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コントラクトブリッジの世界で一躍有名人に? 1933年のコメディ映画「Grand Slam」

コントラクトブリッジは1925年にルールが確立され、その後20世紀を通して流行したカードゲームです。特に1930年代は欧米を中心に大変なブームとなり、ブリッジの話題が様々なメディアで取り上げられたほか、小説や映画など、エンターテイメントの分野でもブリッジが題材となりました。
今回はコントラクトブリッジの世界で一躍有名人になってしまう主人公が活躍するコメディ映画「Grand Slam」をご紹介したいと思います。
といっても、この作品は1933年に公開されたものであり、2023年現在映画本編を鑑賞する方法が不明です。ですので、本作の全編を鑑賞する手段をご存知の方がいらっしゃいましたら、ご一報くださるとありがたいです!

「Grand Slam」予告編動画

「Grand Slam」の予告編動画は、アメリカの映画専門チャンネル「Turner Classic Movies」から見ることができます。

このチャンネルを利用するにはケーブルテレビや衛星放送チャンネルの登録が必要で、アメリカの他、イギリス、フランス、スペイン、南米といった地域ではサービスの提供があるようですが、日本でのサービス利用可否は不明でした。

「Grand Slam」のあらすじ

あらすじについては、英語版Wikipediaの他、映画情報のWikiサイトとして知られる「IMDb」、アメリカ映画協会が作成している映画データベース「AFI Catalog」のページを参照しました。以下リンクはIMDbとAFI Catalogそれぞれの作品ページとなります。

「Grand Slam(1933)」(AFI Catalog)https://catalog.afi.com/Catalog/moviedetails/1048

これらのサイトで紹介されているあらすじを以下にまとめてみました。

主人公はウェイターの仕事をしながら小説家を目指すロシア人の青年ピーター・スタニスラフスキー。ブリッジに関心のないピーターだったが、彼の妻マルシアが熱心なブリッジの愛好家であったためにブリッジを学ぶことに。

ある晩、ピーターはウェイターとしてブリッジパーティに参加するが、そこでブリッジの専門家であるセドリックとブリッジをすることになり、思いがけなく勝利を収めてしまう。
ピーターは勝利の秘訣を問われ、冗談で「スタニスラフスキー・メソッドのおかげです」と答えてしまったところ、「そのメソッドを本にしたい」と言い出すライターが現れ、ピーターはマルシアとブリッジツアーに繰り出すことになり、ピーターはブリッジ界の有名人になってしまう。

しかし、そんなデタラメがうまくいくわけもなく、様々なトラブルを引き起こしてしまい…

ピーターのモデルってもしかして…

当方のnoteをご覧になっている方の中には、このあらすじを読んでピンと来る方もいらっしゃるかもしれませんが、おそらく、この映画の主人公のモデルはブリッジ界のレジェンドプレイヤー「エリー・カルバートソン」だろうと思われます。

過去のnoteでもご紹介していますが、エリーはプレイヤーとして成功するだけでなく、コントラクトブリッジの専門雑誌『Bridge World』を創刊するなど、コントラクトブリッジの人気を盛り上げた立役者です。そんなエリーとこの映画の主人公ピーターの設定には多くの類似点が見られます。

まず、ピーターはロシア人という設定ですが、これはエリーの出自がアメリカ人の父とロシア人の母を持つところからだと思われます。
そして、彼の妻がブリッジ愛好家であるという設定は、エリーの妻ジョセフィンがモデルになっていると思われます。ジョセフィンはエリーと結婚する前からブリッジの指導者であり、結婚後はエリーのブリッジパートナーとして数々のトーナメントに参加しました。

さらに、ピーターがブリッジの専門家と対決して名声を得る、というエピソードも、エリーが行ったとあるブリッジの試合を彷彿とさせます。それはもちろん、シドニー・レンツと対戦した「世紀の一戦」です。この戦いはエリーが提唱した「カルバートソンシステム」とシドニーとその仲間たちが開発した「オフィシャルシステム」の、どちらのメソッドが優れているのかを競うための試合でした。また、この試合でエリーは妻ジョセフィンとペアを組んで出場していました。
ブリッジの専門家との対決に勝利し「スタニスラフスキー・メソッドのおかげです」とピーターが答える一連のエピソードを見れば、ブリッジファンなら「世紀の一戦」を思い浮かべてしまうに違いありません。

というわけで、どうみてもエリー・カルバートソンの活躍から着想を得ていると思われるブリッジの映画「Grand Slam」のご紹介でした。いつか映画全編を鑑賞する機会が得られるといいんですがねーではー。

サポートはコントラクトブリッジに関する記事執筆のための調査費用、コーヒー代として活用させていただきますー。