フェイク・プラスチック・フラワーに囲まれたぼくらのフューチャー
西暦2✕✕✕年
先人たちのSDGs(持続成長可能な開発目標)を目指した必死の努力もむなしく、地球上には、我々人間を除く全ての生命体が絶滅してしまった。
しかし、なぜ人間だけが生き延びることが出来たのか?
それは、今からさかのぼること30年前の20◇〇年に天才科学者スティーブ・ホリエモン・樋口カッター博士によって開発された
「有機プラスチック」
のおかげである。
この「有機プラスチック」の誕生によって、我々人間は、自分たちの生命活動の維持に必要なあらゆるものを全てプラスチックで賄えるようになったのだ。
外気温は摂氏70℃を超え、酸素濃度も低く、海も山もなくただ荒涼とした灰色の砂漠が広がるだけの地球には、かつての面影は全くなくなってしまったけれど、それでも最新型人工知能ZI(じぃ)によって人間に最適な条件下で管理されたシェルターの中で、我々の子孫は何不自由ない暮らしをしていた(まぁ、人口は7000万人まで減ってしまったけどね)。
そして、その中には、僕の5代目の子孫にあたる
N.O.T.J
もいた。
今年、24歳になる彼は、人生で初めて出来たガールフレンドとの記念すべき初デートの場所をどこにしようか
という最重要課題
について悶々と悩んでいた。
「いちばんベタで鉄板なのは、やはり東京ディズニーシェルターだけど、チケット代が自分の月給くらいするので、最初のデートとしてはちょっと豪華すぎるよな・・。」
「本当は自分の好きなバンド(BluetoothHead)のバーチャルライブを一緒に鑑賞したいところだけど、たぶんマニアックなバンドだから白けちゃうかもしれないし・・・。」
「う~ん、マンダム。」
そして、そんな風にひとしきり悩んだ挙句に
彼の頭に突如、ひらめいたのは、
「そうだ、お花畑に行こう!」
というアイデアだった。
本当に単純だけど、女の人って、みんなお花好きだもんね。
そして、デート当日
禍々しいほどに美しいプラスチック製の花々に囲まれ、天井に備えられた吹き出し口からは、とてもいい香りの人工フラワーフレグランスが漂い流れるその場所で、
彼女はとてもうっとりとした表情を浮かべながら、しきりに瞬きを繰り返していた※
※瞬きをすると、自動的に自分の脳内デジタルストレージにその画像がどんどん蓄積される仕組みになっている。
隣でその姿を見つめながら、N.O.T.Jは、彼女に気づかれないないようにそっと小さくガッツポーズをしたのだった。
まあ、残念ながら、彼はその7か月後にあえなく振られちゃうんだけど、ね。
そして、それはいわば、N.O.T一族の血の呪いというヤツかもしれない(笑)
しかし、今回の彼の一部始終を見ていると、どうやら、どんなに時代が変わっても、どんなに環境が変わったとしても、僕ら人間が抱える悩みの種類はこれっぽちも変わらないようである。
そして、この言葉が僕らの希望の言葉であり続けることも、きっとね。
「いつだって僕は、愛する君の望むような人になりたいんだ(If I could be who you wanted, all the time)」
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