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読書感想文:白蕾記

時代は、江戸末期から明治への移り行くころに日本の医術を変革した偉人「緒方洪庵」という医学者と、妻「八重」の物語です。

洪庵は、疱瘡(天然痘)の撲滅を目指して戦う医師で、当時、予防医術を目指して「牛痘種痘」という、いわゆる「ワクチン」を広めようと妻と共に普及に尽力していました。

しかし、漢方医師たちから「まやかしの医術」と、罵られて異教徒扱いをされ迫害を受けていました。
その間にも、どんどん死者が増える大阪の町。

牛痘種痘の優位性を広めようとする傍ら「適塾」を開いて、蘭学や医術を目指す有志を多く迎えていました。
塾生の世話を淡々とこなしている「八重」そして、心ある町民たちが、優しく手をさし伸ばしています。

夫婦の愛の強さは紐帯の繋がりで、その強さが医術の黎明期を乗り越える力の源になり、今日に至る医術の基礎を築くことが出来たのだと思います。

この「適塾」の出身者は3000人とも云われ、のちに現大阪大学の前身になりました。
「適塾」出身者は
 大村益次郎 (戊辰戦争の立役者)
 福沢諭吉 (言わずもがな、東大医学部付属研究院の創設者と、お札)
 橋本佐内 (松平春嶽に仕える福井藩士、安政の大獄で享年26歳)
 長与専斎 (福沢諭吉の後任の塾頭)
など、歴史に名を残している有名人物の若かりし頃や、洪庵とともに成長するさまが生き生き描かれています。

そして「白蕾記」にある、白い蕾とは。

日本人の優しさ、活力、助け合いの精神、そして、仁の心が、分かり易く描かれています。

少なくとも、4回は涙腺が緩むと思います。
日本人の純粋で深い愛情に、必ずや多くの方達の心に沁みいる作品であること保証いたします。
ぜひ、お手に取ってみてください。


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