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皮膚科の先生に聞いてみた|習近平はケインジアンですか?|Critique

ロバート&エドワードのスキデルスキー父子が書いた『じゅうぶん豊かで、貧しい社会』(2012年原著発刊、村井章子訳、2014年、筑摩書房)を読んだ吉田さんは、「これって最近よく聞く話に似ているな」と思い、いつもの皮膚科の先生に電話をして疑問をぶつけてみました。少し酔っぱらってます。

ブツブツ吉田

経済学者のケインズが1928年、ケンブリッジ大学で「孫の世代の経済的可能性」ってタイトルで講演してはるやないですか。100年後には、今の経済水準の4倍から8倍に増えて、労働時間は1日3時間になるって予想しはったみたいですわ。富裕層は「至福」な生活ができるようになって、貧困な人たちに手を差し伸べるやろなって考えたそうでっせ。

皮膚科の先生

ジョン・メイナード・ケインズ(John Maynard Keynes)は、20世紀初頭に活躍したイギリスの経済学者で、ケインズ経済学の棟梁です。ケインズの主張は、大恐慌の際に広く受け入れられました。彼の経済学の影響は今日まで続いており、政府の経済政策における均等な成長と社会的な不平等の是正への取り組みに影響を与えていますね。

ブツブツ吉田

せっかくやから、ケインズの「所得再分配」の論点と習近平の「共同富裕」の考えがどないなふうにつながってるかを先生に聞きたいですわ。鄧小平のときに提唱された「先富論」がある程度の段階に来て、富める人たちから貧しい人たちへの経済的な平等を実現できる時代になったから共同富裕政策を進めるんやと、習近平が言うたとおりに考えたらあきまへんか?

皮膚科の先生

まずケインズの所得再分配について説明しましょう。彼は富裕層と貧困層との所得格差を縮小する必要があると考えました。高所得者に課税し、その税収を社会的なプログラムや福祉制度に投資することで、所得再分配を実現しようという考えです。

共産主義国家では税徴収はないのが理想ですが、中国にも所得税はあります。ですからこの政策はすでに実現済みで、真新しさはありません。習近平が言う共同富裕が、高所得者からの課税を増やし、低所得者への給付や社会保障の充実をめざすだけならケインズ経済学と似ていますが、そんな無策ではないでしょう。アリババのジャック・マーの一件とも関わりますが、企業の社会的責任を奨励するという考えがどこまで貫徹されるのかも先が見えません。

ブツブツ吉田

しつこくてえらいすんまへん。習近平は実はケインズ派かもしれへんなあとオレは思うてますけど、先生の見解はどないでっか?

皮膚科の先生

確かに両者のアプローチには経済的均等性への志向、政府の積極的な役割の支持など共通点がみられます。ですが、その背後には異なる経済思想が存在します。ケインズは市場経済の中で政府の役割を強調し、景気循環の調整と雇用の増加を主張しました。一方、習近平は中国の共産主義の文脈での経済的均等性と社会的安定性を強調し、中国特有の政治・経済体制に基づいて政策を展開しています。

ただケインズは、市場は自己調整しないと考えました。完全雇用を達成するためには政府が積極的に介入する必要があるとも考えました。これは国家や公共機関が積極的に市場の失敗や不平等に対処し、行き過ぎた市場原理主義に対抗すべきだと考えるポスト資本主義に形を変えて引き継がれています。ユニバーサル・ベーシック・インカムにケインズが賛成するかどうかはわかりませんがね。

ブツブツ吉田

いやでもなー、習近平が共同富裕を進めて、中国で経済的均等性が達成されたら、ケインズの言うてたように労働時間が大幅に減るんやないか、って期待してますねん。ちゃいますか?

皮膚科の先生

いくつかの課題があるでしょうね。中国には過度な競争主義があり、個人や企業が自主的に時短を進めにくい点が挙げられます。文化的要因もあります。一般的に中国人(漢民族)は働くことが好きな民族だと言えます。

また、中国が目標とする経済発展には多くの労働力が必要ですが、一方で生産人口が縮小していく人口カーブが予想されています。ただこの点に関しては、AIを活用することで相殺されるかもしれません。中国の巨大な人口はイコール膨大なデータソースでもあります。このデータのアルゴリズムにもとづいてAIの予測分析や意思決定が向上すれば、高度な創造性と判断力を苦手とするAIの弱点は中国が最初に克服するかもしれませんね。

※方言指導:ChatGPT(精度低っ!)

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