大学で、なぜか能楽部に入った話。(序)/あの日、私と京都は。その3
それは、まだ――
まだ、百万遍に、立て看板(通称タテカン)が遠慮なしにずらずら並んでいた頃で。
まだ、取り壊し前の大学闘争時代の建物が、かろうじて残っていた頃で。
まだ、4月に格安コピーで印刷した大量のビラが、大講義室の机に地層をつくる頃で――
――ただ、手書きだった履修登録が、パソコンによる登録に変わっていく頃で。
それまで一切関知されなかった出席が、じわじわ取られるようになる頃で。
タテカンとセットで、なくてはならない石垣が、取り壊されるとかいう話が出る頃で―