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LEDはなぜ光るか

量子論的な内容も書きました

なぜ物質は光るのか

この世界を形作る全ての物質や現象は、高いエネルギーから低いエネルギーに向かっています。例えば、結晶がなぜ規則正しく並んだ構造をしているのかというと、それがあらゆる構造の中で最もエネルギーが低いからです。

全ての現象にはエネルギーが関係しています。熱、光、音などにはエネルギーがあり、全てが自然と低いエネルギーになるように現象が起こっています。

同じようにして考えると、なぜ物質が光るのかも一定の説明ができます。すなわち、高いエネルギーから低いエネルギーに結晶の状態が変化する時にエネルギーの差分を光として放出します。
日常の照明から、オーロラ、太陽光に至るまで全ての発光現象は何らかの要因で高くなったエネルギーが元に戻ろうとする際にその高くなった分のエネルギーで光っています。

どうやってエネルギーを高い状態にするか

では物質をどうやって高いエネルギーにするのでしょうか。先ほど説明したように、この世界の全ての現象は低いエネルギーに向かっているので、何もしないで勝手に高いエネルギー状態になることがありません。
答えは、外部から電気、光、熱などを通してエネルギーを物質に加えることで高いエネルギーにしています。
電気、光、熱は根本的にはエネルギーが形を変えたようなものなので、物質内部の原子や分子と相互作用してエネルギーを授受しています。

ミクロな視点で発光を捉える

物質にエネルギーを加えると物質全体が高いエネルギーになります。詳しくいうと、結晶内部の「電子」が高いエネルギーになりそれが元に戻る時に光ります。

物質に光を照射した際に物質内部のエネルギーが変化する過程をフォトルミネセンス(photoluminescence; PL)といいます。
また、物質に電気を加えた時のエネルギー変化の過程をエレクトロルミネセンス(electroluminescence; EL)といいます。ディスプレイの技術で耳にする有機ELの「EL」とはエレクトロルミネセンスのことです。なので有機ELはバッテリーやコンセントから電気を供給してやることで光ります。

発光現象と量子論

物質がなぜ光るのかを解明するということは、電子状態の変化を調べるということです。電子の細かい性質を調べるために、現代物理では量子力学の力を借りています。

電気電子系の専門学校や大学に所属していた(している)方はエネルギーバンドという言葉を聞いたことがあると思います。エネルギーバンドとは電子が占有することができる状態やエネルギーを「線」や線が重なった「帯」として表現します。

この概念は講義でいきなり登場するので面食らった方も多いかもしれません。なぜかというと、量子力学のシュレーディンガー方程式を解くことで得られるからです。量子力学にまで突っ込むと理解の難易度が跳ね上がるので多くの講義では扱いません。

エネルギーが低い時の電子状態(基底状態)は、最新の物理学で十分シミュレーションできています。それに対してエネルギーの高い状態(励起状態)の電子状態を高い精度でシミュレーションすることは難しいのが現状です。

励起子:exciton

物質にエネルギーが加えられると、高いエネルギーを持つ電子状態に変化します。すると電子が元いた状態には電子が抜けたことである種の「穴」ができています。この穴はマイナスの電気を帯びた電子に対して、あたかもプラスの電荷があるように見えるため正孔(electron hole)と呼ばれています。

マイナスの電荷を持った電子とプラスの電荷を持った正孔の間には、クーロン力が働き電子-正孔がペアになった束縛状態ができます。電子-正孔対は互いに束縛しながら結晶中を動き回り、巨視的には中性の一つの粒子に見えます。その見かけの粒子は「励起子」と呼ばれ、単なる電子-正孔対と区別されています。
励起子は分極の量子化であり、素励起の一つです。

励起子はエレクトロルミネセンスのような、独立した電子のエネルギーが上がって下がるといったシンプルな見方に一石を投じた考えで、半導体の発光現象と深い関連があるとされています。


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