a noisy room diary❆*(14)
『社会不適合者』
翌日の夕食前、お腹が空きすぎて酷く怒り狂っている患者がいた。私はそれよりもタバコよりもアルコールが飲みたくてイライラしている。
(せめてビールでいい。本当は早く酔いたいからウィスキーのストレートをグイッと飲みたいのだが…)。
しかし、愛しい娘からのライン返信で心が落ち着く。
…娘よ、大学からの帰り道を気をつけて部屋へ帰るんだよ。どうぞ、無事に過ごしていますように。
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21:00消灯。私は眠れなくて『センセイの鞄』を読み返す。大好きなんですよ、この本が。普通のようで普通ではなくて不思議なお話し。
22:00過ぎ、保護室からだろうか?壁やドアを叩く激しい音が聴こえてくる。ナースは必死に何かを言って説得しているようだ。とにかく保護室の患者もナースも命懸けのようだ。
少ししてから病棟内をズズズズっ…とナニか?誰か?が足?を引き摺りながら歩く音が聴こえてくる。
こわすぎて私は白い病院の毛布の中へと身を突っ込んだ。そして心の中で聖なる宇宙交信もどきをする。
聖なるものは強い。そう私は信じたい。
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どれくらい時間が過ぎたのだろうか?
気がつくと夢の中でよく行くイタリアンレストランに私はいた。愛しい娘も一緒だ。
「マッマ、アリス、お腹が空いたよ」としょんぼりする娘。
「うん、マッマもお腹が空きすぎているみたい」。
私は娘の頭をいい子いい子と撫でた。
すると、少ししてからメインとなるパスタ前にサラダとパンが運ばれてきた。小ぶりなトマト風味パンにオリジナルシンプルパンだ。白い清潔な皿には透き通った淡い翠色のオリーブオイルが入っている。すぐに私と娘は「美味しいね。美味しいね」と言いながら、オリーブオイルにパンを少し浸してから食べた。
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朝食前6:40、私はエアロバイクをこぎながら、
仲良くなったえみこさんと退院したら仕事どうする?の話しで笑い合っていた。えみこさんは朝の新聞配達の仕事がしたいと言うのだ。
「えー…えみこさん、でも夏ならまだいいけど冬の新聞配達は大変でしょう。東北はすっごい寒いし…」と、息切れをしながら私は話した。
「うん、でもね、友達が新聞配達しているけれど楽しいって言うのよ」。
「へえ…そうなんだ。でも確かに朝早いから人間関係は楽そうだねぇ」。
「ねえねえ…リリコさん、外の世界は人間関係大変なの?私、入退院ばかり繰り返していたからよくわからないんだよね、社会人としてのこと…」。
私は「うん、まあ…その人に合っている職場だったら大丈夫だろうけど…」とそれ以上は言えなかった。
私は社会不適合者だからな。
心ないことを言う人間がいることは確かにいる。
私は確かに社会不適合者だけれども、そうゆう事を言わない困っている人を助けてあげれる人間になりたいものだ。
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雨ニモマケズ風ニモマケズ雪ニモマケズ
折リタタミ傘ガ折レテシマッテモ
ビニール傘ガヤブレテシマッテモ
コワレテシマッテモ
滅気ズニ 挫ケズ 雨ニモマケズ風ニモマケズ
雪ニモマケズ
頑張ッテ外ヲ歩キ 仕事ヘ行ク人デアリタイ
雨ニヌレテモ涙ニヌレテモ
ニコニコト笑エナクナッテシマッテモ
アタタカイヒトデアリタイ
ダレカノタスケニナリタイ
ソウユウモノニ
ワタシハナリタイ
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私はバイクのペダルをこぎながら、ちょっぴり泣けてきた。そんなどうしようもない私をえみこさんは黙って眺めていた。
つづく
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