初恋の人はマイナーキャラ

初恋の相手のAくん（仮名）は、中学2年のクラスメイトだった。
剣道部で、背が高く細身、すっきりした顔立ちの男子だった。性格は誠実で、まっすぐな人だった。私はその後もすっきりした顔の細マッチョが好きなのだが、好みのルーツは彼だったと思う。
私は素敵な人だと思っていたし、いまも思うのだが、大人になって冷静に当時を振り返ると、おそらくライバルはゼロであった。中学生くらいの頃は、みんな人気のある男子が好きである。彼はマイナーキャラであった。

10年近く前のことだが、東京にいる同級生で飲み会をしたときに、一次会で
「誰が好きだったか」
という話で盛り上がった。
男女とも、「なるほどね」と思うような名前が挙がっていた。いわゆる人気のある子たちの名前である。
私は恥ずかしかったので、
「二次会で教えるね」
と言い、みんなが酔っ払って忘れてくれることを祈っていた。
だがしかし、そんな面白い話を忘れてくれるはずがない。二次会で蒸し返されてしまった。メンバーの1人が卒業アルバムを持っていたので、アルバムを借りて
「この人だよ」
と彼の写真を指さしたところ、全員が無言であった。どうやら知らない人だったらしい。
みんな優しいので「ああ、そうなんだ…」と笑ってくれたが、内心、
「二次会まで引っ張ってなんだよ」
と思っていたに違いない（爆）。

恥ずかしくて話せなかった同窓会

思い出すのも恥ずかしいので詳細は省くが、Aくんには卒業前に振られた（と認識していた）。
しかし、20歳で開催された学年全体の同窓会で再会したときの態度を見ると、彼は振ったつもりはなかったのかもしれない。
同窓会の一次会は立食パーティで、二次会はそれぞれクラスメイトや気の合う仲間と近所の居酒屋やカラオケボックスに繰り出した。
私は3年のクラスメイトと居酒屋に行ったのだが、なぜかクラスが違ったAくんと同じテーブルになった。近くに座っている同級生を交えて他愛もない話をして、私が東京の大学に通っていることは話したが、彼の近況は聞いていない。平気なふりをしていたが、目を合わせるのも恥ずかしかった。
その後、どういう流れで移動したのか覚えていないが、私は生徒会役員が集まっている別の居酒屋に移動した。私も生徒会役員で、クラスの飲み会に行く前に
「あとで行けたら、顔出すね！」
と言っていたので、約束通り、顔を出したのである。
すると、生徒会役員ではない彼もその居酒屋にやってきて、隣の席に座った。私はかなり酔っていて、窓の外をぼんやり見ていた。すると、彼が肩を叩き、小声で
「外見てないで、こっちで話そう」
と言われたが、彼と2人で話せるはずはなく（恥）他のメンバーの会話に混ざった。そうしてしばらくその場にいたが、耐えられなくなり、同じフロアにあるカラオケボックスに逃げ込んだ。すると、彼もカラオケにやってきて、また隣に座った。

私のそのときの気持ちは、うれしい、照れくさいを通り越して戸惑っていた。とっくに振られたと思い、記憶にしまい込んでいた人である。当時の私は東京で大学生活を送っていて、恋もしていた。
彼が中学時代に私を好きだったかはわからないが、20歳の時点では、やや期待もあったのではないかと思う。まっすぐな人だったので、その気持ちをまっすぐに示してくれたのがあの行動であろう。
明け方に解散になったが、彼と同じタイミングで店を出るとつかまる気がしたので、カウンターで一人飲みをしていた癒しキャラで人気者のNくんにからみ、店を出るタイミングをずらした。

それ以降、彼とは一度も会っていないし、消息も知らない。同窓会にも来ないし、Facebookでも見つからない。
元気で、幸せでいたらいいなと思う。

でもさ、20歳の私にひとこと言いたい。あの逃げ方は良くないなー（爆）。
彼が何か話したいのならば、恥ずかしいけど頑張って、その話を聞くべきだったね（苦笑）。