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第1話「人と人」


時はアグライア歴  1865年

7月1日(日)

エリナトラ大陸のとある田舎の街「セイラの街」にオレはいる

セイラ地方にあるこの街はある村の意思を継ぎ、6年前に作られたまだ新しい街で、住民の半数は冒険者という珍しい街。派手さのない街だが、数々の賢い魔法使いや勇敢なる戦士、他にも様々な職業のエキスパートの冒険者が育ち他国も認める街に成長している

いつなんどきの不に備えて、こういった街があることは世界のたくさんの笑顔の源ともいえるのかもしれない

セイラの街の作りは、街の中心にセイラの神が宿ると言い伝えられる街のシンボルでもあるセイラの碑石があり、そのまわりは円形の広場となっている。
円形の広場の北側にはセイラギルドがあり、その反対側の南側にはオレの1番のお気に入りの場所、直径3m高さ30cmの円形の小さな噴水があり、その中心には1mほどの高さの白き女神がみすがめからキレイな水を流している。そしてその噴水を囲むように高さ30cm幅1mの円があり、そこにすわって休憩したり寝そべって日向ぼっこしたりもできる

その広場を中心に南北に線を引き、東側が冒険者のためのお店が立ち並び、西側が生活のためのお店が立ち並んでいる
それもやはり、円形のようになっている
その後方のまわりは民家、そして高さ10mはある街の外壁が街を囲い、その外壁の東西南北の4ヶ所には高さ5m幅4mの門がある

火災や街の防衛のため「商店・民家・外壁」のそれぞれの間には幅3m深さ2mほどの堀になっていて水が流れている。その水は北のセイラ川からひいていて、セイラ川とセイラの街の間にある2つの水門によって普段は水深30cmにたもたれている

上空からみると、まるでセイラの碑石に一粒の水滴が落ちて、それが波紋となり広がっていくような作りをしている


オレの名は

【ハル 16歳 男戦士】
勇敢なる戦士を夢みて日々修行に実践にと奮闘している
戦士になったのは10歳の時。冒険者を目指す者に見えない力を与えると言われている、古くから伝わる儀式を行い、正式に戦士となった


オレは10歳の時から、ずっと今のPT『メディアス』に所属している

いろいろな戦闘を経験し、それなりの戦士だが『勇敢な』といえるほどの自慢できるような成果は残せていない。ありふれたただの戦士だ


《 PT (パーティ)》
複数のメンバーが協力したり、良い競争をしたりしながら一緒に組むグループのこと



時は夕方・・・

(午後4時30分)

ハルは街の中で一番お気に入りの噴水に腰かけていた


トレス「ハル、調子はどうだい」


【トレス 30歳 男 戦士】
PTメディアスのリーダー。体は大きくその腕はベルガスヘルをも失神させたこともある筋肉の持ち主であり、戦術にも長け、沈着冷静な判断でPTを最善な戦いへと幾度となく導いてきた。人情味あふれPTのみんなからの信頼も絶大


【ベルガスヘル (紫)】
生息場所は、山・洞窟・森など。性格は超凶暴。2足歩行で体は大きく身長は2mを超える。高い知能と豪腕を持ち、ベルガスを指揮して行動することでも有名で、その統率力は冒険者からも恐れられている。硬いものまで砕くアゴの力と大きなキバ、武器攻撃での破壊力は岩をも砕くという


