「食堂み」の女たち21

「あっ!」俊一がテレビの画面を指さした。
みんなが一斉に見入る。二宮祥子という女性の顔写真が画面に大きく映っている。
「あの顔…」言ったのは美奈だった。
映っているのは浅井則子とそっくりの目。シュッとしたきれいな鼻、髪は茶色かかったロングのストレート。年齢三十四歳、身長一六四センチ、体重四十七キロ、それが二宮祥子。
「この女性は、昨年の平成九年八月一日に起こった殺人事件の容疑者です。被害者は二宮祥子の夫、二宮雅之さん。夫婦二人暮らしで妻の二宮祥子は夫、雅之さんを撲殺した後、逃亡し今も見つかっていません。特徴は、顔写真を見ていただけるとよく分かるのですが、まるでモデルのような美人。そして唇の横にホクロが二つ並んでいます。似た人を見かけましたら、ここまでお電話を」テロップに数字が並んだ。「似てる!ノリちゃんに。マスクしてるから、ホクロ二つは分からんけど…」美奈が目を見張る。「似てるかあ?全然似てへんわ。ノリちゃんの方がよっぽどいい女やで。ほれより続けよ。うち負けてるから」響子が牌を乱暴に音を立てて混ぜながら光恵の方をチラッと見た。下を向き、真っ青な顔をしていた。


続く

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