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電気料金の話題,原発コストは全然安価ではない事実を10年の間隔をとって再び論じてみる試み,日経の原発擁護・推進の立場は将来に向けて禍根を準備する愚かなエネルギー・イデオロギー

 ※-1 2023年の8月3日・4日(一昨日から昨日)にかけてこういう《報道騒ぎ》があった

 その1の説明 アゴラ編集部が,週刊誌の「『女性自身』『電力9社の10兆円黒字にブチ切れ』に『煽り過ぎ』の声」という記述を掲載していた。

 ところが,その『女性自身』の記事公開後から,X(ツイッター)では表記が誤っているのではないかと指摘があり,〔8月〕4日時点で,当該の記事は公式サイトから削除されたとのこと。

 そしてすぐ直後に,「電力9社が『10兆円黒字』? 『約1兆円の誤りでした』「女性自身」(週刊誌),物議の記事見出しを訂正・お詫び」することになっていた。 

 註記)以上については,『アゴラ』2023.08.03 11:50,https://agora-web.jp/archives/230803010454.html 参照。

 補記)この記述は,公表直後に論旨に乱れ(重複)があった箇所をみつけたので,これをあらためるために調整し,修正した(午後2時15分ころ・記)。

 その2の説明 LNGなどの燃料価格が下落したことなどによって,電力大手9社が純損益ベースで黒字を確保した。これに対する『女性自身』の記事が,「『金返せ』『何のための値上げ』電力9社の10兆円黒字にネットブチ切れ…過去最高益の会社も」という見出しを付けて報道していた。

 ところが『女性自身』は,電力大手9社分を合計しても,売上高ですら10兆円もないのに黒字が10兆円だと,いささかならず,数字を盛り過ぎてしまった記事を制作していたために,要らぬ騒動が起こすという経過になっていた。

 補注)「ウクライナ危機から1年,資源価格が低迷している理由」『『日経ビジネス ONLINE』2023.7.4,https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/world/00582/ という記事が冒頭(前文)で,こう解説していた。

 ウクライナ侵攻後に急騰した石油・天然ガス価格が今〔2023〕年に入り下落。OPEC減産発表にもかかわらず上昇しない。

 需要の伸び悩みもあるが,OPEC非加盟国が昨年の価格上昇を受け,増産に向かっている点が影響している。

 今後は需要拡大が予想され,価格も多少は上がりそうだが,昨年のような急騰はもはや起こりそうにない。

資源価格低迷の理由

 ともかく,光文社の週刊誌『女性自身』が2023年8月3日,同日に配信したウェブ記事の見出し「『金返せ』『何のための値上げ』電力9社の10兆円黒字にネットブチ切れ...過去最高益の会社も」については,その正しい黒字額は「約1兆円」だったと,公式サイトで訂正し,詫びていた。

 註記)「電力9社が『10兆円黒字』? 『約1兆円の誤りでした』女性自身,物議の記事見出しを訂正・お詫び」『J-CASTニュース』2023年08月04日 13時24分,https://www.j-cast.com/2023/08/04466493.html

その3の説明 『女性自身』はなにを勘違いしたのか,それとも単純な思いこみで犯した計算ミスか分からぬが,大事な数字を一桁,それも1兆円に一桁増して間違え,その10倍に表示して報道したとなれば,これじたい「タタゴトではなかった」。

 むろん,10兆円という数字は間違いであったと同時に,あまりにも過大な表現をかかげた数字であったとはいえ,最近まで,「プーチンのロシア」が2022年2月24日,ウクライナ侵略戦争を開始してからというもの,それ以前からじわじわとエネルギー関連の価格は上昇してきており,われわれ庶民(貧民)の消費生活に大きな打撃を与えていた関係もあってか,いったんは世間に飛び出た数字になっていた。

 そうした経過をたどってきたなかで,エネルギーの需給関係が逼迫していた背景があったなかで,電気料金の値上げが遠慮容赦なくどんどん繰りかえされてきた。そうしてきた電力会社が,こんどは,エネルギー価格の低下傾向の恩恵を受けてこのたびの決算では大幅に利益を上げていた。

 そうだとなれば,庶民の立場からすると『女性自身』のようにウッカリミスであっても,1兆円を一気に10兆円まで読みまちがえて記事を作ったという「気分」じたいは,なんとはなしであっても,理解できるような心象がないわけではない。

 いずれにせよ,2022年〔実はそれ以前からすでに値上げは持続可能(?)的に実施されてきたが〕からも,電気料金は連続して上がりっぱなしであった。つぎに,関連するいくつかの記事や画像資料をみよう。

値下げはチビチビ,値上げは一気に

 だが,今年(2023年)になってからは,それこそ「年明け」を待っていかのように,同年度(2023年度)における大手電力会社の業績が一気に改善される見通しになった。

日銭が入る商売はがっちり稼げる

 以上のように電力会社が利益を計上できるみこみになったのは,つぎの
「【速報】大手電力7社の電気料金値上げ 経産省が正式認可」『TBS NEWS DIG』2023年5月19日 13:41,https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/494449 という報道がかかげていた内容からもよく伝わってくる。

大手電力会社の電気料金値上げ率一覧は
このように値上げするときは遠慮容赦なく実行していた

 こういった新聞記事が出る以前には,【2023年最新】電気料金の値上げはどのくらい? 各電力会社比較と対策方法も紹介!」『エコでんち』2023.07.20,https://ecodenchi.com/post-24605/ というような記事も,まだ出ていた。

 以上の各記事それぞれの日付が,かなり近い時期で「前後していた点」に注意したい。つぎの画像資料は前掲の同じ統計をかかげているが,「値上がり価格」という項目がくわわっているので,さらに参考にしてみた。

