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マイケル・ジョーダンと赤っ恥〜知らないことは怖くないについて。

恥ずかしいことって、意外と悪くないなと思う。
たとえば、知っていて当然と思われていることを、知らなかったとき。
知らないことを、人さまの前でさらしたとき。

まさに、そんな事件が昨晩起きた。
食事会の席でのことだ。
目の前のある方が着ていた服にあしらわれているロゴがどうしても気になった。
ちなみに、私はファッションに疎い。流行にも疎い。そのことを忘れていた。ただ純粋に気になって、思わず訊いてしまった。
「ハンドボール、お好きなんですか?」
…………
場は一瞬固まり、その方が苦笑いを浮かべたあと、笑いの渦が巻き起こった。
私はどうもやらかしたらしい。
「これ、知らない? マイケル・ジョーダンのロゴよ?」

いや、マイケル・ジョーダンは知っている。知っているけど、そんなロゴの存在なんて知らない。
これは、赤っ恥なのだろうか。もはや耳なんて真っ赤である。

ちなみに、私は小学校から中学までをバスケ部で過ごした。
それを突っ込まれて、「バスケ部で、マイケル・ジョーダンのロゴを知らんのかー!」と、さらに笑われた。
その場にいた皆が、知っていた。
そうなのか、これは世界的によく知られたロゴなのか。
1人、知らなかったことを皆の前でさらすも、誤魔化しようがない。
だって、知らなかったから。

とにかく、そのロゴはハンドボールをする人ではなかった。
私には、それはハンドボールをしている人のシルエットにしか見えず、ハンドボールのロゴなんて、なんてマニアックなんだろう!と、興味津々だったのだ。
なんて言ったところで、知らなかったことには変わりない。
散々笑われて、思った。
この感じ、悪くない。

「何でも知っている人」でいると、なかなか「知らない」と言いにくい。
だけど、「こんなことも知らない人」と思われたら、こちらの勝ちだ。
もうこの瞬間から、私は堂々と、知らないことは「何、それ?」と訊ける。
とても楽になった気分。しかも、こんなに笑ってもらえるなんて。

自分が得意としているジャンルのことでも、意外に知らないことは多い。
読めない漢字も多いし、観ていない映画も多いし、読んでいない本も多いし、行ったことのない場所も多く、やったことのないことも多い。
周囲が皆、知っていたり、観ていたり、行っていたりするとき、知らない・観ていない・行っていないは、なかなか言えない。

『アナと雪の女王』や『君の名は』が世間で大ヒットしていたとき、観ていない、がなかなか言えなかった。
大きな殻付きの海老が出てきたとき、どう食べていいか、わからなかった。

「知らない」と言うことは、意外と勇気がいる。
知らないことは、なんとなく恥ずかしいからだ。
そして、「恥ずかしい」とは、自分のイメージを守るために生まれる心理らしい。つまり、周囲の信頼や評判を失ったかも……と感じたとき、恥ずかしさを感じるのだそうだ。

確かに。
マイケル・ジョーダンのロゴを、かつてバスケ部だったにもかかわらず知らなかったことを皆に露呈したときは、「どう思われただろう。こんなことも知らないと思われたんじゃないか」と一瞬にして縮こまり、冷や汗をかいた。
が、一瞬だった。

この一瞬を乗り越えた私は、マイケル・ジョーダンのロゴを覚え、ひとつ知識を増やした。
ジョーダンのロゴがどのように生まれ、どれだけ人気なのかも、滔々と聞かされ、ジョーダンまわりのことも知れた。
加えて、「知らない」ことは恥ずかしいけど、怖くはないと知った。
人事担当の友人も言っていた。
「採用の決め手は、素直かどうか」
素直な子が、素直に「教えてください」と言える子が、1番伸びるらしい。

そもそも、ジョーダンのロゴについては、私は「知らないこと」さえ知らなかった。
恥ずかしかったけれど、皆が知っていることを自分が知らなかったことを知ったことは、とても良かった(ややこしい)。
知るためには、知らないことを知る必要があるんだなぁ。

そんなわけで、私がハンドボールをする人だと思ったマイケル・ジョーダンのロゴは、これです。

NIKE Inc.,

いやぁ、恥ずかしかったなぁ。

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