まさっく/物理学ツーリスト

物性理論を研究している修士の現役大学院生です。 量子力学を分かりやすく・本格的に皆さん…

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物性理論を研究している修士の現役大学院生です。 量子力学を分かりやすく・本格的に皆さんに発信しています。noteではブログ記事の紹介のほか、量子力学の補足説明や個人的な気づきなどを載せています。 ぜひフォローよろしくお願いします!

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なぜ量子力学は難しいのか

はじめに"量子"への期待は高まっている 量子コンピュータ開発への期待が高まりつつあるおかげか、10年ほど前までと比較して"量子"と名のついた話題を多く見かけるようになりました。 特に量子情報分野への関心度は確実に高まっており、量子コンピュータの他にも 量子もつれ 量子暗号 量子テレポーテーション 量子アニーリング などの用語を、日々のニュースや雑誌で目にする機会は増えているように思います。上で挙げた"量子"と名がついた技術や理論は"量子力学"という学問から発展させ

    • 「量子ってなんだろう?」の記事からエレクトロンボルト[eV]の項目を別記事にまとめました。量子力学ではエネルギーの単位に、[eV]が使われます。興味のある方はこちらのリンクからご覧ください。 https://steem.jp/science/quantum-energy-electronvolt/

      • 波動関数とはいったい何なのか?

        波動関数の正体量子力学特有の概念の一つが「波動関数」です。 そもそも波動関数って一体なんでしょうか? シュレディンガー方程式の解? 粒子が存在する確率? 波動関数は非常に多面的な意味を含みますが、最も重要な「核」となる意味は一つです。今回はその意味を知っていただくために、下の記事を作成しました。量子力学に詳しくない学生や社会人にも理解してもらえるよう内容になっていると思います! ぜひクリックして、ご興味のある部分だけでもご覧ください!また、波動関数の他に波動関数の性質も書

        • 量子力学の基本的な用語・方程式・概念

          ご覧いただきありがとうございます。 こちらのnoteは、量子力学に出てくる重要な用語や方程式、概念をまとめたブログ記事の下書きを全文公開しています。 量子力学の入り口に立ちたい人 何から勉強すればいいか分からない人 量子力学を学び始めていて、用語の確認をしたい人 への道標として書きました。ぜひご活用いただければと思います。 もちろん、量子力学に何となく興味がある人もぜひご覧になっていってください。 正式に公開した記事はこちらにあります。 興味のある方は、是非クリック

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        なぜ量子力学は難しいのか

          そもそも量子 Quantum ってなんだろう?

          そもそも量子とはそもそも、量子力学に頻繁に登場する「量子」とは何なのでしょう。 私が量子力学を始めて知った時はそんな疑問が常にありました。 今回は、そんな素朴な疑問に答えるために量子についてまとめた記事を書いてみました。 動画サイトの解説やコンビニに売っている本だと、本質を捉えていなくてわかったようなわからないような。 でも、専門書だと基礎はわかっているものとして、いきなり本題が始まってわけがわからない。 そんな人たちに向けて、痒いところに手が届くように頑張って書きました

          そもそも量子 Quantum ってなんだろう?

          波動性と粒子性とは/二重スリット実験から多世界解釈まで

          電子が二つのスリットを同時に通過する?こんにちは。 電子は波動性と粒子性の二つの性質を持ち、それらが摩訶不思議な現象を引き起こします。その代表例として有名なのが二重スリット実験です。 二重スリット実験は、本来粒子であるとされた電子が実は波動の性質を持ち、また観測によって結果が変わるという、ある意味恐ろしい結果を示した実験です。 二重スリット実験の妥当性とその解釈をめぐって、当時の物理学界では大規模な論争が沸き起こったそうです。私も当時生きていれば、その雰囲気を味わえたので

          波動性と粒子性とは/二重スリット実験から多世界解釈まで

          シュレディンガーの猫とは/「ある」と「ない」が一つの不思議な世界

          量子の世界では「ある」と「ない」が同時に存在できる皆さんこんにちは。 量子力学の世界の粒子は「観測」するまで、さまざまな状態が混ざり合っており、観測すると同時に一つの状態に決定されるという独特の性質があります。 ニュートンの運動方程式に代表される古典力学において、時間・位置で決まるような物体の運動は私たちが観測しようがしまいが、すでに決定されています。物体が坂から転げ落ちる様子を想像してみてください。私たちが観測するかどうかに関わらず、物体は転げ落ちていき、運動の軌跡は一意

          シュレディンガーの猫とは/「ある」と「ない」が一つの不思議な世界

          自由電子のシュレーディンガー方程式の解法をブログで執筆中です。 公開したら、noteでも紹介記事を書きたいと思います! 追記: スキくださった方、本当にありがとうございます!

          自由電子のシュレーディンガー方程式の解法をブログで執筆中です。 公開したら、noteでも紹介記事を書きたいと思います! 追記: スキくださった方、本当にありがとうございます!

          雨の日は歩くのと走るのどっちが濡れない?

