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トイレで唐突に、色即是空を思い泣く

今回、ワタクシひつじ合唱隊員が、衝撃を受けた映画として勝手に語りたいのは、ジブリ作品のひとつ。

「かぐや姫の物語」

……っと。
ジブリと聞いて「あれかな、これかなと思ったのに、肩透かし」と、思った人もいるかもですね。
わたしも「ジブリで特に好きな作品」と言われたら、他の作品をあげるかもですが、「衝撃」といわれたら、これです。

監督の高畑勲は、アニメ「アルプスの少女ハイジ」「赤毛のアン」の演出を手掛けてもいます。
ハイジもアンも、精一杯生きている、わたしの大好きな主人公たちです。

さて、この「かぐや姫の物語」。
製作期間8年、制作費50億円(公式サイトより)で
アニメーションの技法も凝りに凝っている。
かぐや姫が慕う「捨て丸兄ちゃん」や、
かぐや姫が覚えていた、悲しい曲調のわらべ唄も出てきたりして、
この作品ならではの展開が随所に盛り込まれています。
(御門のアゴはともかく(笑))
でも、衝撃を受けたのは、そこではないです。

かぐや姫のお話ですから、まあ、ストーリーに関してはネタバレも何もないでしょう。
にもかかわらず、なにゆえ、そんなに衝撃を受けたか。

ラストシーンです。
いわずと知れた、かぐや姫が月に帰って行くシーン。
いやがおうにも期待していたシーンのひとつですが、さて。

神妙なシーンになるのだと思っていました。
しかし……。

「は?」と言いたくなるくらい、拍子抜けというか、とにかく華やかで明るい音楽を奏でながら、月からの使者がやってきます。
その曲調の、あまりの影のない明るさに、うすら寒くなるような気もする、そんな音楽。(音楽は、久石譲。すごい…!)

かぐや姫は、使者に羽衣を着せられた瞬間に、記憶をなくしたようになり、月へと帰って行く──。

エンドロールを、ぼう然とした思いで眺めていました。
なんていったらいいのか、すぐには感想がでてこない。
とにかく、あっけにとられて。

席を立ち、トイレに行き(シネコンだったので、トイレはいっぱいありまして)、個室に入ったら、なんだかよくわからない感情に猛烈に襲われて、号泣してしまった。

言葉にすると、こんな感じ。
「全部、全部無駄なんだ。
わたしが悩んだり、一生懸命になったり、こだわったりしても、全部。
だれかを好きだとか、嫌いだとか。
いい人が早逝したり、悪者がはびこったりする世の中だったりだとか。
そういうことは、もう全部、なにか大きなものの前では、関係ないんだ」
……というような。
色即是空─この世のあらゆる物には実体がない、わたし自身でさえもそうだ、みたいなことを思ってしまったようです。
いや、この説明でも、伝えきれているかどうかわからないのですが。

でも、だからといって、悲観的な気持ちで泣いてしまったというのとも違い、絶望の先の希望を見た気もしました。

生きていくことそのものが個人的な感情とエゴの塊で、だからこそ、好きなように精一杯やればいい。
人にやさしくしたければ、そうすればいいし、それと同じように、人に対して意地悪をしたい人は、意地悪をするのでしょう。大きなものの前では、まったく意味のないことばかりだろうけど、どうしたいかは自分次第だと。

主題歌「いのちの記憶」では、こう歌っています。
過去のすべては、いまのすべて
そして、
いまのすべては、未来の希望

─そんなことを感じ、号泣しました。トイレで。

深く深く味わってもらいたい作品です。

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