上のこの画像資料で紹介した記事の
さらにつづく段落は
つぎに文字で引用・紹介しておく

 このように電気代が上昇しているのには理由があった。主な原因を解説してみる。以下の引用は,直近の関連する状態・事情に合わせて,若干補正しつつおこなってみたい。

 ▼-1 燃料費調整額の値上げが止まらない

 2022年から2023年にかけてさまざまな事象から燃料費調整額の値上げが止まらなかった。そのため,電力量料金の負担が増えつづけていた。

 燃料費調整額の値上げは,主に2つの世界的な事象が関係していた。ひとつは,新型コロナウイルスによる影響。もうひとつはロシアのウクライナ侵攻であった。

 日本はエネルギー輸入国なので,原油やガス(LNG),石炭の需要が高まれば,火力発電所の燃料調達コストの高騰につながる。2020年以来のコロナ渦がおさまりつつあるなか,経済は一気に動き出し,燃料の需要は増加している。

 にもかかわらず,世界的な資源輸出国であるロシアによるウクライナ侵攻で,世界のエネルギーバランスが崩れたなか,ウクライナ侵攻は,2023年6月時点でも停戦・終戦の見通しが立っていない。

 ▼-2 今後も燃料費調整額は,値上がりする可能性が高い

 2023年4月に改定された託送料金制度の影響はたとえば,2023年4月1日から始まったレベニューキャップ制度という新制度によって託送料金が,値上げされた点に現われている。

 小売電気事業者(電気を消費者へ販売する事業者)は,送配電事業者電気の送電管理を行う事業者)へ託送料金を支払い,電力の送配電や管理をおこなってもらい,この小売電気事業者はまた,契約者から電気料金にくわえて託送料金を徴収している。

さらに2023年4月から託送料金のレベニューキャップ制度が始まり,上限まで託送料金の値上げがおおなわれやすくなった。燃料費高騰による新電力を中心とした電気料金プランの見直しがなされている。

 新電力や大手電力会社は,燃料費高騰による経営圧迫で電気料金の値上げや見直し,新規受付停止などの措置を実行している。そのため,燃料価格の高騰による影響を受けやすく,電気料金プランそのものの見直しおよび値上げがおこなわれてきた。なかには,新規申込停止や事業撤退,倒産の事例もあった。

 また,新電力の電気料金プランは自由料金プランという区分で,燃料費調整額に上限が設けられていない。そのため,燃料価格が高騰すれば,その分燃料費調整額も大幅に値上げされやすい状況です。(引用終わり)

 以上のような経緯があったところへ,エネルギーのなかでもとくに,LNGなどの燃料価格が落ち着きだし,下落しだした。こうなって,電力大手9社は,純損益ベースで一気に大幅の黒字を確保できる急な展開が起きた。

 電力会社がいきなり利益を,そうしたエネルギー情勢の変化に合わせて大幅に上げたものだから,この記述で最初に話題ととりあげた『週刊女性』の10兆円もの(否,訂正すると1兆円であるが,これでも多いのだが)利益計上となった大手電力会社群の収益状況に対して,庶民的な見地・観点から批判が飛びだしてくるのは,当然な評価であった。

 

 ※-2 原発のコストは安価というイデオロギーを批判する

 ※-1の記述のなかにも登場していた『日本経済新聞』の論調は,原発再稼働・新増設の立場を社是とする立場から,東電福島第1原発事故による日本のみならず世界に対して与えて残した甚大な被害など棚上げしたか,あるいはネコババの要領で知らんぷりしたまま,いつものように「原発,原発・・・」と高唱する記事を,なにかにつけては書き,ひそかにあるいは露骨に強調する報道をしてきた。

 東電福島第1原発事故はこの事故によって当時,放出された放射性物質の8割ほどは太平洋方面の海域に拡散されていたために,チェルノブイリ原発事故の場合に比較してその飛散量が少ないと誤導的に説明されていたが,これはトンデモない解釈であった。

 原発という発電装置・機械は一度でも大事故を起こすと,とうていとりかえしのつかない事態を広範囲にもたらす事実は,チェルノブイリ原発事故の跡地や東電福島第1原発事故現場の「いまにも残る状態」をみるまでもなく分かりきっているはずである。

 それでも原発を新増設するといった日本の首相岸田文雄の無識ぶりは,この原発問題だけではないけれども,一国の最高指導者として失格であった。日光足尾精銅所による鉱毒問題を処理(解決?)するために作った「渡良瀬遊水池」や,水俣病関係で水俣湾に水銀ヘドロが埋立られた「水俣湾埋立地」が残された公害史の事実に比較してみるに,

 チェルノブイリ原発事故や東電福島第1原発事故の跡地は,自然科学的にも社会科学的にも異質だとみなすほかない「地球環境の破壊」の大規模な結果を,如実に表現しているではないか。

 そもそも,原発が《悪魔の火》を焚いて電力をえるための技術であるかぎり,ほかの電力発電装置・機械とはその特性において比較になりねない〈悪魔性〉を抱えこんでいる。

 この段落あたりから議論するのは,前段で論じてきた発電用の化石燃料「高騰」の問題を踏まえてだが,原発の必要性を奇怪な論旨をもって主張する『日本経済新聞』の立場を批判的に検討してみたい。

 以下に記述する内容は,2013年4月26日にいったん公表されていたが,ここまでの「2023年的な前論」を踏まえたかたちで,あらためて原発支持派の無理繰りぶりを批判する。

 まず,なんといっても『原発コストはそんなに安いのか? 』という問題をとりあげ議論したい。そのさいここでは「日本経済新聞の中立性・公平性・客観性・妥当性を欠いた」「原発関係の記事〔というか,まったくのデタラメの数値を含んだ報道〕」に止目した討議をおこなう。

