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サルコペニア



サルコペニアは1989年にRosenbergによって提唱されました。当初、サルコペニアは加齢に伴う筋肉量の減少と身体能力低下とされていたのですが、2010年ヨーロッパのサルコペニアの専門家のワーキンググループ(EWGSPO)によって「筋量と筋肉の進行性かつ全身性の減少に特徴づけられる症候群で、身体機能障害、QOL低下、死のリスクを伴うもの」と定められました。同グループでは65歳以上を対象に筋肉量低下、筋力低下、歩行速度の評価による身体機能低下の組み合わせによる臨床的な診断手順を示した。

Cruz-Jentoft A J,et al:Sarcopenia:European con-sensus on definition and diafnosis Report of the European Working Group on Saropenia in Older People.Age Ageing,39(4):412-423,2010

2014年、日本を含むアジア人を対象に診断基準、診断のアルゴリズムがアジアにおけるワーキンググループ、Asian Working Group for Sarcopenia(AWGS)により発表されました。

Chen LK,et al:JSarcopenia in Asia:consensus report of the Asian Working Group for Sarcopenia.Am Med Dir Assoc,15(2):95-101,2014

要するにサルコペニア(sarcopenia)とは=筋肉(sarco)の減少(penia)を示します。

サルコペニアには加齢のみが原因となる原発性サルコペニアと活動・栄養・疾患を原因とする2次性サルコペニアに分類されます。

サルコペニアの基準を満たさない場合であったとしても、筋肉量・筋力・身体機能のいずれかの低下が認められた場合はその原因を明らかにしなければなりません。

診断基準


図1:サルコペニアの診断基準(アジアのサルコペニアワーキンググループAWGSによる基準2014)

上の図のように筋肉量の低下を認め、筋力もしくは身体機能の低下を認めた場合にサルコペニアと診断します。

※検査機器による筋肉量の評価が困難な場合は日本人の地域在宅高齢者では、下腿周囲長が男性34cm・女性33cm未満を筋肉量の目安として使用してもいいです。


簡易的測定方法:両側の母指・示指で下腿部の最も太い部分を把持し、囲めることができればサルコペニアの可能性があると推測できます。


図2.簡易測定方法(引用:酒井医療株式会社/サルコペニア)

各用語

・二重X線吸収測定法(DEXA:Dual-energy X-ray absorptiometry)
日本骨粗鬆学会ガイドラインや世界中の骨粗鬆症ガイドラインで基準測定器として定められているX線骨密度測定装置です。二種類の透過度をもった微量なX線を対象に照射し、透過前後のエネルギーの減衰率からコンピュータで計算して面積当たりの骨密度を測定する検査です。従来の骨密度検査(超音波法・MD法・CT法等)と比較しても精度の高い方法となっています。 主に腰椎・大腿骨を検査されます。


図3.DEAX本体と測定画像(引用:春山記念病院/骨粗鬆症と骨密度検査)

・生体電気インピーダンス法:BIA(Bioelectrical Impedance Analysis)
身体に微弱な電流を流し、その際の電気の流れやすさ(電気抵抗値)を計測することで体組成を推定する方法です。脂肪に対しては電気はほとんど流れませんが、筋肉などの電解質を多く含む組織は電気が流れやすいという性質を利用します。電気を通しやすい筋組織は、その断面積により電気の通りやすさ(電気抵抗値)が異なります。断面積が大きいほど電気抵抗値が低く、断面積が小さいほど電気抵抗値は高くなります。電気を通したことで分かった電気抵抗値と、予め測定してある身長から筋組織の長さを計測することで筋肉量を計算しています。ここで計測された筋肉量と測定した体重、予め入力された情報と統計データからどれだけの脂肪組織が身体に付着しているのかを推定します。


図4.InBody製のBIA機器(引用:BIAとInBodyの歴史.BIA機器)


図5.サルコペニアの原因と対応方法


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