ハル「トレス!いつもながら元気だよw」

トレスは右手でハルの右肩に手を置きながらハルの左横に座った
トレス「そうか、元気は一番大切だからなw」

ハル「オレの取り柄みたいなもんだからね」

トレス「あははは、そうだな」

トレスは両ヒザに両ヒジを置き両手の指を絡ませて前かがみになり街の中心のセイラの碑石を見ながら
トレス「ハルはオレのPTに入って、もう6年になるな」

ハル「あぁ〜そんなに経つんだ〜。そんなに経ってるのに、いまだにトレスには迷惑をかけっぱなしだよね」

トレス「いやいや、あのチビハルがここまで成長するとはなぁ、たいしたもんよ」

ハル「あはは」

トレスは前かがみのままセイラの碑石をしっかり見つめながら
トレス「なぁ、ハルよ・・・そろそろ、PT作っちゃみねぇか?」

ハル「!?」

ハルは驚いた表情でトレスの顔を見ながら
ハル「え?オレが?」

トレス「そうさぁ、これだけの経験を積んできたなら、そろそろいい時期じゃないか?」

ハル「・・・けっ経験っていっても、オレにはまだそんな・・・大した成果も手にしてないし・・・」

トレス「PTリーダーとして別の経験もプラスでできるぞ?」

ハル「それはそうだけど、今はそれよりまず自分を磨かないとさ」

トレス「自信ないか?」

ハル「・・・自信はないよ。トレスみたいに力があるわけじゃないし、戦術に長けているわけでもないし。あっもしかして、オレ・・・メディアスにいたら迷惑なの?・・・」

トレス「おぉぉでたでた。いつもながらマイナス思考だなぁ。そうでなくオレはハルを認めてるってことだ」

ハナ「本当?」

トレス「本当だ」

ハナ「それは嬉しい、ありがとうねトレス。でもやっぱり、あと10年くらい戦士の経験を積んだら考えるよ」

トレス「そうか、わかった」

ハル「うん。トレスが少しでもオレを認めてくれて嬉しかったよ」

トレス「おぅ」

ハル「あ〜びっくりした(笑)」

トレスは前かがみのままセイラの碑石をしっかり見つめ、うなずきながら
トレス「よし!!」

ハルはトレスを見ながら
ハル「よし!今日もがんばるね!」

トレスは上半身を起こし座ったままハルの方を向いて、右手でハルの左肩に手を置きハルを自分の方に向かせ、ハルの瞳をしっかり見つめながら
トレス「おいハル、今、正式にメディアスをクビだ!」

ハルはトレスの瞳をしっかり見つめながら
ハルは「今日はどんな依頼を引き受けてきたの?オレももっとがんばんなきゃだね!」

トレス「もう一度だけ言う、ハルはメディアスをクビだ!」

ハルはビックリした表情でトレスを見ながら
ハル「ん?・・・・・・・・・・・え!えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっえええええ!!クビぃぃぃぃいいい!」

ハル「なっ何言ってるんだよ!トレス・・・」

トレス「聞こえなかったのか?」

ハル「冗談だよね?」

トレス「オレがこんな大切なことを冗談で言ったことあるか?」

ハル「・・・ない・・・けど・・・」

トレス「ということだ。ソロでやっていってもいいが、PTを作ることをすすめる」


《ソロ》
グループを組まず、単独で行動すること


ハル「それはないわあぁぁぁぁぁ、こんな展開ないわぁぁぁぁぁ、ソロもないわぁぁぁぁぁ」

トレス「ハル、相変わらず面白いな」

ハル「いやいやいや、マジで!」

トレス「オレもマジなんだわ」

ハル「頭おかしいわぁぁぁぁあ。6年も一緒にやってきて、よくそんなこといきなりサラッと言えるわぁぁぁ、この人こわいわぁぁぁぁぁあ」


トレス「アハハハ、でもな、本当にそろそろって考えたんだよ」

ハル「・・・・・・・・・・ポカ〜〜〜ン」

トレス「こら、ハルしっかりしろ」

ハル「・・・・・・・・・・ポカ〜〜〜ン」

トレスは両手でハルの両肩を揺らし
トレス「おぃおぃ、意識がどこかに行きそうになってるぞ!」

ハル「はっ!」

トレス「おかえり!(笑)・・・ってことで、PTを作る準備は手伝ってやるから、明日の朝ここで待ち合わせな」

ハル「えぇぇぇぇ!?しかも!もう明日作るの!?」

トレス「何度も言わせるな、決まりだ。それに人は時に考える時間を与えると消極的になるから、なるべくで素早くだ。今のハルは特にそうだ」

ハル「・・・」

トレス「ギルドは24時間やってるから、本当は今からでもいいんだが「なるべくで素早く」の「なるべくで」も大切だな。慌てさせ過ぎるとそれはそれでミスっちまうから、今日は心の整理や、PT名前とかも決めなきゃならないから、その時間を与える(笑)」

ハル「なにそれ(苦笑い)」

トレス「じゃ明日の朝な、9時にここで」

ハル「展開がいきなり過ぎておかしいわぁあ〜・・・」

トレス「アハハ」

トレスは立ち上がり右手を上げて去って行ってしまった・・・

ハルは今起きた、思いもよらない展開をなるべく冷静になれと自分に言い聞かせながら、去っていくトレスの背中を見つめていた


その日の夜・・・


ハルは自分の部屋の布団の中であおむけになりながら瞳を閉じて、今日起きた予想もしてなかったいきなりの展開のこと、今までの冒険の日々の出来事、明日から新しくはじまるPTという未来。あらゆることをグルグル考えながら夜はどんどん更けていき、なかなか眠りにつけない夜であった



7月2日(月)

(午前8時50分)


朝を迎えハルは待ち合わせ場所の噴水に向かった

その途中・・・


そあ、リトラバード「ハル〜、おはよう。クビおめでとう〜♪」


【リトラバード 18歳 男 魔法使い】
メディアスのメンバー。身体は細く、ひょうきん者。しかし戦闘になると攻撃魔法を使いこなし、危うい場面でも一気に打開する機転と実力を持つ魔法使い


