死〜今宵の呟き〜





何故、過去は、あんなにも、美しいのだろうか



 最近、

 自分が、学生だった頃の事を、よく、思い出すようになった。


 とても辛かったはずの日々、


 そいういった、町、人の流れは、時間と共に、美しさを増していく。

 思い出すだけで、涙を流しそうになる事もある。



 私が、高校生の時は、両親も、元気であり、互いに意見を交わし合っていた。



 そして、

 今は、なき場所で過ごした日々、

 サティではよく、映画館のゲームセンターで時間を潰し、

 本屋ではヴァンパイア騎士の単行本を買っていた。



 グランベリーモールでは、行きつけのフードコートで、

 母が、買い物を終えるまで、必死に勉強をしていた。


 全てが美しかった。



 私は、32歳で、両親は50代後半となる。


 今は、互いに、生物としての、終わりが近いため、
 直接は、触れぬが、何処か虚しさを抱えている。 



 GWや夏休み、年末年始は必ず、帰省するが、実家は時が止まっている

 そう、私が出て行ってから、何も変わっていないのだ。




 両親は、私の前で、よく空元気を出すが、その光景は、胸が焼かれるように辛い。


 父、母、先に旅立つのはどちらかは、分からぬが、
 その時は、とても辛く受け入れ難いであろう。




 私を、支えていた、町、人が、どんどん姿を消し、新しいものへと移り変わっていく。



 何故、

 万物は、生成と消滅を繰り返していくのか、絶対的な、モノとして形を残し続けることはできないのか。



 私が、死を迎えた後は、一体、世界はどうなっていくのか、

 死の直前には、誰か側にいるのか。



 両親が他界した後、私は、天涯孤独となる。

 しかし、その後も、人として、強く生きて行かねば、先人は涙を流す。



 私は、最近、

 この、無常の時の流れの中で、というものをよく考えるようになった。


 今は、目の前の仕事で、この現実を、誤魔化すことしかできない。


 もし、過去に戻れるならば、どんなに幸せなことだろうか。


精神科医ましろ











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