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ビジネスマンのためのさくっと分かるコーポレートガバナンス ー PBR1倍超え6割。何故PBRが最近ホットな話題なの?


PBR1倍超え企業が増えています

先日の日経新聞に次の記事がありました。

PBRという言葉は日経新聞を読んでいる方は、ここ1~2年で頻繁に目にされている言葉かと思います。意味は分からなくとも社内の会話で耳にされることもあるのではないでしょうか。

3~4年前までは一般の事業会社の方には、経営トップも含めて全く馴染みのない用語であったかと思いますが、今やPBRはビジネス用語の1つかなと私は思います。ということで、今回はこのPBRについてさくっと解説したいと思います。

PBRとは、日本語で言うと株価純資産倍率で次の算式で計算されます。

PBR=株価÷1株当たり株主資本=株式時価総額÷株主資本

PBRが1倍割れの企業=割安企業と言われておりますが、最近は割安企業の意味を越えて「PBR1倍割れ企業=資本市場で問題のある企業」と見られています。ビジネスマンの方は、ここはしっかりと認識されることが大事です。

このPBR1倍割れ企業が数年前までは沢山ありましたが、最近は減ってきている、つまりPBR1倍超え企業が増えているというのが先ほどの記事になります。PBRの向上が今の時代、注目されているということです。

PBRが最近注目されているのは何故?

では、何故PBRが注目されているのでしょうか? 「数年前までは割安企業というだけで、新聞でもそんなに取り上げられることはなかったよね」という感覚をお持ちの方は多いと思います。その通りです。

数年前まではさほど問題とされておりませんでした。日本の株式市場にはPBR1倍割れ企業が山ほど存在していたので、企業側も真剣には気にしていなかったのです。

けど、それが2023年3月31日で大きく変わりました。

「資本市場におけるビックバン!」と言えるかどうかは分かりませんが(そこまでは言えないか・・)、それに近いインパクトの出来事が起こりました。それは、2023年3月末に東証がプライム市場とスタンダード市場を対象に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」について次の通知をしたことによるものです。

https://www.jpx.co.jp/news/1020/cg27su000000427f-att/cg27su00000042a2.pdf

これは何であるかというと、企業は株価を意識した経営を行うべし、株価を向上させるのは上場企業の重要な役割であり、そのための計画を取締役会で議論して策定し、その内容を開示せよというものです。

これまで東証が企業に株価向上施策を開示せよということはありませんでした。それを東証が言ったわけですから、ある意味凄いことです。海外の機関投資家としても「日本の東証は思い切ったことをやるな」というのが率直な感想であると思います。

PBRの考え方 ー まずはROEを見ます

ということで、企業は株価を向上させる、つまりPBRが最低でも1倍を超えることが東証から命ぜられましたので、一生懸命頑張る必要があります。皆さんの勤務先企業もPBRが1倍を超えているか確認してみて下さい。

では、どうすればPBRは向上するのでしょうか。そのためには、まずは、PBRを分解して考える必要があります。

PBRを分解すると「PBR=ROE×PER」になります。

このため、PBRを見るにはまず最初にROEを向上させることが考えられます。ROEという言葉も古くて新しい言葉ですね。ROE経営などという言葉は10年以上前からありましたが、企業が真剣に取り組み始めたのは最近のような気がします。

このROEも分解して考える必要があります。物事は必ず分解して考えることが大事で、ROEを分解すると次のとおりです。

ROE=売上高純利益率×総資産回転率×財務レバレッジ

この分解は大事ですので、スラスラ言えるようにした方がよいと思います。つまり、この3つの要素の全て又は一部を改善することがROEの向上に繋がります。会社によって違いはありますが、この3つの要素の中で、大きいのは利益率かなと思います。資産がかなり重かったり、株主資本が極端に大きくない限り、ポイントは利益率です。この向上が肝です。

PBRの考え方 ー 次にPERを見ます

次にPERを見ます。PERとは株価収益率で、次の算式になります

PER=株価÷1株当たり純利益=株式時価総額÷純利益

今の株価が「1株当たりの純利益」の何倍なのかを示すものです。株価の割安感を示す指標でもあります。

このPERですが、ROEが高くても低い企業って結構多いです。その理由は色々とありますが、大きな要因の1つは、将来の利益成長が不透明であり、高いROEが今後も持続するとは見られていないことです。

ここ2~3年は利益が出てROEが高くても、その先の成長が見えてこない場合には、PERは高くなりません。将来の利益が増えるのであれば今の株価のままですとPERは低くなりますので、「安いのでお買い得」となり株を買う人が増えますが、将来、利益が増えないのであれば、特段の割安感もないというところかと思います。企業の今後の成長性を市場が評価すればPERも高くなると言えます。

PBR1倍割れが続くと困ることは?(詳しくは次回)

ということで、整理しますと、企業は利益率を向上させることと、資本市場が納得する将来の利益の成長性を示すことがPBR向上に大事です。

では、PBR1倍割れが続くと企業にとって何がマズイのでしょうか?

PBR1倍超えの必要性は新聞報道もあり理解しているビジネスマンの方は多いかも知れませんが、「PBR1倍割れだと何がマズイの?」ということまで理解されている方は少ないように思います。

1倍を下回ると東証からペナルティを受けるのでしょうか?そんなことはありませんね。また、株主から損害賠償請求訴訟が提起されるのでしょうか?会社法に違反すると株主などから損害賠償請求を受ける可能性がありますが、PBR1倍を超えることは会社法では全く書かれておらず、株価が低いが故に役員が善管注意義務違反を問われることもありません。

では、何がマズイのか?ですが、もったいぶるようで恐縮ですが、ここは次回説明したいと思います。