          雨に悩まされることが多い、梅雨や台風の季節。 私は幼少期、雨の中を小学校まで徒歩で登校する間、いつも同じ疑問を抱いていたことを覚えています。 それは、 「歩いた方が濡れるのか、それとも走った方が濡れるのか?」 という疑問です。 皆さんも一度は考えたことがあるのではないでしょうか。 今回は、私が幼少期から持ち続けていたそんな素朴な疑問を、高校までの数学の知識と簡単なモデルを使って考察してみました。 あまり数学が得意でない方や、逆に数学や物理に関心のある人どちらにも理解して

          雨の日は歩くのと走るのどっちが濡れない?

          なぜ時間は一方向にしか進まないのか?という疑問

          私たちは「空間三次元+時間一次元」の計四次元の世界で生活しています。 空間の三次元については、私たち人間は自由自在に使いこなしています。身の回りの全ての物体は三次元で構成されていますし、飛行機のような乗り物に乗れば三次元的に運動することさえできます。 しかし、時間は常に過去から未来に向かって進んでおり、未来から過去に向かうことはできません。なぜでしょうか? 結論から先に書くと「わからない」なのですが、それでは身も蓋ももなさすぎるので、もう少しちゃんと、私の考えを書いておきた

          なぜ時間は一方向にしか進まないのか?という疑問

          「コーヒーとミルクが混ざるとよりカオスになる」への疑問

          宇宙はエントロピー増大則に従って、よりカオス(混沌)な状態に変化し続けるらしいです。現象はエントロピーが大きくなるように不可逆的におきます。 よく例えに挙がるのが、コーヒーにミルクを一滴垂らすとお互いに混ざり合って、元のコーヒーとミルクに分かれることがないというもの。 この例えって私的には、元のコーヒーとミルクとして別々に分かれていた方がカオス具合が大きい気がしてしまいます。 もっというと、元々2つの状態に分かれたものが混ざり合って1つの状態になるので、逆に混沌さが減ってい

          「コーヒーとミルクが混ざるとよりカオスになる」への疑問

          「熱」とは何か

          こちらの記事の補足的な説明です。 私たちが普段「熱」として感じているものの正体は、原子や分子、結晶などが非常に小さく細かく振動することで発生する運動エネルギーです。 端的に表現するなら、「物質がどれだけブルブル震えているか」を私たちの皮膚は「熱い」「冷たい」という感覚で認識しています。 太陽の光を浴びて暖かいと感じるのは、太陽から発せられた光が皮膚に当たることで、皮膚表面がブルブル震えるからです。 また、火の近くに手をかざすと温かく感じる理由は、火から発せられる光のほ

          「火」とは何か

          人類史に欠かせない道具の一つである「火」とは何かを簡単にまとめました。 火の正体「火」とは、特定の物体や物質のことを表すのではなく、高いエネルギーにある物質が、低いエネルギーに戻るために放出する熱や光を総称した「現象」を指します。それらを私たちは火と呼んでいます。 熱・光 外部から強力な熱や光を与えられると、物質はその熱や光の持つエネルギーを吸収し、自らも高いエネルギー状態になります。高いエネルギーの物質はそのままの状態を保持するのではなく、元の低いエネルギーになろうと

          湯川学の専門分野 「沈黙のパレード」のネタバレ+補足説明あり

          東野圭吾作の沈黙のパレードで、ちゃっかり湯川学の専門が明かされていました。 このノートでは前半は沈黙のパレードについて、後半は専門的な補足説明をまとめています。作品の核心に迫るネタバレを含みますので、知りたくない方はブラウザバックをお願いします。 興味のある人は画面のスクロールをお願いします。 磁性湯川は磁性の研究が専門です。 原作の湯川を訪ねる場面で、 「帝都大学金属材料研究所」 「磁気物理学研究部門」 との記載がありましたので確定だと思います。 ちゃっかり教授に昇

          湯川学の専門分野 「沈黙のパレード」のネタバレ+補足説明あり

          LEDはなぜ光るか

          量子論的な内容も書きました なぜ物質は光るのかこの世界を形作る全ての物質や現象は、高いエネルギーから低いエネルギーに向かっています。例えば、結晶がなぜ規則正しく並んだ構造をしているのかというと、それがあらゆる構造の中で最もエネルギーが低いからです。 全ての現象にはエネルギーが関係しています。熱、光、音などにはエネルギーがあり、全てが自然と低いエネルギーになるように現象が起こっています。 同じようにして考えると、なぜ物質が光るのかも一定の説明ができます。すなわち、高いエネ

          窒化ガリウム(GaN)の物性メモ

          GaNの物性についてさっくり書いています。 こちらのnoteの続きのような内容です。 一部、量子力学的なお話も書いています。 GaNの結晶構造窒化ガリウム(Gallium nitride)は13族元素のガリウムと15族元素の窒素が、周期的に正四面構造で結合した化合物半導体です。海岸にある消波ブロック(テトラポット)が規則正しく並んだような形状をしています。 正四面構造の配置の仕方によって、閃亜鉛鉱型(zinc blend)とウルツ鉱型(wurtzite)という二つの結晶

          窒化ガリウム(GaN)の物性メモ