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『真綿の檻』尾崎衣良

【あらすじ】

古風な家で娘として親に尽くし、結婚すれば妻として夫に尽くす。「家」は女の牢獄なのかーー?
地味で、人に尽くしてばかりに見える榛花の、本当の人生とは…!?

バナー広告でよく見かけて気になったので電子書籍を購入しました。
『深夜のダメ恋図鑑』で大人気の尾崎衣良さんの新作漫画です。

清武榛花きよたけはるかというひとりの女性をめぐる短い物語で、身内から見た彼女についての印象、エピソードが語られていくというスタイル。

控えめでおとなしい榛花。
彼女の弟である聖司とその妻・紗英は、榛花の家を訪ねるたび、寡黙で無愛想な、いかにも亭主関白といった榛花の夫・清武一広の横暴な言動に戸惑いを隠せずにいました。

「相変わらず奴隷みたいな生活してたな」
榛花の家をあとにしての帰り道、聖司は呆れたようにそういいます。

こどもの頃から榛花はおとなしく、存在感の薄い少女でした。弟の聖司が生まれてからは、男児のほうが大切にされる昔ながらの家風により、聖司はちやほやと育てられ、その一方で女の子の榛花は家の手伝いをするのがあたりまえ、しかも要領が悪いとしょっちゅう母親に怒鳴られるような、そんなあからさまな待遇の差の元に育ちます。

厳しい父親と、聖司には甘く榛花には辛辣な母親。
やがて大学進学を機に家を出て、そのまま結婚し、現在の家庭を築いた榛花。
夫である一広は、フルタイムで働く榛花に家事いっさいを任せっきりらしく、聖司たちが家を訪ねるたびソファに陣取って動こうとはしません。

……この部分だけを見ると、とんでもなく横暴な心ない夫のようですが、榛花自身はいったいどのような思いで生活しているのでしょう。

気になりますよね。すごく。

家庭の本当の姿というのは外側からはわからないものです。
人の心のなかと同じように。
人は、自分の見たいものだけを見る。
自分にとって都合よく勝手に解釈して物事を見てしまう。
そしてそれが真実だと疑わない。

とても考えさせられる物語でした。

弟の聖司みたいに、甘やかされることに慣れていて要領だけはやたらと良くて周囲からかわいがられる人間、いるよね、と思いました。
榛花のように、虐げられてもぐっとこらえてひたむきに努力して結果を出す人、本当に尊いなと思いますし、しあわせになってほしいです。

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