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モリッシーで朝食を

日曜日の朝、早起きした僕は、まだ寝息をたてている妻子を起こさないように、そっ〜と寝室を通り抜けて、リビングで1人だけの朝食を取ることにした。

早速、ポットでお湯を沸かして、トースターで食パン(超熟)を焼く。

そして、お気に入りのマグカップにドリップパックをセットして、その上から、お湯を注ぎ、焦げ目のついた食パンには、親父が大好きだったSKIPPYを塗りたくる。

それらをリビングに持っていって、ただむさぼり食らうだけなのに、なんだかとても贅沢な気分に浸れているのは、おそらく久しぶりのおひとり様時間を満喫できたせいかもしれない。

ならば、もっとこのおひとり様を満喫しようジャマイカ🇯🇲ということで、僕はBluetoothスピーカーで自分の好きな音楽を流すことに決めた。

で、このときほぼ直感的に選んでたのが、大学時代の僕のテーマソングと言っても過言じゃない

The Smiths

の曲たちだった。

自分史上、もっともフォースの暗黒面のキワキワにいて、まるでジャックナイフ時代の千原ジュニアみたいな三白眼で、この世のほとんどの人間はクソだと唾を吐いていたあの頃…

思えば、僕は、バカだった…。

そんな遠い目をしようとしても、恥ずかしいこと山の如しな自意識過剰男子だった当時の僕にとって、確かに唯一

本当のことを歌っている

ように聴こえたのが

The Smiths (モリッシー)の歌詞だった。

Does the body rule the mind? Dose the mind rule the body? I don’t know!

In my life, why do I give my valuable time to people who don’t care if I live or die.

Ask me why, I will spit in your eyes.  

I don’t dream about anyone except myself.

And if they don’t believe me now, will they ever believe me ?

When you want to live, how do you start? Where do you go? Who do you need to know?

本当にメンヘラ&モラトリアムの極みのような小っ恥ずかしくて日本語には訳せないフレーズばかりだけど、さして英語が得意でもないのに、いまだに空でそらんじられるのは、あのとき、まるでその言葉たちを彫刻刀で全身に刻み込むかのように聞き込んでいたからなのは間違いない。

実際、当時のセルフイメージは、念仏の代わりにモリッシーの歌詞を全身タトゥーした耳なし芳一だったし(や、やべえヤツだな、おい)

でも、久しぶりに聴いたThe Smithsは、そんな過剰で劇場的な切実さのカケラも感じられず、まさに日曜日の朝にピッタリな、拍子抜けするくらい軽快なバックグラウンドミュージックと化していて、それが残念というより、むしろなんだかとてもうれしかったんだよね。

もちろん、モリッシーの歌詞にビンビンに反応する剥きたてのタートルヘッドみたいな自分の敏感ハートはいまだ健在ではあるけれど、ただ途方に暮れているだけだった若かりし頃の自分に比べると、今の僕は、ある程度、自分なりの戦い方は身につけたかな、という自信を実感出来ていたりはする。

実際、あの頃の僕は、世間に対して心の中で中指を立てていても、結局、丸腰で何もできなかったヘタレ以外の何者でもなかったしね。

一方で、今の僕は、見た目は人畜無害なマイホームパパだけれど、その裏では、笑いながら誰も傷つけずに形勢逆転するために魔法のジャックナイフの刃を日々研いでいるような人間である。

そんなことをぼんやり考えていたら、いつの間にか妻と息子が起きてきてリビングに集合していた。

すると、ちょうどいい?タイミングで、Some girls are bigger than othersが流れてきたから、いわゆる二代目O-PPAI brothers な息子に向かって、

「これ、おっぱいの大きい女の子は、お母さんのおっぱいも大きいっていう歌なんだよ」

と伝えた。

すると、案の定、息子は「なんちゅう歌やねん!」と言いながら嬉しそうにゲラゲラ笑っていた。

その様子を眺めながら、あのとき1人で膝を抱えて聴いていた曲をこんな風に自分の家族と笑いながら聴けるなんて、あの頃の僕には全く想像もつかなかったことだけど、だからこそ、そんなちっぽけな奇跡を起こした自分のこと少しは褒めてやってもいいのかな、と

不意にそんな考えが頭をもたげたのだった。

そして、最近の僕の朝のムードは、The Smithsよりもどっちかと言うとこっちなんだよなあ…とも。

というわけで、最後にまさかのThe Smithsじゃない曲を紹介してみる😆






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