浦島太郎伝説

 とある街に一人で住む三十過ぎの独身男性。彼の母親は早くに亡くなり、父親は幼いころに行方不明となっていた。この男性、仕事で行き詰まり会社をやめて部屋を片付けていたら古いメモを発見した。そのメモには海岸の名前が記されており、父親の消息につながるかもしれないと思い、これまで気になりながら生きてきた父親の消息探しを始めたのだった。
 確かこうゆう始まりの新聞連載をふと思い出した。
 物語は新聞社の女性記者が仲間に加わり、海辺で亀と遭遇し、竜宮城へたどり着く。竜宮城にはタイムマシンがあり、父親はタイムトラベルの途中でマシントラブルに遭い、未来のどこかで暮らしているはずだとの展開。    
 竜宮城には何百年も生きている乙姫と人間の浦島太郎が住んでいて、マシンは改良が重ねられていた。
 亀と遭遇した海辺には釣り宿があり、浦島太郎と竜宮城の橋渡しをする宿であることが代々引き継がれてきていた。女性記者は宿の娘であり、竜宮城へ行く前夜に母親から先祖代々からの申し伝えを聞いたのだった。
 話はきらびやかな竜宮城から時を行き来するタイムマシンへと移り、行方不明だった父親を見つけるところまでは記憶しているけれど、結末はいかがなものだったのか記憶が無い。
 浦島太郎の話はおとぎ話から派生して沢山の書が書かれている。研究的な本や、はたまたサスペンスの題材に使われてもいる。浦島太郎伝説はおとぎ話の世界から飛び出して、今も生活の中に生きているのかもしれない。もしかしたら、自分が浦島太郎となっているのではないだろうかと思うほどである。
 夢見るようなゴージャスな暮らしという願望は、だれしも持っているのではないだろうか。また、願望の世界から現実世界にいる自分にふと気が付いて、得も言われぬ心地に捉われることも多々あるのではないだろうか。
 浦島太郎伝説が、今日も自分の中に生き続けていると思うと安心するのなら、そのうち海辺で竜宮城の亀と遭遇するかもしれない。

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