ハル「あっおはよう!リトラバード〜〜〜・・・。ってか、もうみんな知ってんの?」

リトラバード「アハハハ、昨日トレスがハルをクビにしてやったって大笑いしながら、みんなに報告してたからなぁぁ」

ハル「やっぱりクビは、間違いじゃないわけね、、、はぁぁぁ↓」

リトラバード「間違いじゃゃゃゃないわ」

ハル「みんなにお別れの挨拶しないとね・・・」

リトラバード「別れの挨拶?そんなのいらねぇ〜よ(笑)こんな小さな街、毎日みんなと会えるし(笑)どうせ噴水にいつもいるんだろ?」

ハル「それはそうだけど・・・」

リトラバード「なぁ〜に浮かない顔してんだよ、トレスがまた一つハルを認めたってことなんだぞ」

ハル「それは嬉しいんだけどさ、いきなりだよ・・・」

リトラバード「ハルには、ピッタリのやり方だな、さすがトレスだわ」

ハル「それにさ・・・」

リトラバード「それに?」

ハル「なんでリトラバードはそんな元気でオレに話しかけられるんだよ・・・なんで止めてくれなかったんだよ」

リトラバード「あのなぁ〜。こんな日が来るってわかってたからだよ」

ハル「えっ!?どういうこと?」

リトラバード「トレスはさ、ハルのことを特別に大好きだからな。だからこそ旅立たせる日がくるんだろうなぁ〜とは予想ついたし、まぁ予想より早かったけどな(笑)メディアスのみんなも同じこと思ってたって。ようは全員が納得してるってことだ」

ハル「なっ・・・」

リトラバード「ということだ(笑)」

ハル「マジかよ・・・」

リトラバード「マジだ」

ハル「・・・アハハ↓トレスと待ち合わせの時間だから行ってくるわ・・・」

リトラバード「がんばれよっ!」

ハルは無言で力なく手を上げてそれに答えた
ハル「・・・」


ハルが噴水に着くと・・・


トレス「おお来たか!」

ハル「おはようトレス・・・」

トレス「おはよう、あきらめついたか!(笑)」

ハル「あきらめもなにも、クビなんでしょ?」

トレス「間違いない(笑)」

ハル「なら、進むしか・・・」

トレス「さすがだな、さて早速ギルドにいくぞ」

ハル「さすがって・・・」

トレスは気合いを入れるように
トレス「いくぞっ!」

ハル緊張しながら
ハル「はっはい」

トレス「なに緊張してんだよ。あぁ〜そうだな。メディアスでオレがなんでもやっちまってたからハルはギルドに入ったことさえなかったな」

ハル「うん、ギルドに入るってだけでも緊張する」


トレスはセイラギルドの前で足を止めて、セイラギルドを見ながらハルに説明をはじめた
トレス「ギルドについて説明すると」

ハルも足を止めセイラギルドを見ながら
ハル「うん」

トレス「ギルドの役割は大きく5つ。1つ目は街の警備。2つ目は街の施設の管理。3つ目は冒険者の登録やPTの登録。4つ目は依頼やPTの紹介など。5つ目はセイラの街に出入りする者の詳細情報の管理やセイラの街内外のあらゆる情報収集だ。ギルドは街にとっても冒険者にとっても欠かせない施設だな」

ハル「凄いんだね、セイラギルドって」

トレス「ああ」

トレス「そしてセイラギルドに冒険者登録してあるハルは、セイラギルド所属のPTを自分で作ることができる」

ハル「うん」

ハル「メディアスでやっていた依頼は、すべてギルドからの依頼だったのんだね」

トレス「すべてではないな」

ハル「そうなの?」

トレス「メディアスがこのセイラの街に来て、新しい拠点にしよう決めた時、メディアスのメンバー全員がセイラギルドに冒険者登録をしたと同時にPTメディアスもセイラギルドにPT登録をしてセイラギルド所属となった」

ハル「うん」

トレス「その日から確かにセイラギルドの掲示板を眺めては、出来そうな依頼を探してはこなす毎日だったけど、数多くギルド依頼をこなして行くと自然と知名度も上がっていくんだ」

ハル「うん」

トレス「そうすると今度は、ギルドだけでなく、困った人から直接メディアスに依頼がくるようにもなり、今ではそれも引き受けてるって感じだな。それがメディアスの現状だ」

ハル「へぇ〜」

トレス「ただなんでも引き受けるわけじゃない。リーダーってのはPTの戦力や能力を考え『こなせる依頼』を引き受けることが一番大切かもしれないな。命あっての明日だからな」

