ハンバーガーよりカネロニが食べたい!

群像劇の脚本って主役が存在しないケースもあるし、一人ひとりの登場人物のキャラクターをしっかり描いてエピソードを組みこんでいくのがすごく難しい。
だから、素晴らしい群像劇の作品に出会うとゾゾゾって鳥肌がたっちゃう。
そんな映画のひとつ、トム・ハンクス主演『ターミナル』
主役がいるケースね。

あらすじ
ニューヨークJFK国際空港に降り立つも、母国クラコウジアのクーデター発生でパスポートが無効になってしまったビクター(トム・ハンクス)。入国も帰国もできない彼は、さまざまな人が行き交う空港ターミナルで寝起きをすることに。

生きるのに必要なのはお金じゃない!?

法の隙間に落ちてしまい、空港ターミナルから出られなくなってしまったビクターは、言葉は通じないし、もらった食事無料券はなくしてしまうし、お金もないし大ピンチ!
にもかかわらず、クラッカーにケッチャップ&マスタードで0円サンドを作ったり、ショッピングカートを返却すると25セントもらえると気づき、お金を貯めてハンバーガーをゲットしたり・・・とにかくたくましく、正直でやさしい。
どんどん周りを巻き込み味方を増やしてターミナル生活に順応していく姿は圧巻で、監視側の税関スタッフたちも防犯カメラ越しに〝鑑賞〟してしまうほど。

主役を引き立てる脇役たち

主役のビクターが〝魅力ある男〟なのは当然として、まわりの登場人物たちがすっごく生き生きしている。これぞ群像劇!

アメリア・ウォーレン(キャサリン・ゼタジョーンズ)・・・美人でナポレオンに詳しい客室乗務員。不毛だと分かっているのに不倫をやめられない。
エンリケ・クルズ(ディエゴ・ルナ)・・・入国係官のドロレスに思いを寄せるも声をかけられない食事運搬員。無一文のビクターにある交換条件を出す。
フランク・ディクソン(スタンリー・トゥッチ)・・・昇進の邪魔になりそうなビクターを追い出したくて仕方がない国境警備局主任。
グプタ・ラハン(クマール・パラーナ)・・・仕事を奪われることに怯える空港清掃員。その背景には23年前にインドに残してきた家族の存在が。

アポはとってあるか?

空港清掃員のグプタさん、第一印象はいじわるなへそ曲がりじいさんって感じ。ビクターが落とした無料食事券を拾おうとしているのに容赦なくほうきで掃いてゴミ箱へ。ビクターがゴミ箱の中をのぞこうとすると、

「アポはとってあるか?」
と突き放す。
さらに「ゴミ箱の中を見たいなら火曜に来い」と言ったくせに、火曜に行っても相手にしてくれない。
さらに、行き交う人たちが注意書きを読まないのを承知で、わざと床を濡らして通行人が転ぶのを見るのが唯一の楽しみという性格の悪さ。

グプタさんは「アポはとってあるか?」が口癖なのだけど、毎回少しずつこのセリフを言うグプタさんの心情が変化しているのが興味深い。
見知らぬ男へのいじわる、一日限りのレストランのウェイターとして、そして最後はモップを持って駆け出して・・・ああ、これ以上は言えません。

クラコウジアの戦争が終結し、入国不可者でなくなったビクター。
ある目的を果たすためにニューヨークに入国しようとするも、国境警備局主任のフランクに阻まれて断念。そんなビクターにグプタさんは言います。
「臆病者!」
でも、本当に臆病だったのはグプタさん自身。
掃除員の仕事を奪われてインドに強制返還されることにずっと怯えていたのです。
それに気づいたグプタさんは最後の「アポはとってあるか?」のセリフを放つ行動に出るのです。グッときました。

カネロニってなんだ?

ところでこの映画、「ハンバーガーが食べたくなる映画」と言われたりもします。トム・ハンクスがおいしそうにハンバーガー食べるからね。
でも、私はハンバーガーよりもカネロニが食べたくなりました。
アメリアが初めてビクターを食事に誘ったのがカネロニ料理だったのですが、知らなくて調べちゃいました。
おいしそう~♪
決めた、今年中に絶対カネロニを食べる!

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