 その前につぎの関連する図表・図解を紹介しておきたい。2点のみ挙げておく。

持ちつ持たれつの相関図
大手電力会社は産業界の王様たちである

 ※-3 原子力村の一会員,日経新聞の偏向した立場・閉ざされた視野

 『日本経済新聞』は,エネルギー資源問題の基本動向を無視するのではなく,周知の事実である点をよく理解したうえで,その動向に反する原発推進路線に立っている。

 1) 原子力村の一員としての日本経済新聞社

 『日本経済新聞』2013年4月26日朝刊1面の冒頭記事が,「石炭火力新増設を再開,東電の来月入札分から-政府アセス,最新施設が基準」との見出しで報道されていた。この記事に添えられているつぎの表をみて,びっくりした。後段でも関説があるが,ひとまずここでもさきに言及しておく。

なお引用した記事の日付に25日と26日が混在しているが
それはウェブ版と紙面版の時間差であるので
そのまま引用・記載している

原発が CO2 を出さないというのは虚説
原発の一生を観察すればただちに
「嘘である事実」は簡単にバレる

 原子力村界隈では,2011年「3・11」東日本大震災によって発生した東京電力福島第1発電所の『世紀に記録されるべき原発大事故』など,屁の河童の無表情で無視なのか,という印象を受ける。

 原発の「燃料単価(kw時)が1円」などというのは,理屈だとか実証だとかの世界・次元を超えた「原発推進派」の妄想的決めつけになる原価(認定)であった。

 しかも,この記事の本文のなかではこの「1円」について,一言も言及がない。どうしてか? 力説すべき要点になるべき事実ではなかったか?

 補註)2004年の経済産業省の試算は,原発のkw時/を 5.9円としていた。需給検証委員会とはもちろん同省が設置する組織であるが,トンデモな数値を示している。   

 すでに,原子力発電推進派の勢力が,自民党政権の復活(2012年12月下旬)とともに,ほぼ昔どおりに近い地位を復旧させており(元の鞘に納まったかように!),原発がなければこの国のエネルギー問題は前に進めないかのような幻想を,いまもってなお,誤って世の中に振りまこうとしている。

 しかし,原発事故が再度にわたり,反人類史的・非人間社会的な大規模発電方式である事実をさらけ出した結果,世の中は再生可能な・持続可能なエネルギー資源の開発・利用にむけて,大勢の組織や個人が動き出している。この趨勢はすでに大きな流れともなっており,2~3年さきにはエネルギー資源の開発・利用の状況に,大きな転換をもたらしていく基本要因である。

 日本国は総人口が減少しだしてもいる。しかもエネルギー使用のありかたにあっても,節約・削電の方途は着実に進展しており,原発のような使い勝手の非常に悪い,つまり,非常に操業・運転がしづらく,1基ごとの稼働率100%内においての生産度適応性もなく,これが硬直している装置である。電力会社の金儲けにしかならず,いったん事故を起こせば,世界・地球の規模・尺度で破壊する装置でもある。

 にもかかわらず,これからも原発をもっと積極的に使っていきたいとするような意向を露わにしている,『日本経済新聞』の立場はさすがに《日本財界新聞》にふさわしく「今回の記事」を出していた。

 以上を整理すると,こうなる。前段で参照した記事は『日本経済新聞』2013年4月26日の朝刊の記事であったが,今日は2023年8月5日であり,もう10年以上が経った時点にいる。以下の整理点はその中身に問題はあれ,このとおりに進捗してきた経過を示している。

 a) 電力の総需要は減少していく。

 b) これからも節電・削電の動向が進展する。

原発無用

 c) 再生可能・持続可能エネルギー資源の開発・利用がさらに拡大する。おまけに,前掲の電源別「1kw時(kwh)発電コスト比較表」は,「3・11」以降,原発のコストに関して多角的に議論されてきたなかで示された各種の見解をまったく無視しており,電力会社=原子力村のいいぶんを百%〔以上も単純に〕聞きいれた中身になっている。

 2)「石炭火力新増設を再開,東電の来月入札分から-政府アセス,最新施設が基準」の記事-『日本経済新聞』2013年4月25日朝刊から

 政府はエネルギー調達の厳しい事情を踏まえ,電力供給や地球温暖化の政策で現実路線に踏みこむ。コストの安い石炭火力発電所の建設に道を開く環境影響評価(アセスメント)の基準を作り,5月に石炭火力の入札を締め切る東京電力から適用する。

 2020年の温暖化ガス排出量を1990年比で25%減らす目標は撤回し,10月をめどに新目標を打ち出す。〔ここで再度,前掲の「安い石炭による火力発電は課題」を参照〕

 石炭火力の新増設に必要なアセスの新基準が〔2013年〕4月24日,明らかになった。商用として運転を始めている最新鋭の設備を最低の基準とし,それ以上の性能なら認める。基準を明確にし,燃料費の安い石炭火力への参入を促す。経産省と環境省が合意し,週内に発表する。

 これまで環境省は温暖化防止の観点からアセスを盾に石炭火力の新増設を事実上禁止してきた。商用ではアセスから新設につながった例が2005年から途絶えている。東電は入札を経て年内にアセスに着手する計画。終了は早くて2年後の2015年となるため,10年ぶりの新増設の解禁となる。

 新基準に「合格」する大規模な発電所として,Jパワーの磯子火力発電所(横浜市)が当面の指標となりそうだ。環境省が当初主張してきた開発・実証段階の発電技術は基準にしないことで決着した。開発や商用化の状況は規模に応じて政府が整理して公表する。

 東電は2月に石炭火力を主軸とする260万キロワット分の新しい火力発電所の入札を募集し,期限の5月24日が迫っていた。新基準の採用で発電所を建設する能力がある企業の参入が進む見通しだ。

