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かけがえのない宝

手術の1週間後医師から、「掻爬した組織から胞状奇胎疑いの組織が見つかりました。本当に胞状奇胎なら絨毛がんになる可能性もあるので3ヶ月は、治療は出来ません。その間も、血液検査で様子を見ていきましょう。」

すぐにでもまた治療をしたかった。
それなのに、胞状奇胎?それに3ヶ月も様子観察ってと、また涙がこぼれ落ちた。

毎日メソメソしていたら、最初は気遣っていてくれた大吾もだんだんいつもの大吾に戻っていった。

相変わらず仕事に行くたび落ち込みも増す毎日。
そんな中、テレビを見ていると新築マンションのCMが流れた。そのマンションは、大吾と歩いている時に、ここにマンション建ったら絶対買うけどね、と言っていたマンションだった。

早速資料を取り寄せた。
全室90㎡以上、ベランダだけで40㎡というとても広いマンションだった。売り出し価格は4500万円以上から、上層階は180㎡の億ションだった。

悲しいことに向き合うのが辛く感じた時に、突如現れた高級マンション。少しだけ気が紛れてきた。

大吾に早速話してみると、モデルルームを見に行こうということになり見に行った。モデルルームは、そのマンションの中くらいの広さの130㎡のものだった。
見た瞬間気に入って購入意欲が倍増したが、すべて8000万円以上だった。

諦められず1番狭い90㎡の部屋の間取りを見た。
130㎡の部屋を見た後の90㎡は、狭く感じた。でも、そのマンションの場所が捨てがたく、90㎡の部屋に決めて購入の意思を固めた。

購入の意思は固めた部屋の価格は、5000万円ちょっと。35年ローンにして月々に換算すると13万円の支払いで、今の家賃と変わらない。
支払い自体は出来るとは思っていたが、問題はローンが組めるか否かだった。

ハワイの結婚式でまとまったお金を使ってしまった為頭金は出せて500万円、残り4500万円のローンの申請を、一応出してみた。

その時に、大吾の収入問題が浮上した。そもそも申告をしてこなかったので、ローンの申請時変に大吾の名前を書くと、無申告な事もあり、色々と問題が出てくるという事で私名義で買うという事になった。

結果は、3800万円までならローンは通ると言われ、残り700万円を工面をするように言われた。
諦めようとも思ったが、気に入ってしまったからにはなんとかしようと思い、ここには書けない方法で、工面をし、私名義でのマンション購入が決まった。

30歳にして4500万円の借金を背負ってしまった。

しかし、このマンションが、後に家族の窮地を救うことになる。

そして、数年後に、モデルルームで見た部屋に住むことになることも、その時には想像していなかった。

このマンションが、私たち家族のかけがえのない宝となった。

宝を失った時、家族もバラバラになってしまったけれど。

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