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バルバラ・スモレンスカ=ジェリンスカ(著)、関口時正(訳)『決定版 ショパンの生涯』【基礎教養部】

書評は上のサイトを参照。

今回は書評に選んだ本『決定版 ショパンの生涯』に関連して、今年聴きに行ったクラシックコンサートの感想を述べ、ショパンの作品のうち特に好きな作品について紹介することにする。

今年聴きに行ったクラシックコンサート

ポーランド国立放送交響楽団 with 角野隼斗(石川公演) 2022/9/16

曲目は以下の通り:
バツェヴィチ/序曲
ショパン/ピアノ協奏曲第1番
ドヴォルザーク/交響曲第9番「新世界より」

バツェヴィチの序曲とドヴォルザークの交響曲第9番はポーランド国立放送交響楽団の演奏(指揮:マリン・オルソップ)で、ショパンのピアノ協奏曲第1番はピアノが角野隼斗さんでオーケストラがポーランド国立放送交響楽団の演奏だった。

まず、バツェヴィチの序曲は知らない曲だったがとても聴きやすい曲で、こういったプロの生演奏を聴いたことがなかったこともありとても感動した。ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」は誰もが知っている超有名曲であり何回もYou Tube等で聴いたことがあるが、やはりYou Tubeで聴くのと違い生演奏は大迫力だった。

角野隼斗さんは「かてぃん」という名前でYou Tube活動をされているピアニストで、この前の第18回ショパン国際ピアノ・コンクール2021では本選(ファイナル)には惜しくも進めなかったものの3次予選(セミファイナル)まで進んでいる。ショパンピアノ協奏曲第1番は何回もYou Tubeで聴いたことがあるが、角野隼斗さんの生演奏を聴いてやはり同じ曲でも弾く人によってかなり違うという印象を受けた。角野隼斗さんの演奏はとても「繊細」で、特に第2楽章がとても美しかった。この大阪公演での演奏がYou Tubeに上がっているのでぜひ聴いていただきたい。

横山幸雄 入魂のショパン 2022/10/22

横山幸雄さんは第12回ショパン国際ピアノ・コンクールにおいて歴代の日本人として最年少で入賞後、常に第一線で活動をし続け、2021年にデビュー30周年を迎えたピアニストであり、2019年5月3日から5日の3日間にわたるショパン全240曲演奏会などの壮大な企画でも注目を浴びている。また、後進の指導にも積極的に関わっていることでも有名であり、You Tubeにもたくさんの公開レッスンの動画があがっている。

このコンサートはショパンの78作品をほぼ年代順に並べて昼から夜遅くまで演奏するというものだった。すべての作品を暗譜で演奏され、休憩を含めて8時間半もあるにも関わらず最後まで疲れている様子は全くなく、単純に記憶力と体力がすごい。若き日の秀作から晩年の傑作まで順に聴くことで、ショパンの生涯を音楽を通して辿ることができた。

どの作品の演奏も素晴らしかったが、特にポロネーズ第5番・第7番、スケルツォ第2番、ソナタ第2番の演奏がとても良く感動した。「入魂のショパン」は定期的に開催されているので、興味のある方はぜひ聴きに行ってみてはどうだろうか?特に、若い人は安く聴きに行けることも結構あるので(今回は学生料金で2000円だった)今のうちにこういったクラシックコンサートに行くことをお勧めする。

ショパンの作品紹介

ピアノ協奏曲第1番op.11・第2番op.21

ピアノ協奏曲第1番・第2番は、音楽学校を卒業し音楽家としていよいよ本格的に世に出ていくという時に書かれたもので、第2番は19歳、第1番は20歳の頃に書かれた作品である。

ピアノ協奏曲にはショパンが生涯愛した祖国ポーランドの伝統的な音楽のリズムが現れ、とても「ショパンらしい」作品となっている。第2番はショパンのコンスタンツヤ・グワドコフスカへの恋心が現れており、全体を通してショパンの内からあふれ出るものを表現したというような作品となっている。第1番は第2番より後に作曲され、第2番よりも華やかな作品である。ショパン国際ピアノ・コンクールの本選ではピアノ協奏曲第1番・第2番のどちらかを演奏することになっているが、第1番を選ぶ人の方が多い。

ピアノ協奏曲第1番・第2番のお勧めの演奏:

幻想ポロネーズop.61

幻想ポロネーズは晩年に作曲された傑作である。「ポロネーズ」はポーランドの代表的な舞曲であり、ショパンが幼い頃から晩年までポロネーズを書き続けた。ショパンが子どもの頃最初に作曲したのもポロネーズである。

この幻想ポロネーズは他のポロネーズとは異なる雰囲気を醸し出している。和声がとても大胆で精錬されたものになっており、ショパンが愛したバッハのポリフォニックな要素も感じられる。182小節目からの悲しげなメロディーが言葉で表しきれないほど美しく、私にとってとても好きな部分である。

終わりに

クラシック音楽というととても難しくとっつきにくい印象を持つ人も多いと思うが、実際はそんなことはないと思う。テレビなどでクラシック音楽はあふれているし、知らず知らずのうちに耳にしているはずで、とても身近なものなのである。最近はいわゆる「ピアノ系You Tuber」と呼ばれる人たちがたくさん出てきてより身近なものになりつつあると感じるが、それでもクラシック音楽を敬遠する人が多いように思う。You Tube等で簡単に聴くことができるのでぜひ一度クラシック音楽を聴いてみてほしい。そしてもし興味がわいてきたら実際に生演奏を聴きに行ってほしい。携帯などを通して聴く音楽と生で聴く音楽はやはり全然違う。

また、音楽に限らず芸術というものは完全に言語化をすることはできない。もし言葉で音楽の全てを表現できるとすればそれはもはや音楽ではないであろう。音楽の価値は実際に音楽を聴いたり演奏したりしてみないとわからない。譜面を眺めたり評論を読んだりしたとしてもその音楽全てを理解することは不可能である。ぜひ、本などで読むだけでなく実際に音楽を聴いていただきたい。

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