 東電は東日本大震災後の発電の7割を液化天然ガス(LNG)火力に頼る半面,石炭は数%どまり。新増設で電源を分散できそうだ。関西電力や中部電力など他の電力大手も石炭火力の検討を進めるとみられる。

 経産省の試算によると,2013年度に全国の電力会社が支払う燃料費は東日本大震災前の10年度と比べ原発停止分を補うだけで 3.8兆円増える。1キロワット時の燃料単価は石炭が5円で,石油の20円,LNGの13円に比べ割安。石炭を活用すれば,燃料費の上昇を抑えられる。

 石炭は世界中で産出地に偏りがなく安定した調達をみこめるため,原発に代わる常時稼働の電源としても期待を集める。

 なお,あとでも触れるが,この表のなかに原発1円と書いてあるのに,前段でも指摘していたように,文章中ではこの点に言及がない(ところが,なにか不自然であり,不審にも感じられた)〕。

 東電の入札規模を前提に石油火力から石炭火力へ転換すれば,燃料費を年 1750億円軽減できる。LNG火力からの転換でも 1150億円を抑えられる計算だ。一方,電力中央研究所によると二酸化炭素(CO2)の排出量は石炭火力がLNG火力の 1.5倍で,環境への負荷は大きい。

 --以上の記事については,稼働停止中の原発が大部分である現状のなかで,火力関係の発電に要する燃料費高騰,最近は安倍政権のせいで円安に動いている日本政府の金融政策のために,電力会社の発電コストが上がるばかりである。このところ,各電力会社による電気料金の値上げも,目白押しである。

 かといって,「3・11」以前のような,原発に総発電量の3割を依存してきた発電体制に,今後ただちに移行するような様子はみられない。原子力規制委員会の理念・考えかたの問題もかかわっているが,「3・11」以前の原発依存率に戻るわけにもいかない現状において,

 前段に引用した『日本経済新聞』4月26日朝刊の冒頭記事に出された表「安い石炭による火力発電は課題」という文句は,原発に未練タラタラの原子力村の気持を深く汲んでいたものゆえ,それはもう,この村人がとても喜びそうな表である。経済面で単純に考えるに,『原子力』⇒ 燃料単価:1kw時1円だ』というならば,日本の電力は全部原発にすればよいはずである。

 ところが,この原発コスト1円を強調していながら,前段に紹介した記事のなかでは,指摘したようにこの「表」のなかでの以上には,実は「なにも語っていない」。原発についてはこの〈原発〉ということばさえ,1度も出ていない。それでいて『原子力』⇒ 『燃料単価:1kw時1円だ』と,その表のなかには書いてあった。いかにも不自然,作為に満ちた嫌らしい表記になっていた
 

 ※-4 大島堅一『原発のコスト-エネルギー転換への視点-』2011年12月

 1) 第12回大仏次郎論壇賞受章

 この本(岩波書店の新書版)は,第12回大仏次郎論壇賞を授賞された。『朝日新聞』2012年12月14日朝刊は,この大島堅一の受章を,つぎのように報道していた。

 第12回大佛次郎論壇賞(朝日新聞社主催)は,大島堅一立命館大学国際関係学部教授(45歳,当時)の『原発のコスト-エネルギー転換への視点-』(岩波新書,798円)に決まった。

 安価とされてきた原子力発電に対し,国民や被災者が負担する社会的コストを綿密に計算。発電コストの実績値は火力や水力より高いとはじき出し,脱原発への構想も示した。来〔2013〕年1月31日,東京・内幸町の帝国ホテルで朝日賞,大佛次郎賞などとともに贈呈式がある。

 大島堅一自身は,こういっていた。

 「書きたい,書かねばならない」と思った本だった。東京電力福島第1原子力発電所の事故が起こり,人づてに岩波新書編集部へ執筆を申し入れた。原発の研究は,前著『再生可能エネルギーの政治経済学』(2010年3月刊,東洋経済新報社)で終わりにしようと思っていた。

 原発のためにさまざまな名目で投入された国家予算を集計,コストの高さを実証したが「おかしな事業が多く,とても精神に悪かった」

 「3・11」原発事故の衝撃は大きかった。同時に,原子力政策の実態を広く伝えてこなかったことを反省した。「首相個人の振る舞いを論じてもしかたがない。原子力開発を進めるため,国は電力会社が負担すべきコストを,国民に支払わせてきた。そんな非民主的なメカニズムこそが本質です。コストと安全性は表裏一体の関係ですから,お金の使いかたを変えないと,同じことがつづいてしまう」。

 前著『再生可能エネルギーの政治経済学』2010年3月が下敷きとはいえ,過去40年の〔原発の〕発電コストを1キロワット時あたり 10.25円と計算し,火力や水力より割高だと論証する手際は圧巻であり,知的な切れ味がある。数字を求める過程が,原発をめぐる政治システムの解明にもなった。

本当の原発コストは高くなるばかり

 〔原発〕事故後の本として,被害額の算定や補償への考えかたを示し,脱原発にかかるコストと便益を比較した。化石燃料の炊き増しなどでコスト増の一方,核燃料再処理などの費用が節約され,年に2兆6400億円の便益と算出する。「ざくっとした計算ですが,脱原発のコストだけを強調するのはおかしいと問題提起しました」。

 原発の議論はとかく白熱しがちだが,書きぶりはクールだ。「ひどい,許されないと思っても,そう書いてはいけないと心がけています。いった瞬間に終わってしまう。どう許されないのかを淡々と書き,事実で語らしめるのが私のスタイルです」。

