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園世

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短編「園世」をまとめております。
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記事一覧

[短編]園世#10 「根中」

最近、虫たちはよく嫌われる。スズメバチ、クモ、ゴキブリ…。好かれている虫は、カブトムシ…

たくあん
5か月前
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[短編]園世#9 電球の宮殿

バッタのヨモギさんは、久しぶりに酸素マスクを外した。 「ねぇ、私なんてもう寝たきりなんだ…

たくあん
5か月前
5

[短編]園世#8 両生

ギンヤンマの羽田は、葉の上に止まって生まれ育った故郷を眺めていた。 まだ、妻の藻奈は帰っ…

たくあん
5か月前
5

[短編]園世#7 青空と飴水

ムクドリの鳥居さんは、雨降る中、一つの重大なことに悩んでいた。 誰かに公言したら、私は皆…

たくあん
5か月前
3

[短編]園世#1 クールマン 

川に足を浸してこう思った。 「どんなに静かなやつでも、皆、群れるとうるさくなる」 ハシビ…

たくあん
1年前
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[短編]園世#2 転落

朝、街中で叫んだ。 朝、踊りながらも、走りながらも。 太陽を見ると思わず、コケコッコーと…

たくあん
1年前
9

[短編]園世#3 七日の命

セミの周太郎は心から浮き足立っていた。 「明日になれば、大人になれるんだ」 成人式も済んだし、着々と大人になるということが現実味を増していた。 「おい、周太郎!」 話してきたのは、同じく明日大人を迎える陽二郎だった。 「どうしたんだ!そんな慌てて。お前あれだろ、羽化の心配だろ」 羽化はセミ学校の義務教育の最終問題であった。 基本的に座学で、羽化のしかたを学ぶ。 「いや、それならギリギリ通ってるさ。実は、俺ら後一週間で死ぬかもしれないんだ」 周太郎は嘲笑った

[短編]園世#4 カマに残る後悔

腐った木に座ってカマを振り上げた。アリが行列をなしてやってくる。ハエが飛び交う。岩の下…

たくあん
1年前
6

[短編]園世 #5 月とスッポン

パチパチと音がするなかで一人の年配のおじさんが出てきた。 「どーも。スッポンの“年の功”…

たくあん
1年前
7

[短編]園世 #6 白鯨

日差しがギンギンと照りつける水面に、白鯨が背中を打ち付けた。 イワシの群れは、自分が巻…

たくあん
9か月前
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