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流れ落ちる液体

双子の妊娠がわかり1か月ちょっとが経過した。
復帰してすぐに妊娠したということもあって、職場には申し訳なく思いつつ、自分の出来ることを精一杯しようと日々頑張っていた。

予定されていた心臓外科の手術については、機械だしは、保留となったが、外回りについては引き続き行っていた。

心臓外科の外回りとは、まず手術が始まる前に、手術中に使うであろう薬品の準備、輸血の準備、麻酔の準備、患者さんが搬入されたら、麻酔の介助、手術の準備の介助等々2人で沢山の仕事をこなさなければならなかった。

双子妊娠中でも、容赦なく行っていた。
そんなある日、心臓の手術を終えて帰宅し、いつも通り娘を迎えに行き、食事を作りの一連の流れを終えて、ソファーに寝ていた。その時にお腹を触るといつもよりお腹が大きく膨らんでいた。

大吾が帰宅したので、「さすが双子だけあって、4か月になったばっかなのにおなかがこんなに出た」と言って見せた。そして、ベッドの中に入り就寝した。

夜中の2時頃トイレに行きたくなったかもとも思い立ち上がると、ズボンの隙間から透明の液体が流れ出してきた。

えっ、漏らした?と思ったが尿意はない。
嫌な予感がして、大吾を叩き起こし、救急車を呼んでもらった。破水??だったらどうしようと思い動揺した。とりあえず着替えを持ってきてもらい、着替えて寝たまま救急車を待った。

救急隊が到着し、双子妊娠中で透明の液体が流れ出したということで、セレブ御用達病院に連絡を取り搬送されることになった。
こんな時でも、娘はすやすや寝ていたので、私だけ救急隊の担架に乗せられ救急車で運ばれた。

セレブ御用達病院ではなく、もっと大きな病院に連れて行ってもらいたかったが、かかりつけということでは運ばれることになったが、嫌な予感しかしなかった。

そこでは、副院長と名乗る医師から診察を受けた。
エコー上双子の心音や見た目の様子は変わらなかった。しかし、その医師からの説明によると、「4か月の破水だったら、そのうち流産します。2.3日は、様子見ますが、そのあと処置することになると思います。」

目の前が真っ暗になった。こんなに変わらずエコー上元気に心臓も動いているのに流産なんて信じられない。そう思うと涙が溢れて止まらない。

朝になって、また医師がやってきた。
でも、話もしたくない気分だった。それより、たいしてエコー上診てもないのに本当に流産なのかも、疑っていた。その思いとは裏腹に、生理のような出血もあって、やっぱり流産なのかと思ったり、複雑な感情なまま過ごしていた。

すると1人の助産師さんが、お腹の上から赤ちゃんの心音が聞ける機械で心音を聴かせてくれた。
1人目の心音が、これ、2人目の心音がこれ、2人とも元気ですよ。と言ってくれた。

この事で、モヤモヤする気持ちが晴れた。
看護師さんを呼び、「夜中に診断した医師ではなく、別の医師に変えてもう一度診てくださいと頼んだ。」
すると、夜中の医師がまた来て「誰が診ても変わらないと思う」と言いに来た。

負けずに、他の医師にも診てもらいたい事を面と向かって訴えた。渋々、他の医師にアポを取り診てもらうことになった。
すると、その医師は、「お母さんが、思った通り、あれだけ破水のような水が出た割に羊水が減ってないから、破水じゃないかも知れないね」と言ってくれた。

この言葉を聞いて、親身になってくれた助産師さんに、不信感があるの、で、転院の意思がある事、元々5か月になったらセレブ御用達病院では双子出産をしていないためか大学病院に転院になる予定だったので、今から受け入れてもらえないか検討して欲しい事を伝えてもらった。

その結果を待つ間、次々と後悔の念が浮かんでくる。何故双子妊娠中なのに無理して働いてしまったんだろう。
娘の送迎のために、自転車に乗ってしまったこと、2人の命を軽んじてしまった自分を責め続けた。

ズボンから流れ落ちてくる液体の生温い感触がいつまでも残って眠れない2日目の夜を迎えた。

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