 今春から英サセックス大に客員研究員として滞在し,脱原発を決めたドイツを中心に,風力や太陽光など再生可能エネルギーの導入状況を調べている。「事故後は忙しすぎて研究ができなくなり,あの状況が2,3年つづいたら私は終わっていました。環境問題は,間違ってもいいから現代に真剣勝負を挑まなければいけない。しっかりした研究をすることが,本当に社会の役に立つのだと思います」

 ※人物紹介※
 「大島堅一 おおしま・けんいち」--1967年福井県生まれ,一橋大大学院経済学研究科博士課程単位取得,経済学博士(一橋大)。高崎経済大助教授などを経て2008年4月から現職。共著に『原発事故の被害と補償』(大月書店)など。

人物紹介

 2) 識者の論評

 a) 橘木俊詔・同志社大教授(経済学)--久しぶりに経済で受賞の本が出てよろこばしい。発電の世界で原子力が重宝されてきたのは,発電コストの安いこと,CO2などを排出しないという環境への好効果にあった〔補足)……と誤解されるように誤導してきた〕。

 著者は専門家として,政策コスト,廃棄物処理コスト,事故による損害コストなどを考慮すれば原発コストは安くないと主張してきており,一般にもわかりやすく説いた本書の価値は高い。日本の原発を再検討するときの資料として有用である。

 つぎの課題として,再生可能エネルギーのコスト計算をもっと詳細におこなってほしいし,石炭・石油などの化石燃料で代替している現状において,電気代の値上がりをどう考えればよいのか,化石燃料による環境問題を無視してよいのかなどの議論を期待したい。

 b) 山室信一・京都大教授(思想史)--安定的で高出力,二酸化炭素を排出しないクリーンエネルギー,そしてなによりもっとも安価な原子力発電,そうした「神話」にいかに安易に惑わされていたか,本書を読み進むにつれ,悔悟の念が深まる。

 そして,原発にかかる費用を立地から核燃料使用後に生じるバックエンドコストまで含めるという視点から,再生可能エネルギーとのコスト比較をおこなったうえで,脱原発を提言する大島氏の強い想(おも)いが胸を打つ。

 氏はまた,放射性廃棄物の最終処理という人類が直面している難題に挑戦していく若い世代の出現を訴えているが,それは通説を覆し,最適な電源構成と発送電体系をいかに創出していくかを問いつづける大島氏への期待に重なる。

 いま,この瞬間にも行き場のない核のゴミが生まれている。

 c) 佐々木毅・学習院大教授(政治学)--原発問題は昨〔2011〕年以来日本社会が抱えこんだ最大の難問であり,今度の衆院選でも一つの大きなテーマとなった。難問である理由は絡みあう問題が多岐にわたり,論点の集約化がなかなか難しいことにくわえて,ややもすれば一気に「世界観」の問題になりかねないことにある。

 大島氏は本書において,原子力損害賠償支援機構法などをも視野に入れながら,原発のコストを多方面から丹念に展開し,併せて,脱原発コストについての検討もおこなっている。

 同氏のこれまでの研究からすれば,本書はその知見のすべてを網羅したものとは必ずしもいえないかもしれないが,総じてコストをめぐる議論の基盤を固め,議論の水準を高めるうえで,同氏の今後の活躍に対する期待は大なるものがある。

 d) 米本昌平・総合研究大学院大教授(科学史)--著者はすでに気鋭の環境経済学者として,再生可能エネルギーと,原発を含む他のエネルギーのコストについて比較分析をおこない,大震災の1年前に,その成果を一書にまとめている。本書はこれを踏まえて,原発の発電コストと,原発事故の補償問題について包括的に述べたものであり,待望の一冊といってよい。

 にわかに原発政策が重要課題になっているが,震災以前に,原発問題を扱う経済学者は少数であった。たとえ国や電力会社が情報を伏せようとも,あらゆる手法を駆使して算定してみせてこそ,真の研究者である。いま普通に「原発村」(原子力村?:引用者註記)というが,著者は長い間,孤独であったはずで,この重要課題を体系的にとりあげてこなかったアカデミズムは,恥じ入るべきなのだ

 e) 大野博人・本社論説主幹--原発やエネルギー政策について考え,議論するための土台を提供した好著だ。内容は実証的で手堅い。それでいて「3・11」後の社会のありかたについて,鋭いメッセージも投げかけている。原発をコストという視点から徹底的に洗い直す作業が,大きな成果に結びついているといえる。

 単にそろばん勘定に合わないことを示しただけではない。なぜ原発は広く受け入れられてきたのか,なぜこれからもつづけるべきだという主張がまだ根強いのか。安価なエネルギーという看板に隠れてみえにくかった思想や政治の矛盾もうまく描き出している。エネルギーをめぐる議論は当分終わりそうにない。積極的に発言をつづけてほしい。

 --以上,いまから1年と4カ月(2023年の8月からだと11年と8カ月)も前の時点におけるニュースだったが,朝日新聞社主催になる「第12回大佛次郎論壇賞」が,大島堅一『原発のコスト-エネルギー転換への視点-』岩波書店〔新書〕,2011年12月に授賞されたという「朝日新聞の報道内容」について,くわしく紹介した。

 本ブログの筆者は,『日本経済新聞』が1面冒頭記事のなかにかかげた「表」,原発コストが「kw時1円」などと,堂々と記入した「その神経が理解できない」。原発コスト問題に関しては大島堅一のみならず,多くの専門家が「原発コスト:kw時1円」は,どのように表現するにしても,とうていありえない数値である点を指摘・批判してきた。

