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日本語に残る古代中国語の影響3(完)

写真:漢代の人物(台北 故宮博物院蔵)筆者撮影

謎解き、古代中国語の入声の漢字が現代日本漢字の促音になった

ここまで「日本語に残る古代中国語の影響」1,2をお読みいただき有難うございました。まだお読みいただいていない方は、最初に1、2をお読みください。
それでは、最初に2で述べた李白の七言絶句を見ましょう。

早發白帝城   唐 李白
平平仄仄仄平平
朝辭白帝彩雲間  朝(あした)に白帝を辞す 彩雲の間
平仄平平仄仄平
千里江陵一日還  千里の江陵に 一日で還(かえ)る
仄仄平平平仄仄
兩岸猿声啼不住  両岸の猿声 なきて住(や)まず
平平仄仄仄平平
輕舟已過萬重山  軽舟 已(すで)に過ぐ 万重(ばんちょう)の山

詩の上に記述したのが、平仄です。
この詩のなかの「一日還」の「一」は現代中国語で一声(高い音)、「白帝」の「白」は現代中国語では二声(上がる音)になります。「日本語に残る古代中国語の影響2」で説明しましたが、現代中国語の一声・二声の平仄は「平」になるはずなのに「仄」になっています。これらは昔の中国語では入声(短い発音)なので「仄」になっている事も「日本語に残る古代中国語の影響2」で説明しました。

例えば白虎や一個は日本語では、どのように発音しますか?
そうです「びゃっこ」と「いっこ」ですね。っの発音を促音(そくおん)と言いますが、日本語の音読みで促音になるのは、ほとんどが古代中国の入声の漢字なのです。

調べてみると、もっといろいろな漢字が入声の読み方になっています。日本、学校、国家、六角、骨格、作家、発砲、薄荷、節句、白居易・・・などにちほん、がくこう、こくか、ろくかくなどとは読みませんね。その他にも無意識に促音を発声している漢字は沢山あります。特に「か行」や「ぱ行」の漢字や言葉の前になると入声の影響で促音になりますね。まったく無意識に使っている言葉に古代中国語の影響があることにビックリしましたか?

現代の中国語(普通話)は北方の言葉(北京語)であり、古代中国語発音の入声(促音)は無いのですが、実のところ入声(促音)の発音は現代中国では、台湾語や広東語などに残っています。例えば、日本人の事を台湾語では「ジップンラン」香港では「ヤップンヤン」と発音します。学校のことは「ハッハウ」(台湾)、春節(旧正月)に香港では恭喜發財(ゴンヘイファッチョイ)と挨拶します。

 今も昔も福建省や広東省は、首都から遠く離れた地域なので昔の発音がそのまま方言として残ったものと思います。中国の都から遠く離れた日本の漢字の発音にも、古代中国から伝来した時のまま入声の影響が残っているのです。

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