで物をピックアップしているのだ。

店のテイストとは何か

ここまですでに何度か使用してきたが、この場における"テイスト"という概念について説明する。この概念の軟弱さはここでは無視し、すでに存在するとされている名前と様子を用いて、それが何かを示す。

テイストという概念は、1店舗のみに当てはまるというような代物ではなく、広くシェアされるものである。

主にユーロヴィンテージを扱う店、アメリカンヴィンテージを扱う店、ストリートブランドを扱う店、デザイナーズブランドを編集して扱う店、80'sの物などの多色使いの柄物を主戦力とした店、ブラウン系の色味で若干オーバーサイズの物を主体とした店など、他にもたくさんあるが、このように品揃えによってカテゴライズできる店は多くある。

これらの店は、アイテムの持つ背景やデザインの類似性に基づいて商品群を構成していると言える。そしてこの方法には、共有性と再現性がある。このような性質を持った状態のことを、ここでは"テイスト"と呼んでいる。またその方法を採ることで、店というのはあるテイストに属するものとして認識されることが可能になる。

一方我々のやり方というのは、性別、国、年代などの項目を限定するようなことはしていない。厳密に言えば仕入れないカテゴリーの物はたくさん存在するが、仕入れているものをまとめて総称することはできない。するとしても、古着という大きな言葉になってしまう。そしてそのことを良しとしている。

テイストの弊害

我々がテイストを統一しない理由は、それをすることによって弊害が発生するからである。その弊害は2つあり、まず定めたテイストから外れる物を、仕入れの上で除外しなければならないこと、そしてもうひとつは、統一することによって排外性と権威性が発生しがちであることである。

冒頭に述べたような、好きなデザインの物を好きに選べなくなる構造というのは、特に後者によるところが大きい。あるテイストが他のテイストと比べて最も優れているという考えが生まれたり、その中でどれぐらいレアリティの高い服であるかということが重要視されたりする。もちろん権威それ自体にも価値はあるし、それに頼らない価値観というのは存在し得ないだろう。しかしこの狭い範囲内でのそれを内面化することによって、選択の自由が大きく削がれる可能性はないだろうか。まあそれもひとつの自由であるとしても、我々はこれを良しとしない。

そして次に、前者がなぜ問題かと言えば、我々にとって選別を行う基準として、テイストという概念では狭すぎるという理由からである。

我々が好きな物というのは、ひとつのテイストでは到底賄えない範囲に広がっている。例えば90'sの日本のストアブランドのポリシャツと20'sのヨーロッパのサックコートを同時に扱っている店があったとして、その店を何系と呼べばよいのだろうか。類似性が簡単には見いだせない物同士を同時に愛しており、そのことをそのままに表現したいが故に、テイストを統一することは不可能なのである。
そもそもアイテム単品で見たときにも、何に属すると呼べば良いのか分からないものがたくさんある(我々はこういったものを多数所有しており、分かりづらさには、こちらのほうが影響しているのかもしれない)。

PICK UPPLEのスタイル

では最後に、我々のやり方を整理して説明することで終わりとする。

まず一言でカッコよく言ってしまうと、"教科書のような歴史観に抗いたい"という思いがある。テイストを固定しないことはこれを体現したものだ。

文脈の整理された分野には、それぞれに正統とされる歴史認識があるだろう。しかし言うまでもなくそれらは勝者の歴史であり、そこに登場しない、省かれているものは無数に存在する。それはファッションもしくは衣服の歴史においても同様である。金鉱夫が現場で着ていたジーンズがあれば、その同じ時に家の仕事をしていた妻の着ていた服も存在したのだ。名前は知らない、けれども確かに存在した。そのような、歴史の影に隠れている物へと視線を向けたい。我々はリアルをそこに感じている。初めて見る物に対する、純粋な興奮と共に。

整理することの難しい、歴史からこぼれ落ちてきた物たちは、それぞれ個別の出会いを生むことになるだろう。

そしてそれは我々にとって、極めて"ファッション"なのである。

あとがき

以上のことは、我々のインスタグラムを見てもらえると、理解してもらいやすいと思う。

さて、ここまで我々の服の集め方についての説明をしてきたが、それが独自の方法であるということではない。何系と括ることができない服屋、古着屋はたくさんある。ただ、文脈化されにくい分野であるが故に、魅力を理解されかねている状況が存在するように感じている。

この記事はそのような状況を踏まえ、どういう意図でそのような店が構成されているのかを理解してもらえることを期待して書いたものである。

もしあなたに、つかみどころが無いと感じている店があったとしたら、ここにある観点で見てみることで、魅力に気づくかもしれない。そんなことが起きたとしたら、私は嬉しい。

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近い将来、服屋をオープンすることに向けて活動中です。サポートしてもらえましたら、そちらは開業資金とさせていただきます。