 朝日新聞ばかりの意見を聞くことになるが,『朝日新聞』2012年12月14日朝刊の「天声人語」は,こう語っていた。

 住宅や工場を建てる前におこなう儀式が地鎮祭だ。土地の神様をまつり,工事の無事,建造物の安全をお願いする。お米や酒を供えて,関係者がくわを入れる。

 ▼ 日本原子力発電も1966年春,敦賀原発(福井県)の着工時にお祓いをしたはずだ。なにしろ国内初の軽水炉,若狭湾を囲む「原発銀座」の先駆だった。供え物が足りなかったとは思わないが,鎮めがたい魔物が地に潜んでいた。

 ▼ 後年,敷地を走る浦底断層が,地震で暴れる活断層と判明する。先頃の調査によれば,2号機の下にも浦底に連動する活断層があるらしい。原子炉直下とあっては再稼働はかなわず,廃炉となる公算が大きい。存亡の危機に,同社は動揺を隠せない。

 ▼ だが希望はある。原発の草分け企業は,廃炉でもパイオニアなのだ。日本初の商用炉,東海原発は1998年に発電をやめ,解体作業が進んでいる。敦賀の1号機も運転が40年を超え,先がみえてきた。

 ▼ 2号機も動かせないのなら,経営の軸足を廃炉ビジネスに移してはどうだろう。一つで少なくとも数百億円,数十年もの大事業だ。しかも国内だけで膨大な需要が約束されている。業界が直面する課題に挑むうえで,電力各社が出資する原電は適役といえる。

 ▼ 原発づくりは,地上のなんだかんだに精力を費やすせいか,地中への目配りが十分でなかったようだ。足元の怪しい施設は一つ二つにとどまらず,今さらながら,地震列島に原発大国を築いたことが悔やまれる。国土を守る,大地主神(おおとこぬしのかみ)の渋面を思う。

『朝日新聞』2012年12月14日朝刊「天声人語」

 日本に昔より固有に生成してきた〈神道の神々〉を動員して,事故発生時には非常に危険性の高い発電装置にならざるえない原発が,地震国であるこの国のあちこちに存在することを憂う発言である。

 再生可能エネルギーの開発・利用への方向性は,原発に絡みついている利害関係を,即座に否定し,瓦解させる必然性をもっている。つまり,それは,エネルギー政策に関する価値観を根源的に変換させる必要性を強く要求している。

 それゆえ,原発推進派〔維持派!〕にとって主観的には,まさに「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ではないけれども,いまごろにもなってなお,原発再稼働に向けて,密かでありながらも堂々と,偽説・虚構である「原発のコストは安価だ」「kw時1円でしかない」という虚偽宣伝に等しい記事を,『日本経済新聞』は書いていた。    
 

 ※-5「原子力発電は安い」は嘘。その理由は?

 ここに紹介する文章は,結論部をさきに紹介すると,こう書かれている。「『原発は安い』『原発は高くない』という国と電力会社の宣伝は真実ではありません。国と電力会社の公式資料が,それを裏付けています」

 つまり『日本経済新聞』2013年4月26日朝刊1面冒頭の記事に添えられた表のなかに記入されている「原発1kw時1円」が,いかに馬鹿げた虚偽の数値であるか,いかにウソの表示であるかを説明している。この点は,国と電力会社から発行されている公式資料にもとづき作成されており,資料の整理・分析を立命館大学国際関係学部大島堅一教授がおこなっている。

 なお,以下の記述には図1とか図2とかの表記(ことばだけ)が出ているが,その引用に当っては該当の “図表はあえていちいち挙げていない” 。これについては原資料にリンクを張っておくので,面倒でも同時に,こちら:註記1,註記2を参照されたい。

 註記1) 「『原子力発電は安い』は嘘。その理由は?」
  ⇒ http://www.greenaction-japan.org/internal/101101_oshima.pdf

 註記)「原子力政策大綱見直しの必要性について-費用論からの問題提起-」2010年9月7日。 立命館大学国際関係学部大島堅一,第48回原子力委員会定例会議「資料 1-1 」(↓この資料のほうがみやすく,分かりやすい)
  ⇒ http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2010/siryo48/index.htm

  ⇒ http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2010/siryo48/siryo1-1.pd

 1) 政府の主張
 
 政府は,2004年に原発,火力,水力からの発電コストを発表しています。1999年に出されたものと同様,原発は相変わらず一番コストが安いと記されています。この政府の発表をもとに,電気事業連合会は,原発はほかの電力と比べて「安い」「原発は高くない」と宣伝しつづけています。

 しかし,本当に原子力の電気は高くないのでしょうか。実は,政府の発表には重要なごまかしがいくつもあります。図1は,政府のモデリングをもとに,電事連が出している原子力発電のコストです。

 2) 批判的分析

 1.政府の計算は「実績」ではなく「モデリング」。--政府の計算は,実際に電気を作るためにかかったコストではありません。政府の計算は,あくまでも,仮定にもとずくモデリングなのです。それぞれの電源のコストを想定してはじき出した数字なのです。では,実績のコストはどうなのでしょう。電力会社の有価証券報告書に記載されているデータを基に計算すると原発のコストは水力と殆ど同じであり,火力とのコスト差も減ります。

 図2は,電力会社の有価証券報告書の総覧に記載されているデータを基礎に,原価として算入されている金額(つまり消費者が支払っている金額)を総発電量(送電端)で除して計算。(同志社大学の室田武氏の方法を立命館大学国際関係学部の大島堅一氏が採用し,計算したものです。

 2.揚水発電のコストを加算しないごまかし。--しかし,これでも原発の本当のコストはみえません。なぜなら,日本は原発への依存度が高く,発電量の調整のために揚水発電を用いる仕組になっているからです。夜,電力需要が少ないとき,需要に合わせられない原発は昼間と同様にフル回転しています。

 そのため電気が余ってしまい,この余った電気を山の斜面にもち上げ,需要が多いときに落として発電する揚水発電がセットで必要となっています。この揚水発電所は1日の一定の時間しか稼働しないので,稼動率が大変低く,その結果単価のコストがとても高いのです。

