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怒りから笑いに

昨日Twitterで面白いスペースを聴いた。
その人は話も面白いがnoteでの文章も面白く、私は大ファンなのであるが昨夜は殊更にキレッキレであった。

彼は名前を「エンドーさん」という。

エンドーさんは何かに怒っていた(?)
終盤は心の底からの魂の叫びであった。
怒れる天才だ。

そしてエンドーさんが怒れば怒るほど、納得いかないことへ雄叫びをあげるほど周りは笑ってしまうのである。
(雄叫びあげてたっけな?)

それにしても変な話だ。
普通に考えたら怒っている人には出来れば近寄りたくない。
でも昨日のスペースは「怒りとバズ」とタイトルがつけられており、何ならこちらから「怒り」にいそいそと近づいて行っているのである。
ウキウキしながら。

これにはちゃんと理由がある。
エンドーさんが決して誰かや何かに対して本気で怒りをぶちまけるわけではないであろうことが分かっているからだ。
また「これはきっと彼の身に何か腹の立つことが起き、そのことを面白おかしく語るに違いない。」という期待しかないからである。

期待どおりエンドーさんの「怒り」は「笑い」を生んでいた。
話しているご本人も楽しそうに笑っている。
エンドーさんの相棒も遠慮なくエンドーさんをイジり倒して笑っている。
二人の笑い声を聴いているだけでつられて笑ってしまう。

何に怒っていたのかというと、


…あれ何に怒ってたんだろうな(笑)


いや、ちゃんと怒れる理由はあったのだが私がここに書くのは違う気もするので省くことにする。

ちょっと話を変える。
「怒る」「腹を立てる」のはとても疲れるが、それを一切するなというのも無理な話だ。

よく居酒屋のトイレなどに、横たわった「腹」という文字が書かれた紙が貼ってある。

「腹を立てなさんな」という意味のアレだ。

酔っ払って気が大きくなっているときなら「本当よね〜。それ大事ね!おっけー!かしこまりましたァァァァァァ!!」と思えるが、翌朝には「チクショウ!なんでこんなに頭が痛いんだ!」「なんでリュックと靴が風呂場においてあるんだ!!」と一発目から腹を立てている。

また、何かや誰かに真剣に怒っているときにあの紙を手渡されたとしたら私は即座に寝ている「腹」を叩き起こすだろう。
呑気に寝てる場合か!と。

生きていれば腹の立つことや理不尽に感じることはいくらでもある。

「このくらいは目を瞑ろうじゃないか」と折角こちらが思っても「不快なこと」は瞑った瞼を強引にこじ開けてでも入って来る。
そのくらい図太く図々しいから不快なのだ。
そんなことをされてまで許してやれるほど寛大ではない。

時にはしっかり怒りたい。
地団駄ふんで喚き散らしたい。


さて、エンドーさんである。
彼は本当に怒っていただろうか。
いや、あれはむしろ「ぼやき」や「嘆き」に近かった気がする。

たとえばクソ暑いカンカン照りの中、アホみたいに重たい荷物を背負い鉄下駄を履いて必死に歩いているとする。
腰からロープで繋いだタイヤを引きながらでも良い。
その横を電動キックボードに乗った小洒落たヤツが涼しげにドヤ顔で追い越していくところを想像してみる。

どう?
履いてる鉄下駄でぶん殴りたくなるよ?
引いてるタイヤぶつけてやりたくなるよ?


世の中は公平であるべきとは思うが公平とは思えない。
平等平等と言いながらも決して平等ではない。
大人になった私達はそのことに薄々気づいている。
折り合いをつけながら、落としどころを見つけながら何とか自分を生きている。
だから時々は腹を立てたいし喚き散らしたいのだ。

「俺のほうが頑張ってるだろうが!!」
「私のほうが正直でしょうよ!!」
「なんであんな奴らばかり得してさ!!」

そんな人間らしい人が好きだ。
あまり人には見せたくないドロッドロのドブみたいな色をした感情も、恥ずかしさや悔しさや腹立たしさも「面白おかしく」語ることが出来るのはスゴいことだと思う。

エンドーさんには相棒がいる。
どうやら二人の付き合いは長そうだ。
この二人の掛け合いがなんとも言えず面白い。
二人を見ていて(聴いていて)私はあることを思い出す。

私が看護師1年目に配属された精神科閉鎖病棟でのことだ。
そこには幼稚園からの幼馴染という二人の男性看護師さんが働いていた。
仕事のできるカッコいいオジサン看護師だった。

そのうちの1人が私の指導者であり、飲みに行くたびに毎回同じ話をしていた。
それは「俺はアイツが色鉛筆の肌色を貸してくれなかったことを一生忘れない。」というものだ。

幼稚園時代の指導者は12色の色鉛筆を使っていたため肌色がなかったそうだ。
一方の幼馴染は24色の色鉛筆を持っていて、そこには肌色の色鉛筆もちゃんとあった。
好きな女の子の顔を描くのにどうしても肌色を使いたかった指導者はプライドを捨てて「肌色かして。」と頼んだそうだ。
そして「いやだ。」と断られた。

「アイツが肌色を貸してくれなかったせいで真っ黄色の似顔絵が出来上がった。
黄疸で即入院のレベルだった。

この話を何十回も聞かされたが、二人ともとても楽しそうに笑いながら話していた。

エンドーさんと相棒さんも、あんなオジサンになっていくのだろう。


「エンドーさんがいつかリリー・フランキーや松尾スズキのようなエッセイ本を出したら楽しいのになあ」と思う一方で、いつまでも「どうして俺ってヤツはよう!!」とボヤいていて欲しいような気もしている。

さて。
そんなエンドーさんが先ほどnoteを更新したようなので、さっそく読みに行きゲラゲラ笑おうと思う。
ゲラゲラ笑えばまた明日からも腹を立てずに頑張れそうだ。

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