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【読書記録】ちきりん『マーケット感覚を身につけよう』【そんじゃーね!】

周りにどんなに「価値があるもの」があったとしても、それを認識することができなければ「ない」ことになってしまいます。
同じものを見ても、ある人には価値が見え、ある人には価値が見えない。
それはマーケット感覚があるかどうか、そう本書では語られています。


本書の目的は、
 ・マーケット感覚とは何かを説明し、
 ・なぜそれが大事なのか理解していただき、
 ・マーケット感覚を身につけるための具体的方法論を提示すること

「はじめに」より




以下、私が大事だと思った部分を引用も交えながら要約しています。

第1章 市場と価値とマーケット感覚

マーケット=市場とは、
 ・不特定多数の買い手(需要者)と不特定多数の売り手(供給者)が、
 ・お互いのニーズを充たしてくれる相手とマッチングされ、
 ・価値を交換する場所

p.16

マーケット感覚とは、その市場で取引される価値が何か、感覚的に理解できる能力。
「誰に何の価値を提供するか」という視点が大事。
「取引されている価値を論理的に分解する」ことができると、マーケット感覚が活用できる。

 このように、それぞれの市場で売られているもの(=取引されているもの)は、米やスイカ、自動車といったモノではなく、なんらかの「価値」です。

p.27

 同様に、マーケット感覚のように一見「センス」系に見える能力も、必ずしも一部の人だけが持つ天賦の才ではありません。洋服のセンスがとても素敵な人は、小さい頃から洋服選びに長い時間や思考シェア(モノを考えている時間のうち、洋服について考えている時間の比率)を割き、おこづかいの大半を被服費に投じて、他の人の何倍も多くの失敗を経験したうえで、周囲から一目置かれるセンスを獲得したのです。それらは決して「生まれつきのセンス」などではありません。

p.32


第2章 市場化する社会

相対的であった社会が、全体として市場化している。

仕事と労働力のマッチング方式が市場型に移行すればするほど、市場のニーズを読む力、すなわち、マーケット感覚が重要になるということを意味しています。

p.44

需給バランスの変化が今の社会は大きく、それによって働く機会や報酬は影響を強く受ける。
市場の状況を正しく判断するためにマーケット感覚が重要となる。

 日本では皆が「よいものを安く」を追求しがちですが、世界には「よいものは高く」が当たり前という地域もあります。市場が統合され、市場参加者が大きく変わったとき、ゲームのルールがどう変わったのか。それを見極める力(これもマーケット感覚のひとつです)がないと、市場統合前の地位を維持することさえ、難しくなってしまうのです。

p.58


第3章 マーケット感覚で変わる世の中の見え方

マーケット感覚が身につくと、世の中の見え方が変わり始める。

 特に若い人は、むやみに貯金ばかりしていては、将来に向けて必要な経験が得られません。今年100万円分の貯金が増えたと喜んでいる人は、自分はもしかしてこの1年で、100万円分の貴重な経験を逃してしまったのではないかと、振り返ってみるべきです。

p.84~85

 自分をどこで売るべきか、自分が高く売れる市場はどれなのか。「一生懸命頑張る!」前に、どの市場で頑張るべきなのかという市場の選択にこそ、マーケット感覚を働かせる必要があるのです。

p.94


第4章 すべては「価値」から始まる

ノウハウや知識を覚えると一時的に売上は上がる。
しかし重要なのは、経験したことのない場面に遭遇した時にも、自分で判断できる独自の基準や肌感覚を持つことである。
「自分は何を売っているのか」「何を買っているのか」について、意識を持つ。
ただ商品(モノ)を買っているのではなく、それに付随している価値を買っているということを頭に置く。

 このように私たちの周りには、市場化されうる価値の素が、無限に存在しています。「自分には何の才能もない」「会社をクビになったら食べていけない」などと嘆く人は、マーケット感覚がないために、自分の身の回りにゴロゴロと転がっている潜在的な価値の素に、気がついていないだけなのです。

p.114

 世の中には「自分で選ぶのが大好き」な人と、「選ぶのは面倒。誰かに選んでほしい」という人がいます。同じモノを買うときでも、両者が求める価値はまったく異なっています。前者は比較サイトやレビュー情報に価値を感じ、後者は「選んでくれる人」に価値を感じるのです。特に、多すぎるほどのモノやサービスが溢れている先進的な消費大国においては、「誰かに選んでもらうという価値」は、今後ますます重要になります。

p.119

世の中で最も多いのは「普通の人」であり、一番大きな市場は「普通の人をターゲットにした市場」です。だから、自分が「普通であること」の価値を、過小評価する必要はまったくないのです。

p.129


第5章 マーケット感覚を鍛える5つの方法

①プライシング(値付け)能力を身につける
身の回りのまだ商品化されていない「何か」について、独自の基準でどのくらいの価値があるか考える。
「自分の価値基準では、いくらが妥当なのか?」という思考をすることが重要。
自分の価値判断ができないと、今は値札が付いていないモノに対しての価値が見えてこない(これは自分の取り柄が見えず、価値がないと思ってしまうのと同じ)。

プライシングができる自分独自の価値基準が身につくと、
 ①自分にとって、この商品(サービス)の価値はいくらか?
→②他の誰かにとって、この商品(サービス)の価値はいくらか?
→③そのまた別の誰かにとって、この商品(サービス)の価値はいくらか?
→④この商品(サービス)を最も高く評価する人は、どのような人たちか?
→⑤この商品(サービス)を、誰に向けて売れば、価格は一番高くできるのか?もしくは、一番たくさん売れるのか?
 という形で思考を進められるようになります。

p.157~159

②インセンティブシステムを理解する
インセンティブシステムとは、人が何か特定の言動をしたとき、背景にある要因や、その要因が言動につながるまでの仕組みのことである。
これが理解できると、市場における需要者や供給者が何に基づき、次にどんな行動をとるか、予測する力になる。

 日頃から「こういうことがやりたい。でも、どうせできない」「あれが手に入れたい。でも、どうせ手に入らない」と考えていると、いつしか、それが自分の欲しいものだと、わからなくなってしまいます。
 人間なら誰でも持っている、自分が傷つかないよう守るための防御システムが、「どうせ手に入らない」という気持ちを「そんなに欲しくない」という気持ちに変えてしまうからです。

p.172~173

③市場に評価される方法を学ぶ
「組織」と「市場」の意思決定スタイルの違いを理解し、市場に評価される方法を学ぶこと。
これまでは重要な意思決定は組織の中で行われてきたが(例:国や地方公共団体)、最近は多くの重要な判断が市場のダイナミズムの中で行われるようになっている。

 こうなると、「とりあえずやってみる」人が得られるチャンスは、慎重に作り込む人が得られるチャンスより、はるかに大きくなります。(中略)成功するかどうかわからないけど、とりあえず起業をしてみる人のほうが、「やってみて決める」世界では、チャンスをつかみやすいのです。

p.197

④失敗と成功の関係を理解する
「失敗経験がない」=「チャレンジをしていない」「成功するのに必要な学びを得ていない」。

⑤市場性の高い環境に身を置く
市場性の高い場所とは、需要者と供給者が価値を交換する現場、人間のインセンティブシステムが直接的に働く場所、市場的な意思決定方法が採用されている環境のこと。




ゼロから何かを生み出すのではなく、既存のモノが新たな価値を生むということに気づかされました。
それを見極める力、マーケット感覚を身につけることこそが、社会を生き抜く力になるのだと実感します。
自分の好きなことで生きるためにも、身につけたい力だと強く思いました。


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