葬儀

2018年、5月15日、テロが起こった。
妖怪惑星ブランドは、日本市場から抹殺された。
おれは、キャンパスで愕然と立ち尽くし、泣いた。
力なく、膝が折れた。
熱い涙が、人工芝に落ちた。
パリピが笑った。おれを笑っていた。おれは歯をくいしばった。
おれは、立ち上がった。
パリピをにらんだら、笑うのをやめた。

「妖怪惑星クラリス最高!!!!」「ドリトスチョーウマイ!」

おれはそう叫びつづけながら、姑獲鳥の夏を買った。魍魎の匣を借りた。カネがあまっていたので、今月のコロコロを買った。

それをカフェテリアで朗読した。

怒られたので、逃げて自分の家でゲゲゲの鬼太郎を上映した。

それから買い置きのドリトスを、少しずつ、食べた。

おれは、泣いていた。

 ―― 一ノ瀬才子さんのYouTubeチャンネル「さいこちゃんねる」内で、ゲームを開発した星野一人さんと、ポルシェを贈った一ノ瀬才子さんが同一人物であり、ポルシェは星野さんがもともと所有していた車だったことが明かされました。
2人への取材については、5月5日にTwitterのDMで個別に行いましたが、その際2人が同一人物との説明はなく、また一連のやりとりからも2人が別人であると認識し、記事を執筆しましたが、結果的に事実と異なる内容や虚偽のコメントを掲載することになってしまいました。
こうした流れを受けて5月14日、星野さんに再度コメントを求めたところ、以下の回答と謝罪がありました。

星野一人さん:
 すみません……悪気はなかったんです。ついどうなるのか観てみたいという出来心で。だますような形になってしまったねとらぼさんにはあらためて謝罪いたします。みなさんお騒がせして申し訳ありませんでした。

今後は再発防止のため取材プロセスを見直すとともに、誤った情報を掲載してしまったこと、読者の皆様に深くお詫び申し上げます。

(開幕の歌の引用元)

今ここで言及するのは危険な話題だ。だが俺の涙を癒すのはテキストだけだ。だからエッセーを書く。
簡潔に言おう。シビルウォーが始まった。もともと僕は妖怪惑星クラリスの一ファンであり、リンダキューブをほうふつとさせる世界にのめりこんだ。おれはもともとデビルマンとかリンダキューブが好きだ。
ついでにそれをとりまく変な名前もなかなかあじがありおもしろかった。おれも悪ノリして下品な名前を投稿したものだ。
とあるネットミーム引用系歌い手さんや実況者がネタにしようが「世の中にはどんな人もいるよねb」と一緒に笑ってきた。ああ。笑ってきた。
そして、ケタケタ笑っているうちに惑星は爆発四散し、ドリフターズとなった原住民は難民キャンプに肩を寄せ合うか蛮族になったりした。

蛮族や難民たちがスカベンジしたり在りし日の妖怪について議論したり二次創作をしたりボイスドラマを録音しているときだった。渦中のライター氏が新作ゲームをやるということだった。おれは胸を躍らせた。未完のまま終わったあのゲームの続きが読めるとか思った。(実のところはそうでなく、かつて電子出版していたものをバキバキにリライトしたりしたものをスクラッチの会話部分を追加したノベルゲームだったのだが)
あとついでに、給料が消えてなくなったからちょっとしたカンパになるかなと思った。
配信された。ポルシェが飛んだ。おれは笑った。ものすごく笑った。ついでにプレイした。泣いた。何度読んでも同じだった。いまだにいろいろつかめない。

それから数週間が過ぎた。俺も見習って、パルプ小説をやろうと思っていた。創作スタイルを考えるならライターさんはウォーロックで、おれはハンターになるのだろうな、いつかおれもブラザーたるライターさんにも届けたいなと思っていた。
その矢先だ。あの動画が公開された。(見ると泣くので俺は張らない)
上で引用した記事も生まれた。バーボンハウスも開かれた。だからどうした、と言われればそれまでだが、わりと傷ついた。

ドッキリなのはわかっている。当分は餓死しないんだろうな、ということも理解した。だがあのゲームだけでは、当分おれの餓えた魂を回復できない。
バーボンはもう飲み干した。おれはハンターだ。獣たちが友達だ。パルプを撃ち続ければいい。撃つ手しやまんと連射していけばそれでいい。
だが、それも悲しい。心の支えを失って、なにがゲッティングダウン。バックインザフレイム。だ。
それでもこの未開の荒野をゆかねばならない。戦火に身を投じなければならない。これからも妖怪惑星とかは瓦礫に至るまで燃え続けるのだろう。構わん。クラッシュ・ゼム。語り足りない。もはや過去の憧憬にしがみつく時間はない。おれは見知らぬ街を歩く時が来たのだ。

さらば妖怪惑星。さらば。


おお船長!おお船長!
おお船長!わが船長!恐ろしい航海は終わりました。
船はあらゆる苦難を乗り切り、目的は達成されました。
港に近づき、鐘は一斉に鳴り、群衆は歓喜しています。
皆の目は頑強で勇敢な船体を見つめています。
だがなんということですか!
真っ赤な血が滴る中で
船長は横たわり
死んで冷たくなっている。
ああ船長!船長!起き上がって、どうか鐘の音を聞いて下さい。
起き上がって - 貴方のために旗が振られ - 貴方のためにラッパが鳴っています。
貴方のために花束と花輪が - 貴方のために海岸は群衆で一杯です。
船長!わが父!
貴方の頭をこの腕が支えています。
悪夢だ!貴方は甲板の上で
死んで冷たくなっている。
船長は応えてくれず、唇は白く閉じたまま。
わが父は私の腕を感じず、脈も最後の言葉もない。
船は無事に錨を下ろし、航海は終わりました。
勝利の船は目的を達成して、恐ろしい航海から帰還しました。
ああ岸は歓呼せよ、鐘は鳴り響け!
だが私は、悲しい足取りで
甲板を歩く。わが船長は
死んで冷たくなっている。



コインいっこいれる