 原子力発電の供給率が増えるにつれて揚水発電が増えたことが良くわかります(図3)。揚水発電は,原発があるために必要で,原発を運転するためにかかるコストなのですが,政府(そして電事連)はこのコストを水力発電のコストとしています。

 そのため,水力発電コストは上がっています。水力を「一般水力」と「揚水発電」に分けて本来原発のコストである「揚水発電」を原発のコストとして計算すると,原発のコストは「安い」どころか,高いことがみえてきます。図4が揚水発電を原発コストに入れた時のコストです。

 3.新しい原発にかかる高いコストの平均化によるごまかし。--原発のコストをめぐってもうひとつ注目するべき点があります。

 図2は,電力9社の平均をとってものであり,古い原発と新しい原発が一緒に入っています。古い原発をもっている電力会社の原発の電気コストは比較的安いのですが,新しい原発を抱えている電力会社の原発の電気のコスト(たとえば北陸電力・図5をみると,原発の電気は高いばあいが多いのです。
 
 これから新しい原発を建てるばあい,その電気のコストは「安い」どころか,とても高くなる可能性が高いということです。
 
 補注)日本企業が製造する原発1基の価格は,2010年代後半からは,それまで5千億円であったものが1兆円に跳ね上がった。このための輸出事業のための製品としての原発の販売が不調になった。

〔記事に戻る→〕 そして,まだまだかさむのが原発のコストです。以上の計算だけでは原発の本当のコストはまだみえていません。なぜなら,以上の計算は発電に直接要する費用だけであり,「政府からの資金投入」(納税者が負担している原発のコスト)は計算に入っていないからです。

 この半世紀政府は一貫して原子力を推進しており,財政支出,そして電気料金を通じた追加的負担により,費用が調達されています。以上を計算に入れると,みえてきます。発電費用の図6で示されている②と③です。

 4.原発特有のバックエンドコストを過小評価。--バックエンド費用(図2で示されている②のこと)ですが,以下のような事業費用の負担制度になっています(図7・8)。

 以上を踏まえて,いま再処理にいくら払っているかが下の図です(図9)。現在(2007年度),1世帯,平均1ヶ月あたりの負担額は 240 円です。これは原発の使用済み燃料を再処理する時の積立金です。

 いまの全量再処理政策(原発から出てくるすべての使用済燃料を再処理してプルトニウム・ウランをとり出す政策)をおこなうための積み立てです。しかし,全量再処理の道をとるために実際かかってくるコストが格段に過小評価されています。

 たとえば,六ヶ所再処理工場の稼動率はつねに 100%と計算されています(再処理の経験を積んでいるフランスの AREVA 社の2007年の実績は56%)。また,六ヶ所再処理工場は,日本の原発から出てくる使用済み燃料の半分しか再処理出来ない規模の施設です。

 100%の稼働率をたとえば 50%に見積もり,再処理工場がふたついると計算すると,それだけでも見積はいまの4倍になります。図10と図11からよく分かるように,原発のバックエンドでかかってくるコストは,再処理だけでなくすべてが大幅に過小評価されているのです。

 〔なかでも〕原発特有のコストであるバックエンドコストは,いくらにかさむかまったくちゃんと推定もされておらず,分からないのが実体です。

 5.政府からの資金投入をみせていない。--原発は政府から(つまり税金から)の資金投入をたくさん受けています。それがなければ原発はなり立ちません。原発は,商業的になり立つ電源ではないということです。国の一般会計と特別会計から出されている資金投入には,財政支出,開発費用,そして立地費用があります。

 原発は一般会計エネルギー対策費の97% ほどをもらっています。つまり,これは原発のためにあるようなものです。特別会計(電源開発促進対策特別会計)のほうですが,これも立地へむけてのお金はほとんどすべて原子力に当てられているので,この特別会計のおよそ70%は原子力に当てられています。つ

 まり,政府からのエネルギーへの資金投入(財政支出)は図12で分かるように,ほとんどすべてが原子力に当てられているのです。  

 出所)http://blog.goo.ne.jp/kin_chan0701/e/7bc930d2f35e5754cef37043f4a02cc9 

 出所)http://blog.livedoor.jp/hardthink/archives/51843867.html

 結 論:「原子力のコストは高い」。--これまでの資料から分かることは,原子力のコストは安くない,むしろ高いということです。しかも,原発がスタートした1970年から現在まで,どの時期をみても,原発はいつも火力よりも,そして一般水力よりもコストが高かったのです。

 原発の電気のコストは 1970-2007年度の平均が12.23 円です。このうち2円ほどは本来電力会社が負うべき費用を国(納税者)が負担しているものです。

 補註)以上の議論・分析は,大島堅一『原発のコスト』では,第3章「原発は安くない」。こちらが,原発「発電の実際コスト(1970~2010年度平均,円/kw時)」という表のなかで,原子力(原発コスト)について,前掲図表にも出ていた 10.25円と算出している。

 ※-6「新たな『原発神話』許すな,原子力は割高と論証 -大佛次郎論壇賞を受賞して-」『朝日新聞』2012年12月19日朝刊「文化」欄より

 大島堅一が『原発のコスト』でいいたかったことは,原発にはみえないコストが大量にあり,それが,本来負担すべき電力会社などの利害関係者ではなく,一般国民の負担になっているということである。くわえて,原子力政策が一部の利害関係者のみで決定されているために,原子力開発が暴走し,いっそう国民へのコスト負担を強いているということである。

