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中田◯ウス烈伝②

時は2009年。
巷では政権交代だのなんだと騒ぎ立てる日本。

そんなことはお構いなしに今年も四季は巡る。
煌々と照りつける太陽。
目に飛び込んでくる深々とした緑。
窓越しにも聞こえてくる、けたたましい蝉の声。

そう、夏である。

中田は当時32歳。脂の乗った年頃である。
休日、彼は家から近くのホームセンターへとその細い足を向ける。

昨年から自宅の庭で家庭菜園をはじめた中田。
昨年はキュウリ、ナス、大根、ゴボウなどといった、人を撲殺することに特化した野菜ばかり育てていたが、今年は何か新しい試みをと考える中田。

そこで今度は、ミニトマトの栽培を始めようという訳だ。しかも黄色の。赤じゃなく。黄色の。

中田は黄色が好きだ。(カレーが好きだから)

そんな訳でホームセンターでミニトマトの種と、護身用に小さなハンマーを購入し、店から出てきたホクホク顔の中田。(凄く身長が大きい。190cm)

気づけば太陽は西方へと沈まんとしていた。

 おっと、もうこんな時間か。
 こんなことなら万引きなんてしなきゃよかった。
 取り調べすっごい長いんだもん。
 あ〜、お腹ぺこぺこ。
 カレー食お。

そう大声で呟いた中田は自宅へと歩を進める。

数分歩いたところで、中田の耳に何やら楽しげな音が聴こえてきた。太鼓に笛に女性の歌声。

 うるさっ。

そうは思いつつも、気になった中田。
その音に誘われ、たどり着くとそこは神社の境内。

ぽっと灯りを灯し、並ぶ赤い提灯。
ざんざと騒ぐ、人々。
夏祭りの出店がずらりと立ち並んでいた。

この中田、祭りは嫌いではない。
18の頃、地元の祭りの喧嘩神輿で、並いる大人たちを全員薙ぎ倒し、一躍その日の主役となった。

その日中田が薙ぎ倒した人々の数、およそ

『3000万人』!!!

その日、村は廃村となったのはまた別のお話。

中田はその大きな足(右:28cm 左:28.5cm)をずんずんと踏みしめ、立ち並ぶ出店を横目に歩く。

すると中田の目にある文字が飛び込んできた。

『射的』

中田は思わず声を上げた。

 チャカかぁ!!!

射撃は中田の最も得意とするところであった。
射的一回700円。少々割高だが、そんなことはお構いなし。早く撃ちたい。

お金を払い、銃を手に取る中田。
うっとりと眺める。
さながら、ショーウィンドウに並べられた金色のトランペットを眺める少年の眼差し。
その四本指の左手をそっと銃身に這わせる。
中田は股間がポッと熱くなるのを感じた。

中田は並べられた的に目を移す。

 ほぉう、なかなかの品揃え。
 この中の目玉は、あれだな。

『Nintendo switch』。

どれどれ。
 今夜はスプラトゥーンとでもしゃれこもうか。

彼は台から身を乗り出し、精一杯腕を伸ばす。
台から的までの距離はおよそ3m。
お忘れだろうか。
彼は身長190cm。腕の長さは180cm。

上半身(50cm)
 + 腕(180cm)
  + 銃(60cm)
   = 290cm


そう、彼が腕を目一杯伸ばすと的までの距離は残り10cmである。猿でも当てれる距離だ。
弾は7発。おつりがくるくらいだ。

一発目 パンっ    スカッ
二発目 パンっ    スカッ
三発目 パンっ    スカッ
四発目 パンっ    スカッ
五発目 パンっ    スカッ
六発目 パンっ    スカッ

 おもんないねぇん‼️‼️

中田は吼えた。月に向かって。

しかし、無情にも弾は残り一発。
中田の頬を涙が伝う。悔し涙だ。
中田はその震える唇で店主に言った。

 落ちてる弾拾っても構わん?

もちろん答えはNO。
肩をガックリと落とした中田は的に向き直る。
しかし、漢、中田。
タダでは終われない。
最後の一発、必ず当ててみせる。

 switchはワシのもんや。

照準を的に合わせ、人差し指を引き金にかける。

ぐぐぐっ

パンっ             スカッ

しかし中田、咄嗟に機転を効かせ、
驚天動地の爪先立ち!身長+10cmの荒技!!
的に届く銃の先端。チョンっと的を押した。

ぽてんっ

的が倒れた!!やった!!やったぞ!!!
switchはワシのもんやでぇ!!!!

 店長「いや反則やからね。」ドカッ

中田は店主を殴り殺した。
買った小さなハンマーで。

 やってもた〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!

その場から急いで立ち去る中田。韋駄天。
その様、脱兎の如き。

中田はインドへと向かった。
カレーが彼を呼んでいたのであった。(ダジャレ)


続きは、また次回に、、、、、

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