ハル「たしかに・・・その判断は重要だね」

トレス「そうだ。戦力や能力を超えた依頼をもし引き受けてしまうと、依頼を達成できないどころか、最悪のケース敵から逃げることさえできなくなる・・・。いわいる『分かれ道の扉』へと行くことになる」


《分かれ道の扉》
人間の世界では命が旅立つと『分かれ道の扉』に行くと言い伝えられており、そこには2つの扉があり、『人生のあり方によって開けられる扉が決まる』と信じられている


ハル「ゴクッッ」

トレス「おっとすまん。悪い話しは今はなしだな(笑)まずはPTを作る。そして、ゆっくり一つ一つだ」

ハル「うん・・・わかった」

ギルド「さっ入るぞ」

ハル「はい!」



ザワザワザワザワザワザワ
ギルドの中にはたくさんの冒険者達がいた

ハル「人が多いなぁ〜」

トレス「そりゃそうさ、特に割の良い依頼を狙いにきている者は多いし、他にも新しいPTを作りに来る者、冒険者同士の情報交換、裏ではPTへの引き抜きまである。この街は住民の半数が冒険者っていう珍しい街だからな」

トレスとハルは話しながらセイラギルドの受付の前に来た

メクリ「ようこそ、セイラギルドへ。あっメディアスのトレスさん。今日は何のご用でいらっしゃいましたか?」


【メクリ 年齢不詳(かなり若い) 女 セイラギルドの受付】
セイラギルドの制服を着て、可愛らしい顔立ちと、可愛らしい声、そして愛嬌抜群な雰囲気は冒険者の中でも大人気であり、ギルド自慢のマスコットキャラクターとも言える存在だ


トレス「今日はメディアスのことじゃないんだ。うちのメンバーの新たな旅立ちだ。ハルはギルドにくるのははじめてだから、ざっと今説明はしておいた」

すべてを悟ったメクリはハルの瞳を見みながら微笑んだ
メクリ「はい、わかりました」

トレスはハルの背中を手のひらで軽く押しながら
トレス「ほらっ、ハル」

ハル「あっあっはい、あの・・・PTを作りたいんですけど」

メクリ「はい、PTの新規登録ですね」

メクリは満面の笑顔で一枚の用紙を出してきた

メクリ「こちらのPT登録用紙に必要事項をご記入の上、ご提出下さい。登録料はかかりません」

ハル「はい」

メクリ「なお、PTの二重登録はできませんので、新規PTの登録が完了しましたら、メディアスのメンバーからは削除させていただきます」


ハル「あっはい・・・↓」

ハルは振り返りトレスの顔を見た

トレスは優しい顔でうなずいた

ハル「トレス、不安と期待で・・・」

トレス「昨日は不安だけだったけど、それが1日経って期待がほんの少しでたろ。明日はもっとかもしれん」

ハル「う、うん・・・でも、不安の方が増すかも・・・」


トレス「受付前でネガティブやめろよ(笑)覚悟決めてきたんだろ?クビになってるんだし」

ハル「あっうん、それはそうだね・・・」

トレス「さぁ書け書け!」

ハル「はっはい」

ハルはPT登録用紙を見つめ、ゆっくり書き始めた

ハル「リーダーの名前と職業」

ハル「ハル、戦士」

カキカキ


ハル「PTの名前」

ハル「ブレスバリィ」

カキカキ


トレス「ちゃんと考えてきてんじゃねぇか♪」

ハル「おかげで寝不足だよ」

トレス「アハハハ」

ハル「メンバー・・・」

トレス「そこはこれからだから空欄だな」

ハル「どんなメンバーをここに書くんだろね・・・」

トレス「そうだな♪」

ハルはPT登録用紙をメクリに渡した
ハル「お願いします!」

メクリは笑顔でPT登録用紙を受け取り
メクリ「はい♪」

メクリはPT登録用紙をチェックし、続いてメディアスの書類に目を通し、ハルの冒険者情報を確認している

メクリ「はい、問題ありませんね。では新規PT登録完了の前にギルドついて説明させていただきますね♪ 」

ハル「あっはい!」

受付の横に『世界ギルド組合のマーク』が貼られていて、メクリは手のひらを上に向けそのマークを指先で指しながら

メクリ「まずこちらのマークがついたギルドは世界ギルド組合に参加しているギルドです。セイラギルドも参加しております」


ハル「はい」

メクリ「世界ギルド組合に参加しているギルドで冒険者登録されている冒険者様は、その各ギルドでゴールドを『貯金する・引き出す』ことができるようになっており、残高も共通となります。そしてブレスバリィはセイラギルド所属のPTとなりますので、セイラギルドでのゴールドの貯金と引き出しに手数料はかかりませんのでご安心下さい。ただ他ギルドでは多少手数料がかかりますので、受付にてご確認下さい」

