企業が株価向上施策で開示する内容と開示媒体はどこでしょうか? ー 個人投資家はここを見ましょう

日本の上場企業は株価低迷が問題と言われており、これを判断する際の株式指標がPBR(株価純資産倍率)です。PBR=株価÷1株当たり純資産=ROE×PERですね。これは常に念頭に置くことが大事です。

ところで、株価についてですが、新聞報道でも目にすることも多いと思いますが、東証が上場企業各社に対して「株価を意識した経営をせよ!」と少し前から言っています。これまでも株価を上げることは上場企業の最大の使命と言われてきましたが、東証がそこまで強く企業にアクションを求めることはありませんでした。しかし、本年3月31日に東証が次の通知を上場企業各社に要請しました。私も東証の対応窓口の責任者としてしっかりと通知を受け取りました。

この中の資料1「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」の方です。次の3点を整理して、企業は開示をせよということです。対象企業は、プライム市場・スタンダード市場の全上場会社です。

  1. 現状の株価の評価 ⇒  自社の資本収益性や市場評価に関する分析・評価について、投資者にわかりやすい形で示すこと

  2. 方針・目標 ⇒ 資本収益性や市場評価に関して、改善に向けた方針や具体的な目標について、投資者にわかりやすい形で示すこと。目標の設定に当たっては、具体的な到達水準・到達時期を示す方法のほか、目指すレンジを示す方法やROEやEPS(1株当たり利益)の成長率など 変化率のトレンドを示す形も考えられる

  3. 取組み・実施時期 ⇒ 資本収益性や市場評価の改善に向けた具体的な取組みや施策の実施時期について、投資者にわかりやすく示すこと

投資家に「分かりやすく示す」ことが求められています。これって結構、凄いことです。企業が現状の株価が低いと感じるのであれば(=PBR1倍を下回る企業)、株価向上施策と向上時期について、分かりやすく開示せよということです。企業にはとても厳しいことです。これまで株主を軽視した経営トップも世の中は非常に多かったからです。
今回の東証の要請は株主にとっては、絶好のチャンスです。企業が株価向上を達成できない場合、経営トップを正々堂々と批判できるわけです。特に物言う株主にとって、かなりの攻撃材料ですよね。

では、この内容はどこで開示されるのかというと、コーポレートガバナンス報告書です。報告書につらつら記載することでも良いですし、別の媒体に上記1~3を掲載して、コーポレートガバナンス報告書で掲載先を引用することでも可です。いずれにせよ、コーポレートガバナンス報告書を見れば、上記の施策の開示場所がわかるという建付けにすることが企業には求められています。

個人投資家・個人株主の方は、投資先企業のPBRが1倍を下回っている場合には、コーポレートガバナンス報告書を見て、どういう記載がなされているかを是非確認してみてください。
東証の要請への対応の明確な時期までは東証は定めておらず、「できる限り速やかな対応」をお願いするとなっているところですが、東証が要請してから既に5ヵ月も経過しているのですから、未だ開示していない企業は、どうかなと思います。遅くとも上期中に開示しないと企業としては対応に問題ありと株主は企業に言えるのではないでしょうか。

個人投資家・株主の方は上記の東証要請をしっかりと読み、理論武装すれば、投資先企業と建設的な対話ができると思います。