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たとえ話と、トマトの苗の育て方

たとえ話の上手い人って、いると思う。
なんとなくわかるけど、漠然とした話に
たとえ話が加わると、突然、映像がついて、
あぁそういうことね、と、すとんと納得してしまう。

先日も、こんな話を聞いた。
「お米の中に、食べたら失明する米が1粒でも入っていたら、
絶対に食べないだろう。
それと同じで、ネガティブな感情、
マイナスなイメージが、ほんの少しでもあれば、
人は動くだろうか(否、動かない)」

めちゃくちゃわかるよなぁ。
ネガティブが少しでもあったら動かない、
マイナスイメージが少しでもあったらできないことは、
頭ではわかっていても、なんとなく理論のように聞こえて流れてしまう。
だけど、失明する米粒の話を聞いた途端、100%納得してしまった。
上手い!と思った。

ネガティブ感情うんぬんの話はさておき、
たとえ話って、すごい力だなと思う。

たとえ話もそうなのだけど、
もし◯◯なら……という想像も、
脳を刺激する効果があって、個人的に大好きだ。

たとえば、
あるバラエティ番組で、「もし買ってもらえるなら、今1番欲しいもの」を1位から100位まであげるという企画をやっていた。
10位くらいまでは、あぁなるほどね!というものばかりで、皆すらすらと出るのだけれど、順位が下がるほど、「ご飯のお供」みたいな、その人自身さえ予想をしていなかったものが出てきて、えらく面白い。
些末なものではあるけれど、その人の潜在意識というか、個性というか、独自のものが出てきて、面白い企画だと思った。

なんだったら、やってみてほしい。
「もし買ってもらえるなら、今1番欲しいもの」を1位から100位までだ。

話は飛んで。
個人的に忘れられない韓国ドラマの名場面として、機会があるたびに熱く語っているのが、『愛の不時着』の第3話、トマトの苗のエピソードだ。

話はこうだ。
北朝鮮の不時着した韓国人女性セリ(ソン・イェジン)が、
世話になった北の軍人ジョンヒョク(ヒョンビン)に、
お礼としてトマトの苗を贈る場面だ。
「僕はトマトが好きじゃないし、植物をうまく育てる自信がない」と、少しふてくされるジョンヒョクに、セリはこう言う。
「玉ねぎもいい言葉だけをかけてあげた子は、すくすくよく育つ。
悪口ばかり言われて育った子は、枯れて死んでしまう。
水をあげて、1日に10個、きれいな単語を聴かせてあげればいい」

これまた、セリが良いたとえ話をしているが
好きな場面は、このあとだ。

セリの言葉を聞いたジョンヒョクは、
トマトの苗に向かって、真剣に考え込み、
自分が想像しうる10個のきれいな単語を聴かせてやるのだ。

日差し、ツツジ、露、ひつじ雲、
三毛猫、バラ、そよ風、初雪……
トンビ……は違うな……
と言ったあと、最後の最後に
ピアノ……
と、トマトの前につぶやく。

書いているだけで、涙が出てくる。
家の事情で、ピアニストになる夢をあきらめたジョンヒョク。
それでもやはり、心の奥では、ピアノを美しいものとして大事にしている。

この「トマト」とつぶやく場面が好きすぎて
観るたび、観なくてもこうやって思い出すたび、
自分が本当に大事にしているものってなんだろうと
心が揺さぶられる。

バラエティ番組での、今欲しいもの100位、ではないけれど、
「もし」という想像を、どんどんあげていくと、
自分の心の奥深くに入っていくようで
思いがけず、グッとなることがある。
それこそ、すとんと納得するような。
そうか、自分、これが欲しかったんだ、
これが好きだったんだ、みたいな。

とりとめもない話になったけれど。
想像力って、ものすごい力を持つなぁと思う。
たとえ話も、「もし」企画も、
脳が勝手に想像して、
心の奥まで入っていく。
面白いなぁと思う。

もしも、トマトの苗を育てるとき、
私なら1日10個、どんなきれいな単語を話しかけるだろう。
想像しながら、あげていくと、
そうか、自分、それが好きか……
といろいろ気付かされるので、
ほんと、想像力、面白い。


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