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戦術分析【B2リーグ '21-'22 Season 第22節①】西宮 - 奈良

バンビシャス奈良にとっては1月23日(日)の佐賀戦以来の試合となった2月19日(土)に西宮のHOMEヴィクトリーナ・ウィンク体育館で行われた第22節の第1戦。奈良は堀田HC体制となっての三試合目となるこの試合より、昨年末の試合で負傷した大黒柱グレッグ・マンガーノが復帰し、長引く連敗をなんとか止めることが期待される。一方の西宮もデクアン・ジョーンズがこの試合より復帰ということで、お互い外国人選手が3人揃った状態でどのような試合を進めていくのかに注目する。

第1Q : 西宮はハインズ、奈良はオトゥーレ、マンガーノ、外国人選手の活躍光る!

このゲームのスターター、西宮は川村、今野、松崎、ムボジ、ハインズ、奈良は横江、藤髙、オトゥーレ、鈴木、マンガーノ

奈良は序盤オトゥーレにボールを集め、インサイドで得点を重ねていく。一方の西宮はハインズがドライブからやプルアップジャンパーを次々に決めていく。奈良はハインズの1on1を守り切ることができず残分5分46秒で13−6、7点差をつけられたところでこの試合最初のタイムアウトを取る。

タイムアウト後、奈良はテッパンの2−3 マッチアップ気味のZoneに切り替える。オフェンスではマンガーノの3ポイントが2本立て続けに決まり第1Qは20−18、西宮が2点リードで終える。

奈良 : 【Opening set】Double stagger into PnR / Low post seal

奈良のティップオフ直後に見せたオープニングセットはDouble staggerから。右Lowの鈴木がオトゥーレ、マンガーノのStaggered screenを使ってTopへ。

横江からパスをレシーブした鈴木に対しマンガーノがピックへ。その間右Low postでオトゥーレがムボジをシールし鈴木からボールを受けターンからショットを決めた。

西宮 : 【Half court offense】ハインズへのPickでマンガーノとのスピードの差を浮き彫りに!

第1Q序盤、西宮ハインズの連続得点を可能にしたのは、ハインズにマッチアップするマンガーノに対し積極的にOn ball screenをSetし、スピードのミスマッチを活かして攻撃できたからである。

下の場面では左サイドでボールを受けたハインズに今野がピックに。スピードに劣るマンガーノはハインズのドリブルでのアタックに対応できずスクリーンにかかってしまう。鈴木はショウ&リカバリーで今野へ戻ってしまい、奈良のまずい連携もあわさってハインズのドライビングレイアップを許した。

次の場面では、左SLOTでボールを持つ今野に対しムボジがハイピックしそのままムボジはコーナーのハインズへPin down(Veer action)。ハインズは左Wingでボールをレシーブ。

ハインズがボールをレシーブするとすかさずムボジはハインズへ再びpick。マンガーノは先ほどのようなドライブに備えてアンダーを通る。マンガーノがアンダーを選択したのでハインズはミドルのプルアップジャンパーを放ち、見事に沈めた。

第2Q : 奈良はオフェンスが急ブレーキ。西宮が点差を広げる!

奈良は第2Qのはじめ、マンガーノとオトゥーレをベンチに下げ、マブンガをコートへ、一方の西宮はムボジ、ハインズをベンチに下げ、ジョーンズをコートへ、両チームOn the court 1でスタート。

奈良は今シーズンよく見受けられるのだが、マブンガがオフェンスのファーストオプションになると、マブンガがボールをキープする時間が長くなり、少々無理な1on1が増え、タフショットになる。決まれば良いのだが、ショットが落ち、リバウンドを取られブレークを出されるというパターンをしばしば見かける。この試合の第2Qもその傾向が見られた。さらに西宮は自チームのFT後下図のようにフルコート1−2−1−1zone DFからハーフコート2−3 zone DFとDFに変化をつけ、なかなか奈良にオフェンスのリズムを掴ませなかった。

西宮 : 【DF】1-2-1-1 full court zone DF → 2-3 half court zone DF

奈良 : 【OF】プレスダウン

今シーズン、奈良はフルコートでDFされるとターンオーバーが増えていたがこのクォーターはしっかりとチームでプレスダウンをしていた。下図のようにバックコートエルボーの二人がクロスし、真ん中をビッグマンがフラッシュしカウンターでつなぐというシンプルな一般的なプレスダウンだが、5人が共通認識を持って対応できていた。

奈良 : 【EOQ】Horns pin down → rip post seal / Corner hand off

このクォーター奈良のラストプレーを紹介する。Horns entryから横江がPop outしたオトゥーレへパス。右Slotへ移動。

24秒の残り12秒で右lowのマンガーノへPin downしマンガーノがボールをレシーブ。横江はその後すぐにオトゥーレへBack (Rip) screen。オトゥーレはRimへDiveしマークマンをシール。

ファーストオプションはマンガーノからオトゥーレへのHigh & lowだったに違いないが(下図青点線)、横江がrip screen時にムボジに吹っ飛ばされてベースライン付近にいたので、横江のDFが邪魔になったのでパスが入らず。マンガーノはすかさず右コーナーの高岡に対してハンドオフ。特別指定選手の高岡は思い切りよく3ポイントを放つもエアボールで終わってしまった。結局奈良はこのクォーター5得点で35−23、奈良12点ビハインドで試合を折り返す。

第3Q : 奈良がDFに変化をつけ、一時は3点差に迫る!!

