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石油ストーブ

 毎年冬になると、エアコンの暖房機能を使っていた。
2年前はこたつも置いていたが、片づけが面倒なのと、こたつから出る瞬間があまりに見苦しいので、思い切って捨ててしまった。もったいないことをしたかもしれない。それからずっとエアコンの暖房機能を使っていたが、今年は電気代の高騰で躊躇していた。

 そこで今年は面倒だが、石油ストーブを使うことに決めた。
石油ストーブは正直面倒くさい。ポリタンクを持って、ガソリンスタンドに石油を買いに行かなければならない。

 だらだらと倉庫を探ると、昔使っていた石油ストーブと、古いポリタンクが出てきた。
 ポリタンクは片方の蓋がなくなっている。(数年前の私め…。)
仕方なくジュンテンドーにポリタンクを買いに行くと、なんとポリタンクの蓋だけが売ってあるではないか。なんとありがたい。私のような不精者の性質をよくわかっていらっしゃる。
 ガソリンスタンドに行き、慣れない手つきで石油を買う。ポリタンクに入るℓ数を間違えて選択してしまい焦る。蓋を開けポリタンクに石油を入れていると、懐かしい匂いがした。
 入れ終わった後のポリタンクが随分重かったので「石油って水より重かったっけ」と思いながら車に積み込んだ。あとで調べたら水のほうが重いとあり驚いた。「油は水に浮きますから」とあり、「そりゃそうか」と納得した。

 ストーブの埃を入念に取って石油を入れる。火が付くのを待つ。
 以前町内で、石油ストーブにガソリンを入れて大爆発を起こした家があると聞いていたのを思い出した。
「わたしが買ったのはガソリンじゃない。確かに石油だったはず。」と言い聞かせて、爆発しないことを祈りながら、ストーブの音に耳を澄ませる。

ちっちっちっ
ぼっ

 石油の匂いとともに、温かさが身を包む。
ああ私は確かにこの匂いが好きだった。なんで忘れていたのか。
この匂いこそ冬だった。
 ランドセルをしょったままストーブの横に座り、ランドセルが変形して怒られたあの頃が脳裏によみがえる。

 私はいそいそと、熱すぎるコーヒーを作り、お土産でもらったチョコレートを持って石油ストーブの横に座り込んだ。これだけで幸せを感じられるのに、どうしてもっと早くしなかったのか。

石油ストーブのおかげで今年はいつもより暖かい冬が過ごせそうだ。


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