見出し画像

リーゼントとモヒカン

今ではすっかりマイホームパパ然とした風貌のボクだけど、これでも若かりし頃はちょっとヤンチャな見た目のときもあったのだ。

そう、あれは大学3年生の頃

単一キャンパスでは日本一の敷地面積を誇る、それは要するに無駄にキャンパスが広くて単に徒歩では移動できないことを意味するだけの大学構内を僕は母親から譲り受けた正真正銘のママチャリでひとり駆け抜けていた。

ひとりだったのは、もちろん友達がいなかったからだ。

そんな僕の髪型は、当時すでに時代遅れになっていたリーゼント。

The虎舞竜の高橋ジョージに憧れて、

という訳では残念ながらなくて、当時、僕が心酔していた英国のくせすごミュージシャンがリーゼントにしていたからだった。

ちなみに彼のいたバンドのPVでは、リーゼントかつ国から配給された古臭いデザインのメガネをかけた彼が、そんな彼と全く同じ格好をした少年たちと一緒に自転車で街を駆け巡るという名シーンがある。

山を削って作られたせいか平坦ではなくアップダウンの激しいキャンパスを、僕もまたそんな彼らに成り切って、肩で風を切りながらママチャリを走らせていたというわけ。

そんなある日、いつもと同じ学部とパンキョーの講義室を繋ぐ坂道を下っていたとき、明らかに場違いな人とすれ違った。

彼は頭をモヒカンカットにしており、いかにもパンク風の銀色の鋲がたくさんついた革ジャンを着込んでいた。

それだけでも充分異質な存在なのに、彼はなんと碧眼と銀髪の外国人で、俳優のジェラードフィリップを彷彿とさせる美男子だった。

最初、見たときは幻覚かと思ったけれど、決してそうじゃなかった。

その後も4,5回くらいは同じ道ですれ違ったからだ。

そして、彼はいつもカバンも何も持たずに、革ジャンのポッケに両手を突っ込んで、少し怒り肩にしながらひとりきりで黙々と歩いていた。

これぞいわゆる

リーゼント ミーツ モヒカン

まあ一度も視線が合ったことはなかったから、きっと僕の存在は彼の眼中にはなかっただろうけど、僕は心の中でそんな彼のことを勝手に自分の同志だと思っていた。

以上、オチも何もないつまらない思い出話を思わず書いてしまったのも只々この素晴らしい曲のPVを紹介したかったからである。

それではみなさんご覧ください。

MONO NO AWARE で

「風の向きが変わって」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?