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心理系大学院受験〜専門記述問題;ユング派(分析心理学)の問題〜

こんにちは。心理系大学院受験予備校 KoKoRo UP Academy(ココロアップアカデミー)です。

前回は河合隼雄先生関連の問題を取り上げました。

河合先生はユング派の先生です。ユング派心理療法は、精神分析的心理療法の一つに分類されます。

過去問題対策において、精神分析的心理療法の記述問題は、どのように答えたらいいか、出題される用語自体が難しいといったことが多いです。

精神分析は、フロイトから始まり、ラカン派、ユング心理学(分析心理学)、サリヴァンの対人関係論、自我心理学、対象関係論、ウィニコットなどの独立派・中間派などがあり、関連領域として、アドラーの個人心理学やコフートの自己心理学など、様々です。

多くの大学院で、精神分析心理療法の問題は出題されており、それぞれ学派によって特徴が異なるので、これだけを押さえておけば良いという勉強はできないわけです。

前回の問題

前回、取りあげた問題は以下でした。


心理療法に関して、河合隼雄は「セラピストは何もしないよう全力をあげる」という趣旨のことをしばしば語っていた。この河合の言葉はどのようなことを意味していると理解されるか、述べなさい(600字以内)。

放送大学大学院 2020年

上記の問題と関連した問題が、2019年の問題にも出題されていました。


「自律的な変容のプロセス」に対するセラピストの姿勢を「二律背反」という言葉を用いて説明しつつ、ユング派心理療法の特徴を論じなさい。

放送大学大学院 2019年

2019年の問題は、「第三世代の認知行動療法」との選択問題でしたが、非常に専門性が高い問題となっています。

さて、
ここで挙げられている「二律背反」という言葉、辞書では
「相互に矛盾する二つの命題が同等の妥当性をもって主張されること」、または、②「どちらも妥当な命題同士が、互いに矛盾する状態にあること。互いに矛盾する二つのものが存在すること」とされています。

①では、一般的には「板挟み」な状態のことを指します。Aという主張とBという主張が両方とも妥当性があって、はっきりと選ぶことができないと状態ですね。

「これからはインターナショナルな時代だから、世界で通用するように幼い頃から英語を話せるようになるために、英語と欧米文化に触れる時間を増やすべきだ」という意見と、
「これからはインターナショナルな時代だから、日本文化を世界に紹介できるように、幼い頃から国語や様々な日本文化に触れる時間を増やすべきだ」という意見、
これらは視点の違いで両方とも妥当性があるわけです。

②は、「セラピストは何もしないよう全力をあげる」にも当てはまり、お互いに矛盾する状態ですね。

ユング派心理療法の特徴

まずは、ユング派心理療法の特徴を紹介します。

ユング派の心理療法は、「心」による「心」の受け止め方を重視します。

つまり、表面にあらわれているものの除去だけではなく、それを抱えたクライエントの心そのものを扱います。

人間の心は、生々しいイメージに満ちた世界であり、個人的経験であっても、神話や昔話と近いものをもっていると考えます。

セラピーのプロセスは、セラピストとクライエントは、どのような神話を創造しようとしているのかであり、変容のプロセスはナラティブ・アプローチと親和的とも言えます。

変容のプロセスは、無意識が深く関わり、自律的。セラピストは、このプロセスを信頼し、同行する姿勢で居ます。つまりは、何もせずに居ることです。

ユングは以下のように述べています。

「私は人間の心のなかで生起する事柄に対して、深い尊敬の念を抱いているので、秘かな自然の摂理に要らぬ手出しを試み、それを妨げたりひずめたりするような真似はしたくない」
「私は何もしない。私にできることは、いわば神を信頼してただひたすら待つことだけである。そうすれば、いつかは、根気と勇気をもって耐えぬかれた葛藤のなかから私の予想もしなかったような解決、当の患者の内に可能性として与えられていた解決があらわれてくる」

C.G.Jung,1944,1976

セラピストは外的には何もしていませんが、内的・心理的には極めて能動的です。それは、自律的なプロセスや変容のイメージを読み、信頼し、見守り続けるからです。もし、セラピストが内的・心理的にも何もしない(放ったらかし)であれば、心理療法のプロセスは滞ることになります。

ユング派の心理療法の文脈で、「二律背反」の意味を読み解けば、

「心理療法では、クライエントの変容のプロセスの自律性を尊重し、可能な限りいらぬ手出しを控えるとともに、他方においてセラピー過程に自律的にあらわれてくるイメージや事象の意味をクライエントともに理解しようと最大限の努力を払うこと。外的に何もしていないように見えるが、内的には非常に能動的にクライエントに関わっている」

よって、上記に述べた、セラピストークライエントのダイナミクスが河合隼雄先生がいう「セラピストは何もしないよう全力をあげる」を意味しているのではないかと思います。

いかがだってでしょうか。
前回と今回を合わせて、
2つの大学院試験問題を通して、心理療法の面白さが伝わっていたら幸いです。
試験問題を解くことも大切ですが、本来その前には知的好奇心がそこにあるはずです。

そういった好奇心を刺激できるよう、今後も発信していきます。
また、本格的に心理士(師)を目指したい方は、お問い合わせください。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


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