ハル「おお、便利だなぁ。でもオレここに来たことないし、貯金したことないなぁ」

メクリ「はい、ハル様の貯金残高は0ゴールとなっております」

ハル「ですよね・・・あははは↓」

トレス「(笑)」

メクリ「そして、世界ギルド組合に参加しているギルドで登録されたPTには『PTランク』が与えられます。PTのメンバーがギルドの依頼をこなしていくと、セイラギルドの審査によって『PTランク』が上がっていきます」

ハル「そんなのがあるのですか!?ある一定の経験値やポイントまでいったらランクが上がる感じですか?」

メクリ「依頼をこなした難易度やその内容など『セイラギルドが審査・判断』し、その積み重ねでランクは決定されていきます。ですので逆にそのランクに値しない行動を取ればランクが下がる場合もあります」

ハル「あぁ、そういうことですか」

メクリ「『個人ランク』と同じでございます」

ハル「個人ランク?」

トレス「メクリさん、すまん。そこらへんメディアスのメンバーには説明してないんだ。ハルに個人ランクの説明もしてあげてほしい」

メクリ「そういうことですか、わかりました」

メクリ「冒険者様が世界ギルド組合に参加しているギルドに冒険者登録をされた時点で『個人ランク』 が与えられます。例えば、メディアスでギルドの依頼をこなしたきたハル様は、メディアスのPTランクに貢献しただけでなく、セイラギルドの審査・判断によって自分の『個人ランク』も変化していたことになります」

ハル「おぉ!」

メクリ「そしてPTランクと同様、そのランクに値しない行動を取ればランクが下がる場合もあります」

ハル「あっはい!」

メクリ「ちなみに、個人ランクはPTを移動したとしても、ソロになっても引き継がれるようになっております」

ハル「『PTランク』と『個人ランク』の2つがあり、個人ランクは自分のものだから、PTを移動しても、1人になっても引き継がれるのですね」

メクリ「おっしゃる通りでございます」

ハル「PTランクと個人ランクの最初のランクは、なにからスタートするのですか?」

メクリ「はい。PTランクも個人ランクも最初はFからスタートいたします。そこから依頼成果の積み重ねにより、E、D、C、B、Aとなっていきます」

ハル「おお!」

メクリ「PTランクや個人ランクは力の目安となり、ギルドが依頼を任せられるかどうかの判断材料になったり、他の人からの評価の目安に使われたりもします」

ハル「そういうことですか」

メクリ「はい。PTランクと個人ランクは公開、非公開の設定ができます。PTランクはPTリーダーのみが設定でき、非公開の場合は、PTリーダーのみが確認ができます。個人ランクはPTリーダーもしくはご本人様により設定ができます。
ただし、ご本人様が個人ランクを公開や非公開に設定したとしてもPTリーダーの意志が優先となりますし、PTリーダーが本人にも見せたくない場合はリーダーの権限でそれも可能でございます」

ハル「PTリーダーはいつでも知ることはできで、メンバーの設定はPTリーダーの権限で自由自在にできるわけですね」

メクリ「おっしゃる通りでございます」

ハル「わかりました。ちなみに、メディアスのPTランクと個人ランクはどうなってますか?」

トレス「おぃおぃ(笑)」

ハル「あは」

メクリ「メディアスは、PTランクも個人ランクもすべて非公開になっていますね」

ハル「!」

トレス「・・・(笑)」

ハル「リーダーの権限でそうなっていたのでしょうか?」

トレス「おぃっ(笑)」

メクリ「その質問のお答えはできないことになっておりす」

ハル「あっ、そうですよね」

メクリは笑顔で
メクリ「はい」

ハルは振り返りトレスを見ながら
ハル「メディアスでPTランクや個人ランクの話しが出なかったのは、トレスが隠してたから?」

トレス「まぁ、そういうことだ、変な競争されてもこまるからな(笑)メクリさんにもPTランクと個人ランクの話はメディアスのメンバーにはしないように頼んでいたしな」

メクリ「はい」

ハル「そういうことね(笑)」

トレス「そういうのも、リーダーによりってことだ」

ハル「うん」

トレス「メクリさん、メディアスの現在のPTランク教えてくれ。ハルのこれからの目標にもなるかもしれんからな」

ハル「えっ!いいの」

トレス「あぁ」

メクリ「はい、わかりました。メディアスの現在のPTランクはCランクでございます」

ハル「凄い!Cなんだ!!トレス、ありがとう。がんばるよ。」

トレス「おぅ♪」

メクリ「ブレスバリィのPTランク、ならびにハル様の個人ランクの公開・非公開はどうなされますか?」

ハル「PTランクとオレの個人ランク、両方公開で!それに、もし仲間が出来たら個人ランクの公開、非公開は個人の判断にまかせることにします!」

メクリ「わかりました♪」
トレス「ほ〜早速ハルらしい判断だな」

ハル「うん♪」

メクリ「わかりました。ブレスバリィのPTランクとハル様の個人ランクは公開。メンバーの個人ランクは個人の判断ですね。それも受け付けました。もし変更がありましたらお申し出ください」

