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【覚え書き】2024SS(Tokyo)8/30/2023 

SEVESKIGのスカジャンにはMidjourneyやChatGPTにおける「AIの誤訳」から生まれた「トラの頭を持った神」がプリントされる。


https://www.fashion-press.net/collections/19020

通常スカジャンに刺繍される虎や竜といったモチーフの代わりに、あたかも古典的な象徴性を持ったシンボルのように、AIによって生成された架空の神の姿がもっともらしく描かれている。


アルフォンス・ミュシャの『スラヴ叙事詩』から着想を得たこのAIによる新しい神の姿の生成は、ある物語が歴史として語られていく中で、そこに表象されたものが果たし得る役割について示唆的である。


ミュシャによる『スラブ叙事詩』もまた、スラブ民族を取り巻く歴史的事実と伝承の双方が作家の取捨選択によって織り交ぜられた、いわばミュシャ個人による「神話」の構築であった。

アルフォンス・ミュシャの『スラヴ叙事詩』から『ヴォドニャヌイ近郊のペトル・ヘルチツキー』


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ミツルオカザキのコレクションは、表参道の裏通りのとある地下室にて発表された。


ショーの冒頭、鳥のさえずりのような音が会場に流れていた。数分間、会場には囀りだけが響く。


しばらくすると一人のモデルが自ら幕を開けて登場し、ゆっくりと会場をうろついた後、空いていた客席の一つに腰をかけて頭をもたげる。


やがてそれに続くモデルが登場し、客席の間を縫いながらゆっくりと会場を周回し始める。その姿はランウェイを歩くモデルというよりも、あてもなく森を彷徨う夢遊病患者の姿に近い。


「不思議の国のアリス」に登場するキャラクターがシルエットで刺繍されたトップスが登場し、このコレクションが「不思議の国のアリス」を下敷きにしていることが明らかになった。


前面のホワイトマテリアルと背面のブラックマテリアルをずらして縫い合わせているTシャツが幽体離脱を感じさせるものであるというFashionPressの指摘が興味深い。https://www.fashion-press.net/news/108366


https://www.fashion-press.net/collections/19022


終盤、最後のモデルが客席に紛れ込み眠りについていたモデルを起こすことでショーは終わりを迎えた。これによってショーは「客に紛れ込んだモデルが見た夢」というストーリーの骨格を持つことになる。



夢を見るモデルが客席に座っていることを考えると、ショーの一連は訪れた客が見た夢ということになるのかもしれない。



とある裏通りの地下室という会場の立地的な条件も手伝っていたのかもしれない。



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HEōSは村上龍の『限りなく透明に近いブルー』から霊感を受けたコレクションを発表した。「NIBROLL(ニブロール)」がタイトルである。会場には作中にも登場するDOORSが鳴り響く。

レイ子は早くから店を閉めて、カズオが立川の薬局から万引きしてきたというニブロール二百錠をテーブルの上にばら撒き、パーティーの前夜祭よ、とみんなに言った。

村上龍『限りなく透明に近いブルー』


ニブロールのタグ

僕はここは一体どこなのだろうとずっと考えている。

村上龍『限りなく透明に近いブルー』


https://www.fashion-press.net/news/108347

「リリーほら雨だよ、洗濯物干してるのか?起きろよ、リリー。雨が降ってるんだよ」

村上龍『限りなく透明に近いブルー』

「リュウ、あなた変な人よ、可哀想な人だわ、目を閉じても浮かんでくるいろんな事を見ようってしてるんじゃないの?」

村上龍『限りなく透明に近いブルー』
https://www.fashion-press.net/news/108347

それで俺は自分の好きなようにその見る物と考えていた事をゆっくりと頭の中で混ぜ合わせて、夢とか読んだ本とか記憶を探して長いことかかって、なんていうか一つの写真、記念写真みたいな情景を作り上げるんだ。
 新しく目に飛び込んでくる景色をどんどんその写真の中に加えていって、最後にはその写真の中の人間たちが喋ったり歌ったり動くようにするわけさ、動くようにね、すると必ずね、必ずものすごくでっかい宮殿みたいなものになるんだ。

村上龍『限りなく透明に近いブルー』

あたし海に入るわ、この中にいると息が詰まるのよ

村上龍『限りなく透明に近いブルー』


https://www.fashion-press.net/news/108347

ねえ、あなたの都市はどうなったの?

村上龍『限りなく透明に近いブルー』
https://www.fashion-press.net/news/108347

オキナワが持ってきたドアーズを聞く。「なんだ白けるのか?」

村上龍『限りなく透明に近いブルー』

その幻の町は人通りがなく家々はみんな戸を閉めて、僕は一人で歩いていた。町外れまで歩くと痩せた男がいて、この先に行ってはいけないと僕を止めた。構わず進むとぼくの体は冷え始め、自分を死人だと思った。その死人となったぼくは青い顔をしてベンチに座り、夜のスクリーンに映る幻覚を見ている僕の方へと向かい始めた。

村上龍『限りなく透明に近いブルー』
https://www.fashion-press.net/news/108347

リリー、鳥が見えるかい?今外を鳥が飛んでるんだろう?リリーは気がついてるのか?俺は知ってるよ、蛾は俺に気が付かなかった、俺は気がついたよ。鳥さ、大きな黒い鳥だよ。

村上龍『限りなく透明に近いブルー』
https://www.fashion-press.net/news/108347

血を縁に残したガラスの破片は夜明けの空気に染まりながら透明に近い。
(中略)
僕は地面にしゃがみ、鳥を待った。
鳥が舞い降りてきて、暖かい光がここまで届けば、長く伸びた僕の影が灰色の鳥とパイナップルを包むだろう。

村上龍『限りなく透明に近いブルー』

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フィリピンのアパレルブランドBENCH/は、フィリピンの民族衣装 Ternoを題材にとったコレクションを発表した。


スペイン植民地時代の影響を受けたこの民族衣装は、宗主国であった当時のスペインの流行を反映したものらしい。スペインではその後も他の西洋諸国と同様に流行が移り変わっていくが、この影響を受けたTernoはさらに多様な文化的混ざり合いを内包しながら、民族衣装としてフィリピンに定着した。



クレオール的なファッション




2023.08.31 2:17

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