見出し画像

「火」とは何か

人類史に欠かせない道具の一つである「火」とは何かを簡単にまとめました。

火の正体

「火」とは、特定の物体や物質のことを表すのではなく、高いエネルギーにある物質が、低いエネルギーに戻るために放出する熱や光を総称した「現象」を指します。それらを私たちは火と呼んでいます。

熱・光

外部から強力な熱や光を与えられると、物質はその熱や光の持つエネルギーを吸収し、自らも高いエネルギー状態になります。高いエネルギーの物質はそのままの状態を保持するのではなく、元の低いエネルギーになろうとするのでその余剰分のエネルギーを熱や光、場合によっては音などによって放出します。

プラズマ

高いエネルギー状態下では、物質の状態も変わっています。
例えば水は温度を上げると、固体→液体→気体の順に状態変化します。温度が高いということは、水を構成する水分子(H2O)が持っている運動エネルギーが高いということです。運動エネルギーの高い分子は、分子間の結合力が弱まり自在に動くことができるようになるので、固体ではカチカチの氷でも液体の水はどんな形にも自由自在に変化することができます。さらに気体である水蒸気になると、分子間の結合はほとんどなくなり、大気圧下でもフワフワと空気中を漂うことができます。

気体の状態にある水の温度をさらに上げると、今度は水分子を構成する水素原子や酸素原子の結合が弱まります。それからも温度を上げ続けると、原子を構成する原子核と電子の結合が弱まり、やがては完全に分かれてしまいます。
この状態のことを「プラズマ」と言います。プラズマの状態にある現象の代表例として知られるのが「火」です。

プラズマ現象は火以外にも「雷」「宇宙線」「核分裂」などで発生しています。
余談ですが、プラズマは非常に高いエネルギーを外部から食らえてやる必要があります。家のガスコンロで水を温め続けても水はプラズマにはなりません。圧力鍋で温めても水がプラズマになる前に鍋が破壊されるはずです。

これまでをまとめると、私たちが普段「火」として認識しているものの正体は熱、光、プラズマであると言えます。

燃え広がるとはどういうことか

火が高エネルギー状態下で発生することは、先に書いた通りです。では、木や布に火をつけた時に元の火が燃え広がる、という現象はどのように説明すればよいでしょうか?

少し話はそれますが、物理学では基本的にこの世の中の現象は、高いエネルギーから低いエネルギー状態、言い換えると、より安定な状態に変化するように現象が進みます。安定な状態は必ずしも一つとは限らず、下の図のようにエネルギーを縦軸としていくつかの極値を持っています。

いま、Aという状態にある物質はそのままだと安定なので状態変化しません。しかしB-A以上のエネルギーを外部から与えてやると、物質を構成する原子や分子の状態はAとCを隔てる山(エネルギー障壁)を「山登り」するかのごとく乗り越えることができます。そうすることで原子や分子の状態は、Cというより低いエネルギーに変化します。

上図を使って単に「燃える」という現象を説明すると、布や木を構成している化合物の状態Aから、酸化反応によって炭のような状態Bというよりエネルギーが低い状態に、外部の熱エネルギーによって変化したということです。そして、C-Bに相当するエネルギーを熱や光として放出します。
上図のような山と谷を組み合わせた図は物理学の分野ではよく使用されます。

それでは、「燃え広がる」という現象の場合は上図を使ってどのように説明すればよいでしょうか。
物質は膨大な原子や分子から構成されているので、この場合は上図を連ねて考えます。

この場合、B-CのエネルギーE'は単に熱や光として放出されるのではなく、隣の原子や分子の「山登り」としてのエネルギーに使用されます。そして山登りに使われなかったA-Cのエネルギーを熱や光として放出します。もちろん他の原子の「山登り」に使われることもあります。

このような過程を連鎖反応を繰り返すことで、物質は燃え広がります。

最後に

小学生のころ、火って何だろうと考え込んでいた記憶があります。火は霞のようにゆらめいていて、手を近づけると熱いけれど決して捕まえることができません。

人間がこれまで発達してこられたのは、数十万年以上前に火を使えるようになったからだと言われています。科学が発達したのはせいぜい数千年前なので、人類史という長い目で見ればほとんどの間、火とは何かを知らないまま使ってきたことになります。

今日では科学という便利なツールのおかげで、小学生の頃に抱いたそんな疑問にもある程度答えられるようになりました。今回は当時の自分への答え合わせとして簡単にまとめました。

ご覧いただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?