ハル「はい」

ハル「ちなみに、メクリさん」

メクリ「はい?」

ハル「オレのランクは?」

メクリ「まだメディアス所属なので、申し上げられません」

ハル「あっそうか(笑)」

トレス「教えてやってくれ」

メクリ「はい。ハル様は、Dランクとなっております」

ハル「おっ!?Dなんだ!なかなか!!FかEかと」

トレス「がんばってきたからな」

ハル「うん♪」

メクリ「セイラギルドでは、依頼の紹介や、PTメンバーの紹介もしておりますので、ぜひご活用ください」

ハル「はい」

メクリ「説明は以上ですが、なにかご質問などありますでしょうか?」

ハル「なにを質問したらいいかもまだよくわからなくて・・・、なにか思いついたらまた聞きに来ていいですか?」

メクリ「もちろんでございます」

ハル「ありがとうございます」

メクリがハルをジッと見つめた
メクリ「では・・・」

ハル「えっ?」

メクリがハルをジッと見つめた
メクリ「ん〜」

ハル「えっ、なにか問題でもありましたか・・・・?」

メクリはハルをジィィィ〜と見つめている

ハルもメクリをジィィィ〜と見つめる

トレスはハルの後ろでニヤついている
トレス「・・・(笑)」

メクリはいきなり大きな声で
「セイラギルド所属、PT (パーティ) ブレスバリィ、ここに誕生で〜〜〜〜〜す♪」

ハル「うわっ、びっくりしたぁぁぁあ!!」

まわりの冒険たちのザワザワが完全に無くなりセイラギルド内は静寂へと変わった

まわりにいた冒険者達「・・・」

ハル「えっ!・・・メクリさん、なっなんでそんな大声で!?えっえぇ!?」

まわりにいた冒険者達が一斉に

「おめでとう〜」
「未来の英雄がんばれよ〜」
「ブレスバリィか、カッコイイ名前だな〜」
「おめでとうなぁぁ〜」
「ボウズがんばれよ〜」

パチパチパチパチパチパチ・・・

祝福の歓声と拍手が湧き上がった

ハルは照れながら冒険者たちに何度も頭を下げた
ハル「わっ!あっありがとうございます♪ありがとうございます♪」

メクリ「おめでとうございます♪ハル様がリーダーである『ブレスバリィ』は、ただいまより正式にセイラギルド加盟のPTとなりました。PT登録完了です!」

ハル「はい♪」

メクリ「改めまして、セイラギルド受付のメクリです。これからどうぞよろしくお願い致します」

ハルはメクリに深々と頭を下げたながら
ハル「はっはい、こちらこそどうぞよっよろしくお願いします」

メクリは満面の笑顔をハルに見せた

トレス「おめでとう、ハル。これでお前は『ブレスバリィ』のリーダーだ。がんばるんだぞ」

直立不動で返事をするハル
ハル「はっはい、がんばります!」

トレス「ガッチガチだな。まだメンバーもいないのに(笑)」

ハル「!」

ハル「あっそういえば、メンバーはどうやって探したらいいの?やっぱりギルドで紹介してもらった方がいい?」

トレス「どんなメンバーをどこでいつ入れるのか。それもリーダーの仕事さ。ギルドで紹介もしてもらうこともできるが、まったく知らない冒険者を紹介されるわけだ。ギルドの紹介を使うのは最終手段と考えて、まだ焦る必要はないから、まずはゆっくり自分で探せばいいさ」

ハル「そっか、そうだね。自分と相性の良さそうな冒険者をゆっくり探してみるよ」

トレス「そうしな♪」

ハル「リトラバードとか」

トレス「メディアスから引き抜きは禁止だ(笑)」

ハル「あはは」

トレス「冗談も言えるってことは、ホッとしたらしいな」

ハル「どうにか」

トレス「よしっ!オレの仕事はここまでだ。本当に困ったらいつでも相談に乗るが、まずは自分でいろいろ試行錯誤してみろ。ただ、PTを作ったからって、がんばりすぎて無理だけはすんなよ、ゆっくりが大切だ」

