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一瞬を永遠にとどめる 『あなたの人生の物語』 読書感想文

ときおり、すごく寂しくなることがある。

子どもと一緒にいるとき。かわいいな、とか子どもが一生懸命に喋る話の内容とかに向いてる意識とはまた別に、こんな幸せな気持ちにさせてくれるかわいいこの子とも、いずれ別れる日が来るんだな、みたいな感じ。笑顔を目に焼き付ける。

それは、夏休みの終わりを夏休みが始まった瞬間に思う感じとか、旅行中ホテルのベランダで風を感じているときに、あと何日で帰る日が来ると知っているときの寂しい感じと似ている。

もっというと、桜の蕾が膨らんで咲くのを待ち遠しく思うと同時に散ってしまう日がすぐそこに来ているとわかっている感じ。


そういうときは、思いっきりその瞬間を感じて、その瞬間そのものになってしまおうと思う。寂しさとともに。一瞬は永遠でもある。

こうやって書いたり、絵を描いたり、写真を撮ったり、音楽にしたり、香水だったり、映画も、あらゆる芸術は、この一瞬を永遠にとどめたい、そんな気持ちが根底にあるのかも。


映画メッセージを観たあと、タイムパラドックスはあり得るんじゃない?と感想記事を書いたけど、原作の『あなたの人生の物語』を読んだら、印象がぜんぜん違った。

コメント欄で竹内康司さんにおすすめしてもらって、原作をぜひ読もうとなったのです。読んで良かった。

『あなたの人生の物語』は、まるで死ぬ前に人生を振り返ってありありと思い出す感じ。未来も過去もまさに今現在にあるような。とてつもない寂しさと、私の思う"一瞬は永遠"という感覚をあらわしたような物語だった。

「わたしがめざしているのは歓喜の極致なのか、それとも苦痛の極致なのか?  わたしは最小と最大のどちらを成就するのだろうか?」

—『あなたの人生の物語』テッド チャン著

陰と陽、光と影、一瞬と永遠、歓喜と苦痛、最小と最大……。これらは表裏一体でこの差があるからこそ人生は際立つ。そんなことを思い馳せる。

ときどき読み返したい物語。

読んでいただきありがとうございました。
良い一日をお過ごしください。

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