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乳がんアラ還 カツラを考える 

先日乳腺外科の受診時『もうウィッグは作りましたか?』と主治医が
聞いてきた。胸の排液がなくなるまで、抗がん剤の治療がおあずけになっていて、暇そうにしている私を見てのことだと思う。

やっぱり、抗がん剤、するのか。
毛が抜けない新薬は出ていないのか。

おばさんでも、年取って、薄毛になってくるだけで 何かしら対処はないのかとジタバタする。義理父は若くしてツルツルだったけど、血を引くオットはまだフサフサだ。いっそのこと、落ち込む私を勇気づけようと、僕も一緒だと坊主にしてくれないだろうか そうしたらきっとバズルのに・・・と妄想する。

私が使うだろう抗がん剤は、細胞分裂が活発な毛根の細胞に影響するそうで、きっと脱毛する。個人差はあるけれど、頭髪だけでなく、眉毛もまつ毛も 鼻毛もだそうだ。
ハラハラと、抜け始めたときのホラーなダメージを最小限にしたいと思い、術後抗がん剤投与が必要とわかったあと、反対する多感な時期の息子を説得して、肩まであった髪をショートカットにしてみた。これはこれで、新しい自分の発見のような気がして、ウキウキしていた。着る服も変えたくなるし、シャンプーも楽だし、乾かす手間もずいぶん減った。もう少しカットして、ぜひとも、樋口可南子さんになりたい。

あきらめて、病院から持ち帰った医療用ウィッグのパンフレットの中から、市内のお店の予約を取った。粉雪が舞う日だったので、以前、雪まつりを見に行く為に買ったユニクロのロングダウンを羽織る。
お店は街中のビルの中。レディースクリニックのように家具が猫足ではなかったけれど、落ち着いた雰囲気。入口のドアは開いたまま。敷居が低く感じる。カウンターすぐのところに 目を閉じて細い鼻を少し上に向け、あごが尖ったいくつもの頭部のマネキンがあり、色んな方がカツラが飾ってある。

私は知っている、知っているぞ。この中には30諭吉のヅラもある。

まんまと敵の罠にはまらないよう、心して挑め!と 肩に掛けたバッグを脇にぎゅっと挟みなおし、案内してくれるスタッフさんのあとに続いた。


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