 原発のコストの最悪たるものは,原発事故による被害である。周辺住民の被害は,まだ本格的調査すらされていない。東京電力福島第1原発事故後,政府,国会,民間,東京電力と,4つの事故調査報告書が出された。しかし,これらの報告書では,原発施設についてはくわしく述べられているのに,住民や自治体の被害実態はほとんど明らかにされていない。

 補注)以上の記述は現時点(2023年8月)となってみれば,それなりに進展している分野もあるとはいえ,基本方針としては東電福島第1原発事故をなるべく隠しておき,触れずままにしておくという基本精神になにも変わりはない。

〔記事に戻る→〕 被害は,深刻そのものだ。被害者は,ふるさとやコミュニティーそのものを丸ごと失い,回復がきわめて困難な状況になっている。これを解決するには,被害者への十分な補償と個別の事情に即した生活再建策が必要不可欠である。ところが,政府も東電も,早々に補償の打ち切りを画策している。

 一方,原子力政策においては,もはや成功するみこみのない技術の開発が,いまもなおつづけられようとしている。たとえば,本〔2012〕年11~12月に開催された文部科学省原子力科学技術委員会もんじゅ研究計画作業部会では,高速増殖炉もんじゅ開発の失敗の歴史が振り返られることはなく,研究開発のメリットのみが強調され,もんじゅの早期再開が必要との意見がでている。

 なぜ,このようなことが起こるのか。それは,原発事故による悲惨な被害をはじめとするさまざまなコストが,被害者や一般国民に押しつけられたままだからである。そして,利害関係者のみによって原子力政策が進められるという構造が,いまなお改善されていないからである。

 政府部内では,事故後も,原子力政策のレビューがおこなわれたことはない。過去の原子力政策を振り返り,これを支えた原子力行財政を見直し,国民にコスト負担を強いてきた原因をとり除く必要がある。

 原発は,国が丸抱えで進めてきた事業である。原子力行財政を根本的にみなおし,変えないかぎり,過去と同じような政策が維持されてしまうのは当然である。このままでは「原発がなければ経済が崩壊する」などといった新たな神話が,つぎつぎと生まれ,過ちが再び繰り返されるのではなかろうか。

 補注)「原発がなければ経済が崩壊する」といったイイグサは笑止千万である。正確にいうと「原発が経済を崩壊させる」といったほうが適切な理解である。

 --「原発1kw時1円」を記入した表を作成し,朝刊の1面冒頭記事に出す日本経済新聞の編集方針は,いったいなんのため・誰のためなのか? 

 きっとそれで得をする人間,利益をとる組織,なにかと都合のいいことばかりを手に入れられる関係筋が大勢いるに違いない。

 広島・長崎の原爆投下は戦争のせいであったが,福島への原発事故は日本の「原子力村」の住人たちの責任であった。

 第2次世界大戦が終ったとき,日本帝国がこの『戦争に「敗戦」した事実』を認められなかった日系南米人がたくさんいた。敗北した事実を認める日系人を殺したりもした。

 21世紀にもなってこんどは,自分たちの住む日本国内の目前で起きた「3・11の原発事故」のことだから,さすがにこの事実を認めないわけにはいかなかった。

 それしても,この日本国においてはいまなお,この原発事故が記録した「世界史的なマイナスの教訓」を,平然と無視していられる〈特定の集団〉が生き延びている。
 

 ※-7 参考資料:「電力会社の皮算用でも,もっと高い」

 以前,『原子炉設置許可申請書に記載された発電源原価』という書類があった。電力会社も公式には政府試算を使って宣伝していたが,過去に提出した「原子炉設置許可申請書」には,電力会社自身が計算した「皮算用」の原価が記載されていた。

 これをみると,1990年以降に運転開始した新しい原発でもこの表のように,政府試算値とは大きくかけ離れていた。まだ計画中の東北電力巻原発に至っては,19.96円にもなっていた。

 これらの数字は運転初年度のものである。原発は,建設費が高いために運転開始20年以上たたないと安くならない。それでは,政府試算と同じように耐用年数一杯でみるとどうなるか?

 現在計画中のいくつかの原発の設置許可申請には,耐用年数の原価が記載されていた。いずれも約10円~14円となっていて,やはり政府試算の 5.9円とはかけ離れていた。
  
 ここの ⑤ の話の筋に即した説明で追加すると,原発にはさらに,

 a)「核のゴミの処分費用・廃炉費用など」
 b)「原発の過剰電力を捨てる『揚水発電所』の建設費揚水発電」
 c)「原発依存が招く過剰設備」
 d)「莫大な立地対策費」
 e)「事故対策費」

なども,加算しなければならない。要するに,原発の発電に要する『原価はまさに無限大です』!!

註記)http://www.geocities.jp/tobosaku/kouza/price2.html

(この記述の住所〔 ↑ 〕は現在は削除されている)

 ★ いったい「誰なのか」? 「原発コスト:1kw時1円」などと,まったく与太話にもならないような,根拠なし・証拠なしの,それも法外・論外の暴論的夢想(!)でもって,新聞第1面の冒頭(トップ)記事にかかげた表のなかに書きこんだのは,どこの誰なのか?

 「プーチンのロシア」によるウクライナ侵略戦争が2022年2月24日に始められて以来,世界経済におけるエネルギー市場は価格を高騰させてきたが,いまでは落ち着きを取りもどし,プーチンの思いどおりにはいかない市場の動きになってきた。

 たとえ,原発以外のエネルギーの価格が高くなっても,原発に依存する電力生産体制は,大きな禍根を再び惹起させる危険性と同伴している。再生可能エネルギーによる電力生産と原発の電力生産とを同等視するなどといった「非科学観」は無用である。

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【参考記事】

 上記の記事は有料記事であり,途中までしか読めない。全文はこちらで読める。
 ⇒ http://www.asyura2.com/23/senkyo291/msg/365.html

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