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「美を生きるための26章」を読んで

この本は、木下教授が定年退職して、私塾のようなものを始め、「美学」や、「美術史」とかという学問の垣根を取り払って、作品を見て感じたことを言葉にしています。また人間にとって「美」とは何か、「芸術」とは何かを考え直してみたものです。

「人類の長い歴史のなかで、人間はそれぞれの場所で、それぞれの時間に生きてきた。その生き方のなかに「美」の発見や、「芸術」の制作、鑑賞といった活動も組み込まれている。だから、「美」とは何かを考えることは、「人間」とは何かを考え、「人間」が太古の昔から現代にいたるまで、どんなことを考え、なにをしてきたかを考えることにほかならない」

目次をみると次のようになってます。
A レオン・バティスタ・アルベルテイ
B  興謝蕪村
C 屈原
D 大乗寺
E  ワシリィ・エロシェンコ
F ミッシェル・フーコー



J イエス
O 岡倉覚三
P マルセル・プルースト
Q ドン・キホーテ
R 幸田露伴

この本は、美学を学問的な視点でなく、その個人、一人の人間が作品のなかで、生き方の中で、どう美を捉え、生きてきたのかを木下さんの見解で述べています。一つ一つが短篇のようで、とても読み易い構成になっています。またその一つ一つの章、一人一人の中の美、芸術、哲学をわかり易く述べています。

この本の中に次のように書いてます。
「視覚や聴覚だけでなく、触覚、臭覚、味覚、そして第六感といわれる直感など、われわれのもっている原初的な感覚から働きかけがあって、成就するものなのだ。「知」というのは、ほんとは、そんな根源的な感覚の協働の上に育ってきたはずである。現代に生きる人間は、こういう感覚の総合的な働きを鈍感させてしまった。それを復活させるのは、とても大切なことである」

森林の中を歩き、その澄みきった空気の心地よさを感じ、野花を見つけてその美しさに感動し、雨上がりの虹を見てその色彩に驚き、渓流の滝の水しぶきをかぶり、清涼感を覚えたりします。感動(知覚)し、なぜだろうという疑問(知的欲求)を持つことが、原初的な感覚だと思う。そんな視点でアプローチして書かれた本です。

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