【銀行】期末の思い出【ノルマ】

銀行員にとって3月末の決算期、いわゆる期末は特別な時期です。

通常は3月31日が期末ですが、31日が休日なら前営業日となる30日が、それも休日なら29日が実質的な期末となります。

今年は29日が最終営業日となる年で、銀行員の皆様にとっていつも以上に時間のない慌ただしい3月を過ごされた事でしょう。

そんな3月29日が最終営業日となる期末に、個人的に嫌な思い出が一つあります。

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時は平成〇〇年3月、新入行員・若手行員の人達にとっては昔話みたいに聞こえる話になりますが、当時の弊行には強力な預金獲得のノルマがありました

とにかく預金を集めろ。

個人の預金ならなおよし。

法人でも団体でもよし。

定期預金でも普通預金でも譲渡性預金でもよし。

ただし、融資金での両建てはやめろよ。絶対にやめろよ。(ダチョウ倶楽部感)

今思い返しても異常な程、預金に特化した営業推進体制。
誇張ではなく預金目標ができていれば後は全て未達でも許される雰囲気。
通常なら預金以上に重要視される預かり資産販売(投資信託とか生命保険のことです)さえも、期末近くになると、「預金が減るなら無理にやるな」と言われる状況でした。


そんな中、当時僕のいた支店の業績は本当に達成ギリギリのラインでしたので、渉外・内務問わず、日々100万200万の預金積み上げに向けて最後まで走り回っていました。

全員一丸となった営業に加えて、末日が休日の為、企業の月末払いが翌営業日になるという幸運も重なり29日の最終営業日には無事予算達成。

「よかった、よかった。」
「何とかやり切った。」
「ギリギリだったな。」

全員が安堵の中の期末お疲れ会。

「来期も頑張ろうや」

などという声も聞こえてきます。

いつもは厳しいマネージャーや支店長もご機嫌でした。

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そんな期末の余韻も残る土曜日夕方ごろ、事件が起こりました。

マネージャーからの一本の電話。(Lineとかなかった時代です)

マネ「個人顧客のATMでの出金によって預金残高が減っている」

僕「??」

マネ「このままだと3月31日時点で予算未達となる可能性がある」

僕「?????」

マネ「最終的にどうなるかわからないが、緊急指示が来るかもしれないから、今から預金をお願いできる先に当たる準備だけでもしていてくれ」

僕「?????????」


他行の普通預金から出金してもらって当行の普通預金に入れてもらえ、というニュアンスの指示でした。
※ちなみにマネージャーは土日営業している店舗に調べてもらって預金の残高を確認したとのこと。ほんと余計な事はやめてほしい。

「実際の指示は預金の出金状況を見て、明日の朝出すので一晩お願いできそうなところを考えてみてくれ」との事で一旦電話は切られました。

時代背景的に土日の出勤自体はまあよくある事でしたが、流石にアポなしで顧客訪問なんて経験ないですし、常識外れもいいところ。

「正直やりたくない。」

お客さんには何も言わず、「お願いしたけど無理でした。」と心の底から言いたいけど裏取られたらどうしよう、等ととりとめもない事を考えていました。

結果としてそこまで預金は減らず、お客さんには依頼しなくても構わないという結論になりましたが、心のもやもやは晴れず。


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今となっては創作を疑われるレベルの話ですが、当時は笑い事ではなく、「そこまでしてやる数字にどれほどの意味があるのか?」との思いだけが残る事件でした。

仮に、当時の自分が3月31日の日曜朝に「預金を集めろ!」と実際に指示された時にどういう行動をしたかは正直わかりません。

言える事は自分がマネージャーの立場ならそんな指示はしないという事だけです。

銀行に限らず、民間企業全般において営業成績を無視する事は出来ません。営業係においては営業成績が全てと言っても過言ではありません。
ただ、この件も含めた経験上、「無理して作った数字には価値がない」という事は言えます。

無理して作った数字は、どこかで反動が来ます。
無理して数字を作らなければ予算達成できない状況となった場合は、無理を通すのではなく、そういう状況になった点を反省した上で観念して怒られるだけでいいのす。



今は当然こんな事はなく、今日も全員平和に土日を過ごしています。
最近の銀行はほんとにホワイト企業化しておりますので、4月からの新入行員の方々は安心してください。


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