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読書録「驟り雨」

藤沢周平「驟り雨」(新潮文庫)

橋のたもとに降りると、重吉はあっさり言ったが、不意におもんの手をとって握った。
「だいぶ辛そうだが、世の中をあきらめちゃいけませんぜ。そのうちには、いいこともありますぜ」
そう言うと、自分の言葉にてれたようにもう一度笑顔をみせると、不意に背をむけて、すたすたと橋を遠ざかって行った。
「遅いしあわせ」(p230)

どうすることもできない、しがらみや逆境の中にあってもひたむきに生きる市井の人々が丁寧に描かれている珠玉の短編集。

表題作をはじめ全ての作品が心の琴線に触れる美しい物語だった。
今回紹介した「遅いしあわせ」は、博打に狂うやくざな弟のせいで嫁ぎ先から離縁され貧しい暮らしを余儀なくされた主人公が思わぬ人から救われる・・・。と、これだけ書いてすでにウルっとしてしまう。

誰かを信じてみたくなるような気持になれるので興味があれば、是非ともご一読頂きたい。

今まで色々な人のお世話になってきた。
その中には気付かずに見過ごしてきたり、感謝の言葉を伝えることができなかったこともあるだろう。

あの時、お礼を伝えたかった。
そんな風に後悔することもあるけれど、今度は僕が手を差し伸べる番だと考え直す。

バトンリレーのように受けた恩を繋いでいく。
そうすることで、少しでも優しい社会になればよいと思う。

本日も皆様にとってよい一日でありますように。



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