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30番 有明のつれなく見えし   壬生忠岑

今橋愛記 

有明のつれなく見えし別れよりあかつきばかりきものはなし  壬生忠岑みぶのただみね 〔所載歌集『古今集』恋三(625)〕

歌意 
有明の月がそっけなく見えた、そのそっけなく思われた別れから、
暁ほどわが身の運命をいとわしく思うときはない。 

『原色小倉百人一首』(文英堂)


「有明の」は、有明の月のこと。
夜明けがたになっても空に残っている月。

素性(法師)の 

今来むと言ひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな(21番)


でも出てきた。

21番は 来ないひとを明けがたまで待ちつづけた女のひとのこころの歌。

今回の歌は、親しかったあのひとの気持ちがはなれて、夜明けまで待っていたけれど とうとう会えなかった。
あの日からというもの、あかつきは憂いの多いときなのです。

男のひとの、まだきっぱりできないでいるこころの歌。


「つれなく見えし別れ」をあかつきが来るたび 
絶えず飴のようにこころでころがしている。

出逢いと別れって一体何なんだろう。
個人的にはそんなことを思う。

翻案は長くお目にかかっていない女のひとに手紙のような歌をつくった。
北浜でお目にかかったのは声のみは詞書です。

  北浜でお目にかかったのは声のみ

京王プラザでは願をかけているとわらって。
どうしてますか
暁のひと            今橋 愛




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