ハル「わかった。あの・・・トレス」

トレス「なんだ?」

ハルはトレスに深々と頭を下げた
ハル「トレス、本当に今までありがとうございます。そして、これからもよろしくお願いします」

トレス「改まって言われると、こっちが恥ずかしいわ」

ハル「あは」

トレス「アハハハ」

トレス「これからもよろしくな、同じリーダーとして」


ハル「はい!」

トレス「それじゃあな、依頼がつまってるからオレは行ってくるわ」

トレスはそういうと振り返りギルドの外へと歩きはじめた


ハルはトレスの後ろ姿に、深々と長い長い一礼をした

トレスは・・・・ハルの性格を手に取るようにわかっているのであろう。振り返らずに右手を上げた


後からギルドを出たハルはいつものお気に入りの噴水に腰かけ、女神のみずがめから流れるキレイな水をジッと見つめていた

ハル「ブレスバリィかぁぁ。まさかオレがPTを作るなんて夢にも思わなかったなぁ」

ハル「いきなりのクビ・・・」

ハル「考えていた明日とまったく違うものになったわ・・・」

ハル「人の力って凄いなぁ」

ハル「オレは誰かの人生を左右させれるような人間になれるのか?良い方向へと導いていく力があるのか?」


ハル「トレスみたいに凄いリーダーになれるんだろうか・・・」

ハル「あっ・・・どんどん不安になってきた・・・」

ピピン「ハル・・・・ハル・・・・ハルったらぁぁぁぁぁあ!」

ハル「おっおぅ、ピピン!」


【ピピン 15歳 女 盗賊】
メディアスのメンバー。明朗快活、身体は細身で戦闘での俊敏さはメディアスイチ。あらゆる盗賊スキルにも長け、トレスの腰に下げられたキンチャク袋から、ピピンのお昼の飲み物代金を10日間も連続でくすめたというメディアス内の伝説を持つ。10日目にピピンがトレスに「まだ気づかないの?」と聞いたと言う


ピピン「なぁにまたブツブツ言ってんのよ〜何度も呼んでるのにぃ〜。ブツブツいいながら、どこかの世界に行っちゃてるのかと思ったわよ(笑)」

ハル「おおげさな(笑)」

ピピン「この清〜らかな噴水の前でネガティブ発言やめてくれるぅぅ。水がけがれちゃうわ(笑)」

ハル「確かに(笑)」


ピピン「クビ、そしてPTおめでとう♪」

ハル「あっはぁ↓あっありがとう。。。」

ピピン「うふっ♪」

ハル「なぁピピン1つ聞いていいか?」

ピピンは右手を出し
ピピン「10ゴールド!飲み物代!」

ハル「え?お金とるの・・・?w」

ピピン「あったり前じゃない、わたし盗賊よっ!タダでなんて生きていけな〜い♪」

ピピンは右手の人差し指でハルのおでこを軽く弾いた


ハルはビビって目をつぶり
ハル「痛っ・・・くわなかった(笑)・・・わかったよ、飲み物な」

ハルが腰に下げたキンチャク袋から、10ゴールドを取り出してピピンに渡そうとすると

ピピン「えっ?あと10ゴールドくれるの?