奈良は後半のスターターが横江、オトゥーレ、玉井、中澤、マンガーノ、一方の西宮は川村、今野、松崎、ムボジ、ハインズ。

奈良はハーフコート2−3 zoneで巻き返しにかかる。オフェンスではマンガーノが奮起し、残分4分40秒で41−35、6点差まで点差を縮め、西宮がたまらずタイムアウト。ここで西宮が奈良のZoneに対して用いたZone attackを紹介。

西宮 : 【Zone attack】Baseline cutからHigh post flashでオーバーロード

西宮が年始に奈良と対戦した際にも使っていたZone attackだが、ツーガードの位置のハインズが左コーナーへとカットする。ElbowのムボジはLow postへ。

その後、ハインズがベースラインカットから2−3でGapとなっているハイポストへフラッシュしオーバーロード。ムボジはlowでオトゥーレをシール。ハインズはWingの川村からパスをレシーブし、ジャンパーを沈めた。

奈良 : 【DF】Half cort 2-3 zoneからトラップ

上記タイムアウト明けに奈良が見せたDFの変化。西宮のPG渡邊がボールをフロントコートにキャリーした瞬間。2−3の前の二人、板橋、中澤が西宮のPGに対しスプリントしトラップ。西宮のPG渡邊はかろうじて左コーナーにいたジョーンズへパスをとばし、早いタイミングでジョーンズが3ポイントを放ち外れる。奈良はそのリバウンドをきっちりととり、次のポゼッションで玉井が3ポイントを沈め、ついに3点差まで追いついた。

いよいよ逆点かという展開になってきたが、残分3分27秒、マンガーノがこの日3つ目のファウルを吹かれて、やむなくベンチへ。マブンガが交代で出てくるも、奈良のオフェンスの流れが切れてしまいターンオーバーから走られるパターンでやられ、結局56−41、一時3点まで詰めた点差が15点に広がり第3クォーターを終えた。

第4Q : 奈良はマンガーノが奮闘も残り2分でファウルアウト、万事休す。

奈良は第4Q残分8分で、ファウル3つの大黒柱マンガーノをコートに戻すも西宮のジョーンズを止めることができず、残分6分45秒には64−46とこの日最大の18点差がついて奈良タイムアウト。

タイムアウト後はマンガーノが孤軍奮闘、一時は59−70と11点差までで詰めたが、残分2分12秒でマンガーノが5つ目のファウルをし、ファウルアウト。奈良は万事休す。最終79−64でゲームを終えた。

西宮 : 【Half court OF】Grenade action

第4Qに西宮が見せた、今流行りのアクション"Grenade"。NBAやヨーロッパのバスケットでは頻繁に見かけるが、Bリーグでもスタンダードになってきている。

Grenadeとはボールを持ったポストからハンドオフやDHOに移行するアクションのことで、図のようにLow postでボールを持った西宮の中西が、アウトサイドの道原に対してDHO、道原が右ベースラインをドリブルしPull up jumperを決めた。

Grenadeから派生するプレーは以下を参考にしてください。

まとめ : この試合を数字で読み解く

いつものようにこのゲームの4FactorsなどのSTATSは以下の通りである。

まず特筆すべきは負けたチームの奈良の方がPOSSは高い数値となっている。オフェンスリバウンドはオトゥーレの頑張りで西宮よりも多い。しかしT.O.が西宮の倍となっているし、一番は3ポイントの確率であろう。奈良は西宮に比べ圧倒的に3ポイントの試投数が多い。3ポイントを打てるプレーヤーが多いこともあり、かなりの数を打っているが(ポゼッションは同等ながら3ポイント試投数は西宮の3倍)、確率が30%を切っている。よってeFG%が西宮よりも低く、Offense ratingも圧倒的に低くなっている。この試合、チームで3ポイント成功数の多い薦田と木村が出場していなかったが、それ以外のプレーヤーの3ポイント確率の改善に取り組むことが喫緊の課題である。またFT%も極めて低い。オトゥーレに至ってはインサイドの要ながら0/4と致命的だ。またガードプレーヤーの板橋も1/4とFTの確率改善にも取り組まなくてはならない。HCが交代しマンガーノが復帰ということで何とか現状を打破したい奈良。マンガーノ不在時に比べ、戦える時間は長くなっている。何とか連敗を脱し、チームの状況を少しでも上向きにしてほしいと願うばかりだ。


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