"Entrée" behind-the-scenes⑧CICADA

—マグカップが、割れていた。彼女の匂いがひびからこぼれてゆく。

ふと窓の外に目をやると、蝉が何かに追いかけられているかのように飛んでいた。
蝉が彼女の化身なのか、それともそよ風になって遊んでるのかな。
無念の想いが水となって、マンホールの中・地下を彷徨う。

カフェオレ、たき火、土。銅色に宿るあなたの追憶を、赤銅色の蝉が小さな羽をはためかせながらなぞっていく。

このマグカップのひびをふさいだら、また一緒にカフェオレを飲もう。

もし、あなたが僕を愛しているなら。
If you love me


元々は、Dead Man Walkingというタイトルだったこの曲。
死刑囚が絞首台まで歩く時、看守が叫ぶ言葉が”Dead Man Walking”。
死刑囚は、わずかな距離ではあるが、生きながらにして「死者」として歩く。

大きな喪失感を伴った人は、死刑囚が死刑台に行く時と同じような心持ちなのではないかと思い、作った。

しかし、大きな喪失感を伴った人が、
心の奥底で誰にも言わずに一人叫んでいることは何だろう?と掘り下げたとき、
If you love meというシンプルな望みに帰着するのではないかと考えた。

大切なマグカップが割れて、なぜ胸が詰まるんだろう?
きっと、もし、もしの想いが知らず知らずの内に積み重なって愛情になっているからなのかもしれない。

追憶の蝉は、また夏に向かって飛び始めるね。

CICADA
このMVは、大学時代の友人、倉地啓司がイラストを1週間足らずで描きあげてくれたものです。

https://youtu.be/_13XKrcugGQ

https://open.spotify.com/track/1bNXoRfVgZEQP5kHggFnIH?si=vj4lVSDNR-auFTbXmRsoYQ

2018年、ビクターよりメジャーデビュー。シンガーソングライター/トラックメイカー。愛猫カールをこよなく愛す。ベイスターズと北欧料理に励まされるピアノマン。◆新曲「三角形のミュージック」MV→https://youtu.be/hKb500zLQCE