ハル「え!?あと?どゆこと???」

ピピンは左手を広げ、20ゴールドを見せた

ハル「それ、まさかオレのか・・・?」

ピピンは元気よく、何度もうなずいている

ハル「いつ?」

ピピン「今ハルがビビって目をつぶってた時」

ハルは苦笑いをしながら
ハル「・・・ピピン・・・すげぇよ・・・」

ピピンは走って飲み物を買いに行き、そしてすぐに帰ってきた

ハル「移動時間もなにもかもがおかしいから・・・w」

ピピン「ハルの分も買ってきた」

ハル「ありがとう♪ってオレのゴールドだけどな・・・」

ピピンは興味津々にハルの顔を覗き込みながら
ピピン「それで、話しってなに?」

ハル「オレさ、すぐに考え込むじゃん」

ピピン「心配性でネガティブだしね!」

一瞬ハルがピピンの顔の前にドアップになった(笑)
ハル「それ!!」

ピピン「こっこわいから・・・(笑)」

ハル「でもトレスや特にピピンなんて、いっつも明るくてポジティブ。うらやましいくらいだよ」

ピピン「うん、まぁそうね。それで?」

ハル「どうしたら、オレもそうなれるんだ?」

ピピン「あら、そんな大切な相談だったら1万ゴールドだったわね」

ハル「ぬっ!」

ピピン「まぁ今まで同じPTだったし、ハルには何度も助けてもらってきたから、今回は特別にお祝いも含めてこの飲み物だけで教えちゃう♪」

ハル「おっおう」

ピピン「目よ」

ハル「目?」

ピピン「そう」

ハル「どういうこと?」

ピピン「例えばね、トレスがハルをクビにしたよね」


ハル「うん」

ピピン「じゃ、そのクビからなにを思った?」

ハル「メディアスをクビになった、もうみんなと一緒に冒険が出来なくなる」

ピピン「それは悪い部分、ネガティブな方ね。なら良い部分としては?」

ハル「良い部分・・・ん〜。新しいPTのリーダーとしての期待かな」

ピピン「そうだよね。よく考えれば、今のように1つの出来事には、良いことと、悪いことがそれぞれあったりするのよ」

ハル「ほ〜〜うんうん」

ピピン「ポジティブになりたいならまずは、その出来事からプラスのことを考えられるようにしないとね」

ハル「ほぉ〜そうだね」

ピピン「しかもプラスが複数だったり強く思えるようになったら最高よね」

ハル「たしかに」

ピピン「だから『良いものを見る目』を育てることが、とても大切なの」

ハル「『良いものを見る目』を育てるかぁ・・・」

ピピン「人はみんな最初は悪いものがよく目に入るものなのよ。それが自然なのかもね。でもそのままでず〜っといたら、ハルになるわけよ(笑)」

ハル「ゲッ」

ピピン「だからこそ普段から『良いものを見る目』を強く意識して生活することで、いつの日か自然と良いものをたくさん見つけれるような、強く見つめれるような自分に変化するんじゃないのかしら?」

ハル「ほぉ〜〜」

ピピン「そして『数多くのポジティブと、しっかりしたネガティブ』を知れば、ネガティブで警戒することも、ポジティブでチャレンジすることもできて、あとは自分にとってや、まわりにとってのその時の最善の考え方をできるかどうかじゃないかな?そこはさらにセンスが必要かもだけどね♪」

ハル「『数多くのポジティブと、しっかりしたネガティブ』『最善の考え方はセンス』かぁ、深い・・・。でもよくわかるわ」

ピピン「ハルは、ネガティブピカイチだから、戦闘で誰よりもいち早く危険を察知して『逃げろ〜〜』って大きな声で叫んでくれて、みんながそれを聞いて一斉に逃げて助かった場面だって何度もあったじゃない」

ハル「誰がそんなあだ名つけたんだかしらないけど、一時は『逃げろ隊長』ってあだ名がついたことがあったな(笑)」

ピピン「私が名付けの親よ」

また一瞬ハルがピピンの顔の前にドアップになった(笑)
ハル「犯人はピピンか・・・!」

ピピン「アハハハ」

ハル「・・・」

ハル「でも凄いことを聞いたぞ!すぐ出来る気はしないけど」

ピピン「そうね。1日2日で出来たら苦労しないわよ」

ハル「やっぱりそうか・・・」

ピピン「たぶんね」

ハル「うん」

ピピン「私も以前は、ハルみたいにネガティブだったのよ」

ハル「へぇ〜」

ピピン「私も悩んで、ある人に相談したらこんな感じの話を聞いてさ。その日から変わろう変わろうって今も努力中なのよ」

ハル「今も、そうは見えないが・・・」

ピピン「そうは見えないだけ、見せてないだけ。以前よりは全然良くなったけどまだまだ必要以上に悩んだり凹んだりもたくさんあるんだから。これは時間がかかるものなのよ」

ハル「そうなんだぁ。やっぱりピピンって凄いね」

ピピンが照れている
ピピン「なっなによ〜。そしてね、一番大切なのは、これもただの一例ってこと。答えなんていろいろよ!」

ハル「うん、いろいろね、そうなんだろうなぁ。それもわかる」

ピピン「うん」

ハル「ありがとうピピン。オレもまず『良いものを見る目を強く意識する』ことから試してみる。オレもすぐには出来ないだろうけど、とっても大事なことを聞けたんだ、いつか変わってみせるさ」

ピピン「うんうん」

ハル「それにさ、オレ気付いちゃいました!!」

ピピン「なに(笑)」

ハル「ピピンとまったく同じ時間を過ごしてるのに、オレの方はネガティブな辛い時間をたくさん感じてて、ピピンはポジティブな楽しい時間を感じているということに!ズルいな!(笑)」

ピピン「あら、そこも気づいちゃった??じゃ、競争だね」

ハル「競争だな!」

ピピンはニコニコしながら
ピピン「うん♪」

ハル「本当にありがとう。ピピン」

ピピンがウインクして答えた

ピピン「さて、メディアスに戻って依頼こなしてこないと!まったねぇ〜」

ピピンは素早く去っていった


ハル「ピピン、本当にありがとうな♪よしっ『良いものを見る目を強く意識する』を今からがんばってみるか!!」


[第2話へ続く・・・]


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